
元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ミルコ キセキ ミゴト
2017/10/25(水)
皆様、こんにちは!先週は台風21号の影響で大きな被害が出てしまいましたね。我が家でも、感じたことのない強い風に吹かれ、庭の木々はまるでパーティーで踊る人のように横ゆれを繰り広げていました。また、いつもは穏やかな流れで流れている家の横の金勝川(こんぜがわ)は、一晩でまるで穏やかな表情から一転、鬼の形相のような顔に変貌してしまいました。このような命の危険を感じてしまうような台風は、私も産まれてから初めての経験。被害も非常に大きかったと思います。改めて自然の怖さを感じた週となってしまいました。
そんな台風の影響で、大荒れの天気の中、京都競馬場ではクラシック最後の1冠菊花賞が行われました。松田家では因縁のレースと言ってもいい菊花賞。少し個人的な話になりますが、義父の由太郎、現役時代の私と力を合わせても、どうにも勝てなかったのが菊花賞。しかし、息子の調教するエアシャカールが見事勝利し、松田家にも菊花賞を勝ったという経験をくれたレースです。そんなタフなレースに挑み、見事勝利したのはキセキとミルコのコンビでした。
土曜日から降り続いた雨の影響で、馬場はもう田んぼ状態になり、これは適性があるなしを超えてスタミナ勝負、もしくは馬をどれだけ気持ちよく走らせることができるかの勝負になるなと感じていました。そんな中、スタートしてすぐにウインガナドルが無理くりハナを奪いに行くとマイスタイルも続き、先頭の入れ替わりが激しいレースとなりました。そんな中、キセキをミルコが「ゆっくりゆっくり」となだめている姿を目にしました。この集中力が最後まで持てば弾けてくるなと思いながら見ていると、1週目のスタンド前ではミッキースワローが少しかかるような仕草を出しました。これは、最後は弾けないかもと感じてしまいました。
迎えた4コーナー。スタミナ勝負なら負けないと手応え抜群のままクリンチャーと藤岡佑君が上がっていく中、外からはミッキースワローに、我慢に我慢したキセキが馬場のいい所を通ってだしてきました。そして、直線では4コーナーでハナにたったダンビュライトを交わしクリンチャーが先頭に出る中、内からはスタミナ自慢のポポカテペトルも来る中、馬の気持ちを最優先に乗ったミルコとキセキが上がってくると一気に交わしさり、見事勝利しました。

これで、ミルコは初の外国人で日本クラシック3冠を制覇した騎手になりました。もう流石としかいいようのないレース振りでしたね。そして負けはしましたが、豊ちゃんの騎乗にも流石と改めて感じさせられました。先週の①~③着の騎手の動きに注目して見ていたレースでしたが、ルメールも最高の競馬だったと思います。しかし、今回は人が考えるよりも馬を信じきったコンビが勝ったと思います。この馬場でこの距離のレースとなっただけにダメージも気になるところではありますが、今後のキセキの動向からは目が離せません。きっと、日本を代表する馬へと成長していくと私は思っています。
人も馬も力を出し切った感動の菊花賞が終われば、今週は東京競馬場で天皇賞(秋)が行われます。なんといっても今年で引退を発表したキタサンブラックに注目が集まります。前走は天皇賞(春)のダメージが残っていたことも影響したことでしょうし、今回はまた万全のレースとなるのではないでしょうか。
それを簡単には許さないぞという相手としては、今週から騎乗のクリスチャンが乗るシャケトラ、シュミノーが騎乗するリアルスティール、シュタルケが騎乗するネオリアリズムが絡んでくるのではないでしょうか。今週から騎乗する名手達がいきなり回ってきたチャンスを活かすかも知れません。その他にもマイラーから更なる進化を遂げようとしているサトノアラジンにグレーターロンドンも楽しみです。サトノクラウンに関しては正直、次が勝負かなと思っていますし、ソウルスターリングは未知数と感じています。今週も皆様が万馬券を取るキセキを楽しみにしています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。