元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
100点ではダメ
2017/12/6(水)
皆様、こんにちは!12月に入り、いきなり寒くなってきましたね。私はというと北海道産まれにも関わらず、寒さが全くダメなので毎年恒例のベストを引っ張り出し、まるで猫のようにくるまっています。ニュースでは各地で初雪が観測され、また苦手な雪がきたとコタツでまったり熱燗を飲む日々です。
そんな寒い寒い中、中京では熱い熱い戦いチャンピオンズカップが行われました。1番人気には夏の上り馬テイエムジンソク、2番人気には去年の覇者サウンドトゥルーが選ばれる形となり、9月後半から続く外国人騎手のメインジャックが止まるかと期待しましたが、勝ったのはライアンムーアと初コンビを組んだゴールドドリームでした。
レースはスタート直後、最内枠を引いたG1・10勝馬のコパノリッキーがハナを奪いにいくと、外からテイエムジンソクが続きました。そして、その後ろにびったりとケイティブレイブがつけました。少し遅いペースになったことで向こう正面に入ったときにミツバが動くか!?と期待しましたが動かず、ノンコノユメとクリスチャンデムーロが押していく展開になりました。しかし、まったりと逃げていた先行勢にとっては美味しい展開になり、迎えた直線。2番人気のサウンドトゥルーは外から蓋をされ、行くところなくやむをえず内を選択しました。これは、少し鞍上の大野君にガッカリしましたね。
人気を背負ってもなお勝負するために内を選んだのではなく、展開を読み切れず、対応策の準備がレース中にできなかったのでしょう。向正面で少しでも感じていれば、また違った結果になったと思います。溜める競馬で頂点をとった馬ですから展開が合わない時はしょうがないと思いますが、今回は合わない上に対応も全くできなかったと言うことだと思います。その中、直線では逃げていたコパノリッキーとテイエムジンソクが激しい叩き合いとなり、思わず「古川君がんばれ!」と声を出した瞬間。コパノリッキーを捕らえ、よしっ勝った!と思った矢先に外からライアンムーアと溜めにためた末脚を披露したゴールドドリームが交わし去り、見事JRAダートG1をフェブラリーSに続き制覇しました。
先行勢が有利な展開でも、ギアの入り方がまるで芝のレースを見ているかのような加速で差しきったのは、馬の力もありますが、流石ライアンムーアということではないでしょうか。勝負所までは距離に不安があることも踏まえ内でじっと我慢し、一気に進路を確保すると後は力を解放するだけでしたからね。②着に敗れはしたもののテイエムジンソクと古川君も非常に良い競馬をしました。勝負がかかってもなお自分達のスタイルを守り、勝ちにいっての②着は相手が悪かったと言うしかないですね。Gを勝つには100点の競馬では足りません。満点以上の120点の騎乗をしなければ勝てません。そのことを改めて考え直させられたレースになりました。
今週は香港国際競走に、日本では2歳牝馬の頂点を決める阪神ジュベナイルフィリーズが行われます。同一G1・3連覇がかかるルメールにとっても負けられないレースになるのではないでしょうか。私の注目もサンデーレーシングのロックディスタウン、ラッキーライラック、ソシアルクラブになります。その他にはコーディエライトの逃げ、マウレアの勝負根性にも期待しています。しかし、まだまだ過程の2歳牝馬だけに、急激な成長にも期待したいと思います。今年も香港の競走を馬券発売するということで、皆様にとってはどこを勝負所にするか重要な週末になりそうですね。チーム日本の意地、そして新たに生まれる2歳女王に期待しましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。