元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
バリエーション
2018/4/25(水)
皆様、こんにちは!今週は元広島カープの、鉄人・衣笠さんの死去をつげるニュースを耳にしました。星野さんが亡くなり衣笠さんまでと、野球界にとってなくてはならない人物達が次々と亡くなっていくのには、寂しさを感じてしまいます。時代の流れには逆らえないのは人としてもわかってはいますが、いつまでも思い出と共に、それが永遠にあればなとも思ってしまいますね。そう思うのは競馬界でもそうですね。未だにシンザンが語り継がれるように、直接的に戦えなかった馬たちが一緒に走ればどうなるのだろう?と思ってしまいますからね。しかし、それもまた美学なのかもしれません。頭の中で衣笠さんも野球ファンの中で生き続け、シンザンのように未来に出てくる鉄人選手と比較され「衣笠はもっとすごかった」と言われるようになると信じています。
あとにも先にも、過去に戻ることもできないのは競馬界も同じ。産まれた年が同じ、牝馬だけが共に戦うことを許されたオークスに向けて、先週から開幕した東京競馬場ではオークストライアルフローラSが行われました。制したのはミルコ騎乗のサトノワルキューレでしたね。新馬戦では1800mを追いどおしの競馬になりながらも道悪を制し、2戦目では不利を受けての3着。その次には長くいい脚を使い快勝し、今回とうとうG2という重賞を制しました。
レースはスタート直後からノームコアがハナを奪う展開になりました。途中の1000m通過は1分1秒と開幕週のG2であれば前残りが予想される中、ミルコは道中で追いかけることをせず、直線一気にかけました。今まで全てを違う競馬で勝ち上がってきた馬だけに、これも対応するのか?と心配しましたが、心配も何のその。着差以上の楽勝で、見事勝利をあげました。初の輸送も初の左回りも、スローからの瞬発力勝負にも対応できたのは、非常に大きな収穫だったと思います。これだけバリエーションが豊富な競馬で結果を出してこれたのは、馬の教育がしっかりされていること、そして騎手自体がレースを作れることに限ると思います。
ミルコの特徴としてはレースを自分で作り、自分で変化させることができる騎手だと思っています。もちろんスタートしてすぐにいいポジションを取り、馬の力を活かして押し切ることも大事ですが、重賞になればなるほど、予想外の展開がつきものです。それに人も馬もが対応できることは今後にとっても強みになるのではないか、と思わされたレースでした。デビューより減り続けている体はここがピークかという形になっていましたし、間隔も少し心配です。しかし、アーモンドアイ一強に対し、ラッキーライラックと共に女王に対して戦えるのはこういう馬ではないかなと思います。本番に向けて調整が難しくなるところはありますが、後は名門・角居厩舎の腕にかかっていると思います。
1週間休んだあと、ここから5週連続G1が始まります。今週は最長G1天皇賞(春)が京都競馬場で行われます。3200mと長丁場のレースになるだけに、どれだけ馬と向き合えるか、馬の機嫌を取り続けることが勝利へのカギを握っていると思います。その中で1番人気に推奨されるのはシュヴァルグランでしょう。前回のレースはノーカウントにしてもいいと思います。全ては今回のために仕上げてきていると思います。実力派・友道厩舎のパターンでいうとこ獲りにきたという形が見えますからね。鞍上にはJCを共に制したボウマン騎手が来日するということからも本気度が伺えますからね。
それに対抗するのはガンコではないでしょうか。お手馬を降ろされ、ここは藤岡祐君にとっても騎手としてターフで借りを返したい一戦だと思います。ガンコの場合は道悪も苦にしないことからも、週中の雨は大歓迎だと思います。その他には新コンビの豊ちゃんが騎乗停止になり回ってきたチャンスを三浦君がどう活かすか見物のクリンチャー。長距離砲アルバートや善戦マンのトーセンバジルもリーディングぶっちぎりの藤原英厩舎が万全に仕上げてくるでしょうし、非常に楽しみです。これが終われば東京G1が続きます!是非、春最後になる京都G1を生観戦といきましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。