元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
豊マジック!
2018/7/11(水)
皆様、こんにちは!今週の9日、10日は北海道にあるノーザンホースパークで世界一のセレクトセールが行われました。9日は何と昨年より更に売上を伸ばしました。それもそのはず、私もオークションをテレビで見ていましたが、仔馬達の質の高いことと言ったら、もうビックリするほどでした。そして、もうひとつの私の注目は新種牡馬ドゥラメンテやモーリスの子供でした。ドゥラメンテの子の初めのセリでは、いきなり8000万円(コンヴィクションⅡの2018)という高額が出ての落札。
さらには1億8000万円(アイムユアーズの2018)での落札があり、総じて形も素晴らしいですし、これは日本競馬界にとって新たなブームが起きる可能性があります。毎年毎年のように更新される売上レコードに品質と、日本競馬界がとうとうここまで来たのかと感動してしまいました。今回のセリで落とされた子供たちの、デビューが待ち遠しくて仕方ありません。
それでは先週の競馬の話に参りましょう。中京競馬場では数少ないJRAダート重賞プロキオンSが行われましたが、結果はマテラスカイの圧勝で終了しました。騎乗していた豊ちゃんもビックリの日本レコードで、前回のレコードを1.6秒更新しました。マテラスカイと言えばドバイに挑戦したことでも知られていますが、あの時、本当に勝つ可能性があると私は信じていました。当時よりも更に成長した彼にとっては、今回の勝利もまぐれではなく、必然だったように感じます。
レースはテンこそ早くなれど、向正面で早々と息を入れることを選択した豊ちゃん。その息の入れ方は、天才ならではでした。そして、迎えた直線では他馬を更に引き離し、さすが王者と言いたくなる勝ちっぷりでした。スタートの早さも群を抜いており、ダートコースに入るころには1~2馬身ほど他馬より出ていたことからも、ダート短距離界をこれから塗り替えていく存在と確信しました。
2着にはウインムートが入りました。こちらも、ダート重賞を勝つ力はある馬ですが、今回ばかりは相手が悪いとしか言いようがありませんでした。ドリームキラリも運がなかったとは言え今回は力を見せてくれましたし、サクセスエナジーにとっては内枠からの競馬でもある程度の競馬ができるようになった成長も感じました。この4頭は今後ダート短距離界でも注目しておかなくてはいけない存在となっています。本番JBCスプリントに向けて、夏をどう越してくるのか楽しみになりました。
福島では七夕賞が行われました。レースは丸田君騎乗のメドウラークがブービー人気をひっくり返しての勝利に沸きました。馬場が重くなると活躍しているだけに今回の馬場もマッチしたように思えます。レースでは師匠の馬で、初の重賞をと願っていた岩崎君(プラチナムバレット)が4コーナー手前で前の馬に接触し落馬してしまいました。今回は彼の勝ちたい気持ちが大きくなりすぎたところもありますが、それだけではないとも思っています。もちろん、4コーナー手前から、外からかぶされた時に引くしか方法はなかったと思います。しかし、前回レイホーロマンスで失敗してしまったと自覚している分、ここは引けないと彼の中では思ったと思います。
そうなってしまった最大のミスは向正面で外からマイネルフロストが上ってきた時です。岩崎君は内にいたにも関わらず、福島の4コーナーを懸念して一頭外に出し、共にポジションを上げてしまいました。そこでジッと我慢していれば、展開は全く違うことになっていたと思っています。どちらにしても、後の祭りであることは変わりないです。しかし、今回のミスで彼がどう学ぶかを皆さんには見てほしいと思います。ミスのない人間はいません。ミスからどう学ぶか、それが騎手にとっては一番必要なことだと思っています。
今週は函館で函館記念が行われます。1番人気に推奨されるのは洋芝経験もあり、力もつけてきたトリコロールブルーではないでしょうか。ルメールとのコンビも強烈です。ここであっさりならば中距離の重賞を今後、更に勝てるような気もしています。しかし、ルメールは冷静沈着の凄腕ですが、函館は少し合っていないように見えます。もちろん今週から合わせてくる技術があるだけに何とも言えませんが、そこにつけ入りたいのがサクラアンプルール。57.5キロとハンデがついてしまったことが不安ですが、それでも今の天気と馬場では、十分に再度輝くこともできると思います。軽量大逃げでどうにか粘り込みたいヤマカツライデンや勢いに乗りたいスズカデヴィアス、その他ではエアアンセムやナスノセイカンなどの穴馬にも注目が必要な一戦です。函館の地でイカール星人ならぬ馬券アタール星人に皆様がなれるよう期待しています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。