元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
成長の証
2018/7/18(水)
皆様、こんにちは!とうとうワールドカップが終了しましたね。戦前の予想通り、フランスが優勝しました。今回はメンバーの若返りと共に全てのポイントにおいて、キーマンとなる選手ができたことが素晴らしい結果を出した要因だったのではと思っています。そして、世間の3連休の月曜日にはジャパンジョッキーカップが行われ、見事JRAチームが優勝を果たしましたね。優勝賞金100万円は西日本の大雨で被害に合われた方へ寄付すると発表もされました。この様に、騎手は馬に乗るだけでなく色々な社会貢献を常に考えていると思います。もちろん競馬はギャンブルです。しかし、その前に人として、騎手は競馬に向き合い、社会人として頑張っていることをもう一度考えてもらえたらと思います。
それでは日曜日に行われた函館記念の話をしましょう。1番人気には洋芝でも結果を出していた上に、ワールドカップ決勝進出フランスに名前にブルーで青帽、さらに鞍上がフランス出身のルメールということも重なりトリコロールブルーが圧倒的人気で選ばれました。個人的には少し、条件が揃いすぎた気がしていました。しかし、結果は藤岡佑騎乗のエアアンセムが好位抜け出しを図り、重賞初制覇をしました。レースは完璧だったと思います。逃げるカレンラストショーを無理せずに追いかけ、4コーナー入口では前にいたカレンの手応えがなくなってくるのをいち早く気付くと外に出し、4コーナーからはジリジリと踏んでいき、最後は突き放す強さでした。
小回りの函館では、この乗り方が一番勝つ可能性が高いと私は思います。しかし、簡単にできることでもありません。スタートが決まりポジションを取り、さらに馬を御し、回りの馬の手応えに敏感でないとできない乗り方です。それを簡単にやった藤岡君は見事だったと思います。そして、一番「おぉ」となったのは4コーナーでの入り方でした。函館のコーナーはスパイラルカーブと呼ばれ、下り坂のように作られているため膨れがちになるのですが、外に馬を置いて鐙を踏みながらも最低限のロスで回ってきた辺りが、彼の一番の成長部分だったように感じます。
2着にはサクラアンプルールが入りました。こちらは実績もありますし、順当だったなと思います。6着だったトリコロールブルーは勿体ない競馬になってしまいましたね。函館が馴染んでいないルメールとしては、人気馬に乗る場合はスタート後にすぐ一番外に出し、安全に運ぶのが最近のレースでしたが、今回は外に出す前にかぶされました。その上、前からは手応えがなくなった馬が下がってくるというアンラッキーが重なり、何もできなかったというレースになってしまいました。同馬にとってはここで賞金加算することで秋には、とうとうG1挑戦か?と思っていただけに、陣営にとっても計算外のレースになってしまったと思います。
今週で中京・福島・函館競馬が終わります!夏競馬第1弾の三場がこれで終わりますから、ぜひ最後に競馬場に足を運んでくださいね。中京記念での注目はグレーターロンドンになるのではないでしょうか。まだ重賞を勝っていないことに驚きを隠せない血統馬だけに、直線の長いここで斤量もハンデがある今回で決めたいのではないでしょうか。昨年のサマーマイルで大活躍のウインガニオンも黙っていないでしょうね。その他にも前回はスプリント戦で戸惑っていたダイメイフジも出馬してきますし、成長著しいリライアブルエースや斤量が魅力的なミエノサクシードやワントゥワンにも注目したいです。
函館2歳Sは能力よりも成長の早さに注目したいと思います。その中でも完成度が高いのはナンヨーイザヨイやスズカカナロアではないでしょうか。夏のスプリントで期待したい数少ないパドトロワ産駒のジゴロも頑張ってほしいところではあります。その他にも、騎手の初重賞制覇も多いのが夏の2歳戦。重賞を勝ったことのない騎手が男気を見せられるか、そこにも注目してください。まだまだ暑い夏が続きます。体に気をつけて、熱い競馬を見守ってください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。