元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
選択した外
2019/1/30(水)
皆様、こんにちは!先週は2019年で一番の寒波に襲われましたね。栗東では朝から大雪となり、どの厩舎も雪かきで忙しくなった週だったと思います。その雪の影響では、日曜日の中京競馬で開始が30分遅れるなど影響がありましたが、延期や中止などにならなくて本当に良かったと思います。そんな大雪の競馬が終わり、今週の月曜日には2018年のJRAアワードが行われました。年度代表馬には満票でアーモンドアイが選ばれましたね。そして、次走についてはドバイターフが選ばれました。
同レースには他にも日本からディアドラやスワーヴリチャード、ヴィブロスなどが参戦を表明しているだけに、日本陣営にとっても脅威のライバルになったと思います。まだ予定でどのようになるか分かりませんが、日本陣営として考えた場合、最強メンバーが集結。3月のドバイで、今年は日本旋風を巻き起こすことができるのか非常に楽しみですね。
その大雪が心配された日曜日には京都でシルクロードSが行われました。1番人気に選ばれたダノンスマッシュが見事な走りで他馬を完封しましたね。今回のレース展開からも、一頭力が違かったと考えて良かったと思います。後ろからも前でも競馬ができるセンスに、あのバネはファインニードルがいない今、スプリント界で頂点が取れる才能だと思いました。
逆に昨年の激走から初めての放牧で緩んだまま、良くなっていなかったのが2番人気に推奨されたラブカンプーでしたね。こちらは、心配していたことがまさにそのままとなってしまいました。極限まで追い込んだ体が、緩めた瞬間に痛みが出る、そんな感じに見えました。人も集中して忙しい時は痛いのも忘れて働いているのに、3日ほど休みが挟まった瞬間に風邪をひいたりしますからね。しかし、ここを叩いて次も叩き、レースへのリズムを取り戻すことができれば、また必ず馬券に絡んでくると思います。
東京で行われた根岸Sではマーフィー騎手が初のJRA重賞をコパノキッキングと制しました。かつてはハナだけの競馬をしており、ハードなスケジュールで馬がいい時と悪い時もありましたが、敗戦で一息いれ想定していなかった後ろからの競馬を経験したことで、更にその才能を発揮できるように変わりましたね。今回のマーフィー騎手の乗り方もお見事だったと思います。距離が延びることが不安要素になっていましたが、それを無理に内に入れては馬の性格上、嫌気がさす可能性がありました。だからこそ、今回は技術的に外を回しても折り合いを重視した乗り方を選択しました。内で詰まるのが怖いから外を選択したのではなく、考えた上での外の選択。これが今回の匠でしたね。
日本人騎手では、よく自分の責任になるのが嫌だからと外を選ぶ騎手もよく見ますが、本当に勝負をするといった時、外国人騎手は馬にとってどこがベストなのか、例え詰まっても内を攻めるなど大胆に勝つためのレースをします。もちろん、馬によっては掲示板を確保する乗り方が正しい場合もあります。しかし、本場で乗ってきたトップこそ、こういった勝つか負けるかの勝負を仕掛けてきます。この意識こそが、競馬先進国と後進国の違いではないのかなと思わされました。ただ、今回の勝利でも最後の最後で脚が止まっていたことからも、次走のフェブラリーSでは今回のようなレースはできません。違うレース展開をしなくては難しいと思います。そこを藤田菜七子騎手がどう捉え、初のG1でどう乗るのか非常に楽しみになりました。
今週は京都競馬場ではクラシック皐月賞に向けてきさらぎ賞が、東京では安田記念に向けて東京新聞杯が行われます。とりわけ、きさらぎ賞は当初の想定から少し増えたものの少数頭となるだけに、難しいレースになりそうですね。スローのよーいドンになれば距離を不安している馬にとっては楽になると思います。逆に折り合いが心配な馬は騎手の技量が試されるレースになりますね。その中でも注目が集まるのはヴァンドギャルドとダノンチェイサーでしょうか。しかし、私のイチ推しはアガラスになります。現在の重い馬場と自分でレースを作れる強味がマッチするのではないかと思っています。切れ味勝負になると少し不利になるかもしれませんが、それでも期待しています。楽しみなレースが盛り沢山!皆様、今週も是非お愉しみを!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。