元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
競馬の違い
2019/2/20(水)
皆様、こんにちは!最近、毎日の写真が楽しみな松田です。早いもので、一番下の孫が2歳になっています。最近では「じぃじと一緒に寝る」と言ってくれたり「これは、アンパンマン、これはドキンちゃん、あとバイキンマンはこれ!」と沢山説明してくれるようになり、本当に見ていて飽きないなと思わされています。その上、バランス感覚も素晴らしく、こんな早くできるのは天才か?第二の菜七子になるのか?と親バカならぬ祖父バカうぃ全開にしています。
そんな中、東京競馬場では2019年初めのG1レース、フェブラリーSが行われました。世間の注目は藤田菜七子騎手が初めて女性でG1に騎乗することでも注目を集めましたね。騎乗するにあたり、なぜ彼女がと思われたファンの方もいたと思います。ただ、彼女の騎乗を初めから見ていて思ったのは、年々成長している姿です。初めは馬に持っていかれるんじゃないか、抑えることなんて無理ではないか。そう思っていました。しかし、ハミの掛け方、体の使い方と女性にしかできないスタイルを彼女は努力で作り上げていきました。今では女性騎手だからではなく、藤田菜七子という一人の騎手として、みんなが見るようになりました。結果を出し、オーナーとの絆を深め、今回になりました。これは彼女自らがつかんだ、実力の切符だったと思います。
そんなレースではスタート後、ノンコノユメが大きく出遅れる中、1番人気のインティがハナをきる形となりました。馬混みが得意ではないサクセスエナジーがもう少し張るかと思っていましたが、早々と引いたことで、形が決まってしまいました。この瞬間、これはインティで間違いないなと結果を予想できました。枠が逆であれば松山君も、もう少し主張したいと思っていたはずです。しかし、外からインティがきたことで引くという形を取ったのでしょう。しかし、勝つためには引いてほしくなかったです。ここを主張するかしないかは非常に大事なポイントでしたから。勝つ競馬と問題なく乗る競馬は違います。
迎えた道中では、出遅れたノンコノユメが前残りの馬場を考え、早め早めに動き出しました。これによりオメガパフュームは併せ馬になられたことで、リラックスしたタイミングということもあり息が入らなくなってしまいました。4コーナーで早々とこの2頭は消えてしまいました。こちらは勝ちを狙う競馬も、勝ち急いだことで自らの競馬を無くしてしまい、同時にもう一頭を潰しただけになってしまったと思います。
注目のコパノキッキングは後方待機を選択していました。扱いが難しい馬のため、菜七子ちゃんも繊細に乗っていたのは分かりました。しかし、こちらも勝つためにはあのポジションでは意味がない騎乗だったと思います。今の馬場を考えても、距離の不安があったとしても、勝負ではなく守りに入った騎乗だったからです。それでも今回の馬場で来るのなら相手とは2、3レベルの違う能力がいりますから、G1では相当難しいと思います。
色々な騎乗をそれぞれの騎手がしている中、勝つためかつ楽な競馬をしたのがインティでした。時計を持っていないことから、ペースを落としながらも他馬を寄せ付けずいつもの競馬を行い、迫るゴールドドリームを引き離して7連勝で初のG1を制しました。2着には復権を狙うゴールドドリームが入りました。こちらは歳をとることで気性面も扱いやすくなっていたこともありますが、本当にいい馬に成長しました。戦前も実力なら抜けていると思っていましたが、展開が向かないレースだったと思います。その上、ルメールは最近乗れていないことからも、4コーナーの仕掛け所で構えてしまいましたからね。その二つがなければ、勝ち馬は変わっていたかも知れません。しかし、これも競馬、沢山の思惑と展開が難しくなった結果だったと思います。
今週はG1こそありませんが、G1級といっても過言ではないG2中山記念や高松宮記念を占う意味で大切な阪急杯が行われます。とりわけ中山記念では次走ドバイを表明した2頭、ディアドラとスワーヴリチャードが出走してきます。その上に皐月賞馬エポカドーロと中山巧者ウインブライトなど楽しみなメンバーがそろいました。やはり私が思うポイントは、グランプリを休養にあて今年にかけるスワーヴリチャードとアーモンドアイの次点で牝馬をひっぱるディアドラです。
スケジュールとしてはスワーヴリチャードに注目したいですが、今回の58キロは簡単ではないと思います。逆にディアドラは54キロと斤量も魅力的なだけに楽しみが多いと思います。エポカドーロも次走を占う上では大切なレースになりますし、ステップアップのために勝ちにくる馬と能力だけでは判断しにくいレースとなりそうです。勝ちにいく競馬と次を見据えた競馬。こちらが次への大事な判断材料になると思います。今週から中山・阪神・小倉に切り替わりますので、くれぐれもお間違えなく!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。