元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
点と線
2019/2/27(水)
皆様、こんにちは!先週は天皇陛下の30周年をお祝いする慶祝が行われ、各界のトップたちがお祝いの場に出席しました。国を率いて30年という年月は、私には想像もできないプレッシャーとの戦いだったと思います。そして、競馬界でも天皇陛下30周年を記念したレーシングプログラムが配られたと聞きました。その中には、春・秋を含めて歴代の天皇賞馬が記載されていたみたいです。唯一の天皇国家である日本だからこそのレーシングプログラムでもあるなと思わされましたね。それと同時に新しい元号は何になるのか、非常に気になりました。そんな中、WIN5では4億を超える勝馬券が出ましたね。これもまた、すごい巡り合わせだなと思わされました。
そんな中、阪神では阪急杯、中山ではG1ではないのが不思議な中山記念が行われました。特に中山記念では次走を目標にした馬と、ここを目標にした馬できっぱりと結果が分かれましたね。注目は54キロのディアドラ、53キロで復帰にかけるラッキーライラック、中山1800mは負けなしの中山巧者ウインブライト、2000mまでなら負けられないステルヴィオ、58キロでも期待したかったスワーヴリチャード、皐月賞馬再びエポカドーロといったところでしたが、レースを制したのは万全の態勢で乗り込んできたウインブライトと松岡正海君でした。中山金杯で結果を出した二人が、またまた中山でやってくれましたね。鞍上の松岡君は金杯勝利後にケガで離脱、そして復帰してからの勝利がまたウインブライトとの重賞制覇となり、今年の勝利がウインブライトと勝った重賞のみというのには少し驚きました。
レースは連闘で挑んできたマルターズアポジーが超ハイラップを刻みました。その後ろにつけたのが軽量を活かしたいラッキーライラック、直後にエポカドーロ、そしてスワーヴリチャードにウインブライトという隊列になりました。レース展開から見るとエポカドーロ、スワーヴリチャード、ウインブライトの場所で決まると思っていましたが、4コーナーの入りでも、ラッキーライラックが止まる様子がなく、後ろの3頭は少し焦ったと思います。しかし、ゴール直前でラッキーライラックをウインブライトが捕えると見事な勝利で中山記念連覇を達成しました。
2着にはラッキーライラックが入り、こちらは休み明け、なおかつ53キロとはいえ、最高の結果だったと思います。3着にはここでは負けたくなかったステルヴィオ、4着にドバイに向けて最高の準備レースだったスワーヴリチャードが入りました。ステルヴィオにとっては非常にもったいない競馬となってしまいましたね。少しコース取りに手間取り、なおかつ初めての騎乗だったことも影響があったと思います。しかし、丸山君も今回のレースで馬の能力を計ることができたと思いますので、次は更に期待していいと思います。
スワーヴリチャードに関してはミルコもよく考えて乗っているなという印象を受けましたね。少し忙しい距離、なおかつ右回りということもあり、3~4コーナーでは、やはり少しもたれながらもラチに寄せ走らせ、鞍上の気持ちとしてはラッキーライラックのところまでマクり上げたかったと思います。しかし、休み明けで次走はドバイと発表されている当馬にその走りをさせてしまえば、疲れが出る可能性がある。だからこその競馬だったと思います。騎手が気持ちを我慢してでもしたこのレースは次に必ずつながる競馬になったと思います。
競馬は本当に難しいですね。点で考えればここを勝ちに行くことだけに注力すればいいのですが、競走馬としてどこをピークにと考え持っていくには点をつなげた線でレースを考えなくてはいけません。そのため、馬の実力プラスどこに点を打っているのかを把握する必要がありますからね。さらに馬それぞれには課題があり、その課題を点にしつなげていくことで、初めて重賞やG1を勝ち取れるのですから。毎年の中山記念を見ると、再認識させられることです。
そんな豪華レースのあとにも豪華な重賞が続きます。土曜日には中山でオーシャンS、阪神では桜花賞トライアルのチューリップ賞、日曜日には中山で皐月賞トライアル弥生賞が行われます。この中でも注目は弥生賞になります。前走ではえらく強い競馬で勝利を上げたラストドラフトが出走してきます。本番では乗れないルメールをここでも使ってくるということは、先ほどの点でいえば勝ちにきていると想像してしまいます。そして、ホープフルSからのニシノデイジーにとっては負けられないレースになると思います。その他にも、才能発揮となるか成長が鍵のカントルに、安定感抜群のブレイキングドーン、2走目がどのように出るのか楽しみなシュヴァルツリーゼに期待したいと思います。皆様、ぜひ競馬場へお越しください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。