元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
統一感のない採決と6分の怪物
2019/4/17(水)
皆様、こんにちは!世間は入学式や入社式など、新しい門出を祝う季節となりました。待ち遠しく待っていた桜も散り、新緑の季節へと町も変わりはじめましたね。我が家でも孫が小学校に入学し、真新しいランドセルを持って、学校に行く姿は何にも代えられないほど感動してしまいます。そして、あの小さかった子が、一人で歩いて帰ってくる姿も同じです。人も馬も成長し、輝く姿は美しいと改めて思わされました。
そんな中、中山競馬場では3歳へと成長した頂点を決める戦い皐月賞が行われ、サートゥルナーリアが無敗のまま勝利を手にしました。正直、パドックを見ていると、これはまだ6分くらいのデキで、落とすとしたら今回だなと思ってみていました。しかし、その状態でも返し馬を見た時に、この馬は負けるわけがない。そこまで思わされてしまいました。あの雄大で、大きく、しかし軽いフットワークは、サラブレッドとして理想の走りをしていたからです。
そして、レースがスタートしました。まずランスオブプラーナがハナを伺うと、他馬もかなり早いペースでポジションを取りに行きました。これを見るもアドマイヤマーズは気性面から出すことができませんでした。配列が決まると、サートゥルナーリアは自信満々に外目を通すことをしました。鞍上のルメールからすれば、外にいさえすれば、邪魔されなければ勝つという自信があったと思います。しかし、逆に他馬に騎乗していた騎手を見ると、なぜ誰もあの怪物にプレッシャーを与えなかったのか疑問に思いました。戦前より一頭抜けているのは、どの騎手も分かっていたことですから。
迎えた4コーナー、ヴェロックスが早めに抜け出すと内からはダノンキングリー、外からサートゥルナーリアとなりました。ヴェロックスが外の馬場へと誘導される中、サートゥルナーリアが物見をし内に寄れて衝突。そのままサートゥルナーリアが1着でゴールインしました。掲示板には審議のランプが光ました。10分間もの審議の末、結果は変化なしでした。これくらいの衝突は競馬ではよくあることです。なぜ、そこまで長い審議になったかはわかりませんが、ルメールに5万円だけの過怠金には?が残ります。以前の皐月賞ではリオンディーズがモタれた際には降着と4日間の騎乗停止が下りました。今回の件もこれに近い気がしています。
その他にも以前、モレイラ騎手がモタれた際に4日間の騎乗停止がありました。あちらはゴール前での事象という違いはあります。しかし、今回はG1ということも踏まえれば、アタマ差でぶつけられた影響が0だったかと言えば疑問が残ります。勿論、結果は変わっていなかったと私は思います。それでもルールという視点から考えれば、統一感のなさには疑問が残ります。今回の勝利は無敗で皐月賞馬の誕生に、新たな怪物のヒストリーの中でも、少しかわいそうな日にもなった勝利だったと思います。
さて、G1ウィークもここで一息。今週からは開催が変わり、東京・京都・福島という3場での戦いになります。土曜日には福島で福島牝馬S、日曜日にはオークストライアル・フローラS、京都では安田記念に向けてマイラーズCが行われます。その中でも注目したいのはマイラーズCです。絶好調、中内田厩舎から出馬する2頭は脅威となりそうです。前回、復帰戦で圧巻の走りを見せたダノンプレミアム。そして、才能開花のパクスアメリカーナです。この2頭に立ち向かうのが、G1馬モズアスコットに新勢力インディチャンプになります。
頭数が少ないことからも、この4頭が人気を集めそうですが、その中でもダノンプレミアムは少し桁が違うような気がしています。もともとベストはマイルだと思っている馬ですし、脚元が大丈夫ならば持ったまま楽勝もまたあるのではないでしょうか。馬の巡りが今年非常に素晴らしい川田君としても、このレースは通過点と思っていると思います。本番では香港の怪物が来る噂もあるだけに、まずは何としてもここを勝ち、次のステップへと向かってくると思います。そこにインティチャンプがどれだけ対抗してくるか。これで今年のマイル界が分かりそうです。皆様、開催場所に気をつけて、今週も競馬場で会いましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。