元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
平成→令和
2019/5/2(木)
みなさん、こんにちは!とうとう令和元年が始まりました。平成という時代は思っていた以上に素晴らしい年でした。今、思えば昭和で馬に乗り始め、平成で引退しました。しかし、平成には可愛い孫たちが産まれ、あっという間に幸せの形が変わりました。少し昔をさみしく思うこともありますが、それでも孫たちの新たな可能性や成長を見ていると、それもまた大きな幸せだと感じています。令和は、その孫たちが末永く幸せであってほしい。そう思う年になります。平成の終わりということで語り継ぎたいのは、手前みそになってしまいますが、息子が調教しドバイワールドカップを勝ったヴィクトワールピサになります。
3.11、思いもしない揺れが生じ、これはただ事ではないと思いました。次の瞬間テレビに映し出されたのは信じられない光景。言葉を失い、絶望を感じました。そんな時に、ドバイへと挑戦していた息子とヴィクトワールピサ。こんな時に競馬をしていていいのかと自問自答したと聞いています。しかし、ホースマンにとって、結果で見せることが最善だと思ったと思います。そして、歴史的な勝利。騎乗したミルコは涙ながらに「日本を愛しています。日本のために祈っていました」との言葉には勝った喜びだけでなく、心を打たれました。数々の名馬が産まれ、日本競馬は世界基準へと変わりました。しかし、この勝利こそが私の平成ベストレースだと思っています。皆様にとってのベストレースはどのレースですか?
そんな中、平成最後のG1天皇賞(春)が行われました。勝ったのは新たな形の怪物フィエールマンでした。デビュー時から破格の走りをしており、負けた福島でのレースも背筋が凍るほどでした。そこから挑戦した菊花賞では距離の不安を払拭させる走りを見せ、今回は道中で自ら動き、少しハミを取るところもありました。3コーナーでは息を入れたい場所でエタリオウが来たことで、ペースアップさせられました。ここで後ろからきたエタリオウは一息入れる形となり、フィエールマンは動いた分、最後は鈍くなるなと思いましたが…。しかし、4コーナーからは止まるどころか、グローリーヴェイズとで6馬身引き離す結果は、まさに怪物と呼ぶにふさわしい結果だったと思います。
2着にはグローリーヴェイズが入りました。追い切りを見ていた時から、今回はこの馬が勝ってもおかしくないと思うほどのデキでした。こちらは、中距離から長距離で面白くなってきそうだなと思います。もちろん、中距離には沢山のライバルがいますので、簡単ではありませんけどね。4着に敗れたエタリオウは、浅めのブリンカーでのレースでしたが、前回の行きたがる素振りがなく少し心配しました。走り方や気持ちの面を見ていると、同世代で走った3000mとは違い、歳をとったことで中距離向きの体になった気がしています。しかし、今回は距離を含め、改めて見直すためにはいいレースだったのではないかと思います。ここで連続2着は外してしまいましたが、何かしらの変化をつけていくことで、この素晴らしい馬が勝ち切る方法を見つけられる気がしています。
さて、終わりあれば始まりがある。平成から令和に変わり、最初のG1・NHKマイルCが行われます。まず注目されるのが桜花賞馬グランアレグリアと2歳チャンピオン・アドマイヤマーズではないでしょうか?2歳時の直接対決では、アドマイヤマーズに軍配が上がりましたが、前回の桜花賞では破格のタイムで制したグランアレグリアも逆転を狙います。その他ではヴィッテルバッハも東京は合いそうですし、前走は素晴らしい走りを見せたダノンチェイサーもいます。ファンタジストは距離を見直してここでという思いもあるでしょうし、グルーヴィットも見逃せません。果たして、令和初めのG1を制するのは誰なのか?ゴールデンウィーク最高の締めくくりは是非、東京競馬場で!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。