元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
若手の活躍こそ未来への糧
2019/6/12(水)
皆様、こんにちは!以前ほどの盛り上がりがなくなってはしまいましたが、サッカー女子W杯が始まりましたね。我ら、なでしこジャパンは格下アルゼンチンにまさかのドロー発進と不安が残る形でのスタートとなってしまいました。メンバーを見ていても、もう誰が誰だか分からないというのが正直なところではあります。思い返せば、W杯優勝から出場を逃し、そして今回となり注目が落ちていることもあります。その上に監督の交代などもあり、すっかりと注目度が落ちてしまった気がします。しかし、サッカーも結果が全て。また決勝トーナメント進出すれば注目が増え、更にベスト8、ベスト4と上がっていくに決まっています。だからこそ、選手や監督も結果にこだわる試合をどうかしてほしいと思います。
それでは競馬の話にまいりましょう。先週の重賞レースでは、阪神では伝統のハンデ戦マーメイドS、東京ではエプソムCが行われました。その中でも阪神で行われたマーメイドSでは、ハンデ戦らしく荒れた結果となりました。勝利したのは51キロの斤量で挑戦してきたサラスと松若君でした。毎年、53キロと51キロの斤量の馬が善戦するレースだけに、注目はしていましたが、あの馬場で外から差しを決めたことは大きな驚きがありました。もともと力はある馬だとは思っていましたし、休養前は馬に疲れが出ているのが分かっていました。立て直した前走、走り方が戻ってきているのを感じました。その上で今回の斤量というのは本当にかみ合ったということだと思います。
2着にも51キロの斤量を背負ったレッドランディーニが入りました。こちらも勝ったと思ったところで差されたのは本当についていませんが、鞍上の謙一君も非常に上手く乗りましたし、もう少し雨が早くきてくれていれば、この馬が勝者だったからもしれません。3着にはスカーレットカラーが入りました。こちらは出走馬唯一の53キロだっただけに注目していましたが、今回は仕方ないという負け方だったと思います。毎年、このレースを見て思うのがハンデの重要さ、日本競馬のオープン馬以外のレベルの高さにいつも驚かされます。
こういうレースを見るとデビュー7年目より下の騎手限定の重賞競走などもできたらいいのにと思ってしまいます。育成という目線からもですし、逆に言えば斤量も軽くなるだけにクラスが下の馬でも挑戦しようという形が取れますからね。勿論、降級がなくなった今では、その後のことも考えなくてはいけませんが。若手の育成ならびに結果にこだわった形を取ることが、大事になってくるのかもしれません。なでしこも競馬も若手の成長なくして次はないですからね。
今週からは函館競馬が始まります。北の大地の皆様にとっては、待っていました!となる開催だと思います。その中で、いきなり函館スプリントSが行われます。注目はなんと言ってもダノンスマッシュに集まるのではないでしょうか。今回から鞍上もダノンのエース川田君に変わり、どういった競馬をしてくれるのか非常に楽しみにしています。簡単ではない馬ですが、きっと川田君であれば、ある程度自分の思っている競馬を馬にさせるかもしれません。
しかし、私の一番の注目はアスターペガサスです。鞍上には小崎君が戻ってきました。初重賞をしたパートナーが戻ってきた上に最高の条件となるスプリンター界でもう一度、素晴らしい走りをしてくれることに期待しかありません。そこに北海道が得意な須貝厩舎のリナーテが絡んでくるようなレースになるのかなと思っています。夏競馬に向けて、競馬界も新たな風が生まれることを信じ、見守りたいと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。