元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
積み重ねたものの違い
2019/6/25(火)
皆様、こんにちは!今週は京都競馬場の改装のニュースが大きく報道されましたね。付近の住民には工事のための説明会などが事前に行われていたため少しは知っていたものの、盛大に変わる京都競馬場が楽しみでもあり、悲しくもあります。よく考えれば、昔は京都競馬場でトレーニングを行い厩舎もそこにあったのですが、栗東へとトレーニングセンターや厩舎が移り、そして今回、新たにきれいになるんですよ。ただ、今回の改装でショックなのが唯一と言ってもいい丸い形をしたパドックが無くなるということです。馬を見せるためには楕円形の方がベースになっているのですが、分かってはいても京都だけの特権のように思っていたものが無くなるのは寂しくあります。これも時代の流れでしょうが、改装前の京都で残りどのようなドラマが生まれるのか期待しています。
それでは、先週行われた春G1シーズンの締めくくり宝塚記念の話をしましょう。勝利したのは短期免許で来ていたD.レーンとリスグラシューのコンビでした。今回、色々なところでレーンの前目につけた競馬が絶賛されていますが、私は彼の腕というよりも陣営の努力にフォーカスを当てたいです。今までスタートでも出なかった馬が出るようになったのは、大外で最後入れという部分もありますが、そこまで教え込んできた結果だったと思います。牝馬で華奢だったリスグラシューを大事に鍛えに鍛え、海外遠征をこなすまで育てると、香港遠征の経験から更に馬が良くなっていました。これら全てが上手くいったことから前目での競馬をできるようになったのだと思います。だからこそ、レーン騎手の一言目は「最高の状態で、レースに出走してもらえた」だったのではないでしょうか。
2着にはキセキが入りました。こちらは、レース毎に遅くなるゲートと最内の枠が仇になりました。しかし、逃げるという競馬を一辺倒にしてきた結果、出遅れても行くしかない。つまりスタート後に脚を使わざるを得ないという形にしてきてしまいました。外から見れば、自分の形での2着。しかし、過程からも勝てない理由はそこにあるのではないかと思っています。結果が崩れても勝つために試作をする必要があるのではと思っています。
3着にはスワーヴリチャードが入りました。パドックからも全盛期ほどの良さは感じられず、少しズルいところが出てきているように見えました。そこは鞍上のミルコも分かっていたのでしょう。あえて前目のポジションにつけ、前回と違う景色を見せることで、変化を求めた競馬をしました。しかし、4コーナーではズブさを見せ、結果としては今の状態では最高の結果だったのではないかと思います。今回は全ての馬に対して線で考えた競馬での結果が繋がったもの、もしくは繋がらなかったものがキッパリと別れたレースになったと思います。
これで春競馬が終わり、今週からは函館、福島、中京競馬が始まります。中京ではCBC賞、福島ではラジオNIKKEI賞が行われます。CBC賞では1200mに新しい道を見出したレッドアンシェルと中京大好きな福永君のコンビに注目しています。ハンデにうま味があり中京では3の3で勝っているグランドボヌールも天気予報から注目したいです。斤量は重いですがアレスバローズやセイウンコウセイなどもいます。斤量が51キロのアウィルアウェイやラベンダーヴァレイにも頑張ってもらいましょう。遅れてきた梅雨がやってきそうな今週。天気同様、荒れる馬券に期待しながら見てみたいと思います。皆様、くれぐれもお間違えなく競馬場に来てくださいね!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。