元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
THE夏競馬
2019/8/7(水)
皆様、こんにちは!梅雨が明け、すっきりした晴れ模様へと顔を変えてきた中、夏の甲子園が開幕しましたね。高校球児が全てをかけて挑む大会に、いったいどんな筋書きのないドラマが生まれるのか非常に楽しみであります。朝も晩もただ勝つことを目指し、汗を流し、走り込み、体を作り、何度も潰れた手のまめは皮膚を固くし、それでもなお出場できるのは選ばれた高校のみ。その中で優勝を決めるわけですから感動がないわけがありません。滋賀県からはレイクビワブルーと勝手に呼んでいる近江高校が出場します。今年はピッチャーが良く、予選では無失点できただけに、甲子園の舞台でも本当に楽しみになっています。皆様のイチ推し高校はどこですか?
それでは競馬のお話しに参りましょう。まずは小倉で行われた小倉記念ですが、勝利したのは5連勝かつ重賞3連勝となったメールドグラースでした。何走前からか着けたブリンカーの効力もありますが、今回も馬自身が自信を持ってレースを走っているように見えました。貫禄すら漂う走りに、ここから更に上の一戦級とどうなるのか非常に楽しみになりました。レースは枠順発表を見た時、浜中君が思い切り行くのではないかと読みました。最近の浜中君はロジャーバローズのダービーのようなレースが多くなってきており、また騎乗したストロングタイタンも調教を見る限りだと、これは行くのかなと思っていました。
それに続く形となったのが、スタートから松若君が促して促していったタニノフランケルでした。この2頭がレースを作る形となりましたが、今週の開催では4頭目あたりからの外差しの競馬が続いていました。このレースもまさにその展開に。非常に上手く逃げた二頭をノーブルマーズが捉えたと思った矢先、外から現リーディング川田君とメールドグラースが4コーナーで一瞬内か迷うも、すぐに外に切り替え、直線では一頭、別次元の競馬で差し切りました。2着にはメールドグラースに続くような形で、瞬発力を活かせたカデナが入りました。こちらは昔に戻ってきたという印象よりは、全てが向いたかな?と思います。勝ったメールドグラースの力を計るには少し物足りないメンバーになりましたが、その中でも確実に勝ち切るレースが出来たことが非常に大きなポイントだったと思います。
そして、先週のもうひとつの話題はルメール騎手の1日8勝のタイ記録です。以前までに豊ちゃんが持っていた1日8勝でしたが、東京でルメールが達成、今回は札幌でと異なる競馬場で同一騎手が2回目となる記録達成は初のことでした。当日のラインナップからも、今日は5つくらい行くのかなと思っていました。しかし、ポンポンと勝った午前中を見て、これは記録に届くんじゃないかと思わされました。それも、ルメール騎手のポジショニング、追い出し、そして要所要所で競馬の流れが非常に良かったからです。
競馬は一人で出来るものではありません。他から巻き込まれることも多数です。しかし、ルメール騎手の場合はそれを自然と回避できるポジションにつけやすく、先に流れを読めるところが強くもあります。その他にも、いくら人気をしていても馬の調子ひとつで勝てない時だってありますからね。だからこそ運も必要なんです。その全てが揃ったからこその記録だと思いますし、今の日本競馬でこの記録を越せるのは彼だけだなと思わされます。
今週も重賞レースが続きます。新潟では関屋記念、札幌ではエルムSが行われます。中でも関屋記念は面白いメンバーが揃いそうですね。まずは骨折休養明けのミッキーグローリーがどこまでできるのか楽しみにしています。京王杯AHでは圧巻の走りで重賞制覇しただけに、非常に楽しみです。鞍上には前述したルメール騎手を配置しています。しかし、長らく函館・札幌で乗っているルメール騎手が暑い気候に久しぶりの新潟コースというところが早く慣れる必要があると思っています。だからこそ、午前と午後の流れを見ておくのもひとつ大事なことかと思います。
その他にも安定感が出てきたソーグリッタリングがいますし、NHKマイルCで復活してきたケイデンスコールも斤量的にもチャンスがあると思います。重賞騎乗機会4連勝の田辺君とロシュフォールにも期待したいです。夏競馬も残り少なくなってきただけに、是非早めに競馬場へ!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。