元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
無観客
2020/3/4(水)
皆様、こんにちは!まずは何といっても話題は広がるばかりの新型コロナウィルスですね。被害者の数はどんどん増え、とうとう安倍首相から小中高での休校要請が出ました。しかし、まだ要請レベルのアヤフヤな内容に国民はどうしたらいいんだと不安にかられています。また、子供達が休校になれば、親たちも大変です。働きにいく親がコロナウィルスに感染するリスクは、何も変わっていないからです。各々の会社も在宅勤務をし始めたところがチラホラと聞くようになりましたが、それでも在宅で働けない人達にとっては、リスクと隣合わせになります。普段から高い税金を支払っている国民に対し、国として、こんな時だからこそ、国の宝の人を守る動きを資金やモノで見せてほしいと思います。
影響は競馬界にもありました。新型コロナ対策で競馬が無観客での実施となりました。毎日真っ暗な早い時間から働いているホースマン達が目標としていたレースが開催されたことは嬉しく思いましたが……。お客様あっての競馬というのは重々承知した上で、声援のない中でしたが、その日を目指して調教をつけてきた人たちにとってはありがたい開催となりました。
そんな中、四位洋文騎手が引退しました。ダービー2勝を含む素晴らしい活躍をしての引退は本当に寂しいものがあります。なんといっても、あの騎乗スタイルは独特でもあり、とてもキレイだったので、あれを見られなくなるのかと思うと本当に残念です。しかし、逆に四位君がこれから新しい騎手を育ててくれると思っています。引退式には多くの騎手が参加し、彼の騎手人生が終了しました。最後に勝利と騎乗停止というコンボでの引退は意外でしたけどね。
無観客の中、日曜日には阪神で阪急杯、中山では中山記念が行われました。特に中山記念は多くのG1馬が出走する豪華なレースとなりました。その中でも1番人気に選ばれたのが、G1勝ちこそないものの、その実力はG1級ダノンキングリーでした。戸崎君のケガから典ちゃんに乗り替わって2戦目のレースでしたが、抜群のポジションを取り、安心して見届けられた勝利となりました。
引退を発表していたマルターズアポジーがいつも通りのレースをする中、2番手にはソウルスターリング、その後ろにダノンキングリー、ラッキーライラックがつける形となりました。迎えた4コーナーではペルシアンナイトが早めの仕掛けを見せ、ラッキーライラックもつれて上がるしかない状況になりました。そんな中、一頭ダノンキングリーが抜け出すと着差以上に楽な勝利をあげました。2着にはラッキーライラックが入り、ソウルスターリング、インディチャンプと続きました。どの馬も、トライアル的な捉え方でのレースだったとは思います。しかし、楽に勝ち切ったあたり、本物だなと感じましたね。しかし、本格化まではもう少しかかりそうな雰囲気もありましたけどね。
期待していたペルシアンナイトは5着に敗れてしまいました。マイルから距離変更でと思ったのですが、脚質と距離と道中の走り方がマッチしなくなってしまったように感じました。以前よりも直線で頭を高くしている辺りからも一生懸命に走るのが嫌になってしまっているのかなと感じましたね。ただ、個人的にはすごく好きな馬だけにモズアスコットのように一発ダートでという希望もファンとして持ちたいと思います。
無観客競馬は今週も続くのでしょう。そんな中、土曜日には阪神でチューリップ賞、中山ではオーシャンS、日曜日には弥生賞改め弥生賞ディープインパクト記念が行われます。その中でも、本当に楽しみにしているのがチューリップ賞のレシステンシアですね。圧巻の走りで制した阪神JFから、本番に向けてどういう走りをするのか本当に楽しみです。しかし、阪神JFの1~4着までの全ての馬が出てきますからね。お客様の有難味を確認できた無観客レースで、今週はどんなレースが待っているのか。関係者の皆様がコロナにかからないことを祈りつつ、楽しみにしています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。