元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
意味のある敗戦も本番は難しいレースに
2020/3/11(水)
皆様、こんにちは!少し暖かさが顔を出し始めた3月。新型コロナウイルスの影響か、色々な所で株価が暴落し、世界を脅かしています。これほどまでに、世界を巻き込んだウイルスは覚えがなく、ビジネス面としても人として体調面としても心配しかありません。
競馬以外にもイベントやコンサートは軒並みキャンセルとなり、日本経済も瀬戸際に立たされていますからね。競馬も今ではネット購入ができる時代になりましたが、それでも売上減少が実際のデータとして発表されていました。どこまで広がっていくのか、毎日が不安で仕方ありません。どうか新型コロナ対策の薬が発明され、少しでも皆様の不安が無くなる日が早く来ることを願っています。
その新型コロナウイルスの影響で、無観客レース2週目となった先週は土曜日にチューリップ賞、中山では土日にオーシャンSと名称変更となった弥生賞ディープインパクト記念が行われました。チューリップ賞では2歳女王レシステンシアが出馬してきましたが、結果としては3着に敗れてしまいました。そんな中、逆襲に成功したのがマルターズディオサと田辺君でしたね。
レースはレシステンシアが単独の逃げを打つ中、じっと見ながら進めたマルターズディオサが直線では内から抜け出したクラヴァシュドールを捕え見事な勝利を上げました。成長著しいと感じていた一頭だっただけに、これは本当に素晴らしい勝ち方をしたなという印象でした。本番でも引き出しが増えただけに、田辺君にとっては嬉しい誤算だったと思います。
2着のクラヴァシュドールに関しては、ここを勝ちにくる仕上げをしていただけに、レシステンシアに負けるならまだしもという感じになったのではないでしょうか。そして、負けはしたもののレシステンシアに関しては意味のある敗戦になったと思います。今回、単独の楽な逃げになってしまったことで、鞍上の北村友君としては、トライしてみるという頭に切り替わったと思います。阪神JFのように気持ちのまま早々と抜け出す競馬ではなく、併せの形から瞬時の脚で引き離せるかと考えたと思います。
その結果、逆に置いて行かれる形となりましたが、馬の資質について計れたと思います。敗戦から学びがあったと思います。しかし、逆に桜花賞は対策を打たれると難しいレースになってしまうということでもありますね。しかも、逃げというのは他の馬の出方が大事になる戦法でもあるだけに、運と勇気と技術が必要なレースになると思います。本番には、満開の桜と満員のお客様がいることを願っています。
さて、今週はお客様が入ることはできるのか。政府としては19日まで外出は控えてほしいと延長されただけに、少しわからないところですが、それでも競馬は続きます。今週は重賞が盛りだくさん。騎手も散らばるため、初重賞制覇も期待したいところではありますが、果たしてどうなるのか。
土曜日は阪神スプリングジャンプに注目したいですね。ヨーロッパと比べると障害レースの人気がまだまだ日本では低いですが、その現象を変えられる存在オジュウチョウサンが出馬してきます。今年は障害に専念するみたいですし、再度脅威の強さを見せてほしいと思っています。そこに待ったをかけたい故高市調教師が残したシングンマイケルとの戦いは本当に楽しみです。ここにトラストがどういう戦いができるかなど、障害競走が熱いです!
日曜日には阪神ではフィリーズレビュー、中京では金鯱賞が行われます。なんと言っても今年は絶対王者に、無観客をプラスになるのではと思っているサートゥルナーリアが出走してきます。次点ではロードマイウェイが選ばれると思いますが、地力のレベルが違うと思っています。もちろん、馬場もあると思いますが、それでも負けてはいけないレースだと思っています。ここを制し、世界へと羽ばたいてほしいと思います。新型コロナウイルスで気持ちが下がる世界を、元気にする勝利を期待しています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。