元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
福永の夏"20
2020/9/9(水)
皆様、こんにちは!この間、私の大好きな番組有吉の夏休みが放送されました。毎年ハワイで遊ぶ姿がまるで自分も行ったような気になるため楽しく見ていたのですが、今年はコロナの影響で日本での撮影となったみたいでした。少し残念に思いながら、この番組の人気からも出演者やスタッフのみんながどうにか放送させようと切り替えてくれたのだなと思うと、日本版でもすごく楽しく見られました。
今年はコロナの影響で当たり前だった夏の風物詩が減り、番組も24時間TVや、この有吉の夏休みも内容が変更になりました。当たり前が無くなることが、どれほどのことなのか、無くなって初めて気付けること、別になくても大丈夫だったということを見直す期間としてはよかったと思います。2020年は皆様にとってどんな夏だったでしょうか?
さて、競馬界で2020年の夏を名付けるならば、まさに福永の夏と言えるのではないでしょうか。開催スケジュールが例年と違う中、新潟リーディングに輝いたのは福永君でした。今年の夏は勝ち星だけでなく、しっかりと重賞でも結果を出し、遅れて騎乗停止週がきますが、サマージョッキーシリーズやサマー2000など、サマータイトル総なめにする勢い。
この勢いは、ひとつにコントレイルとの出会いがあったのかなと思いますね。年齢としては、もう下降線でもおかしくありませんが、名馬と出会うことで、更に騎手としてひとつ上のレベルになったのではないでしょうか。そんな福永君が2020夏競馬最後の新潟で行われた新潟記念でブラヴァスに騎乗し、見事な勝利をあげました。まだまだ成長過程と思ってはいた馬を勝たせきれたのは、福永君の騎乗ありきだったなと思います。
勝利コメントで、まだまだこれからの馬ということを本人も言っていたように、走り方やバランスを見ていても、ここからの馬だと私も思いますからね。ブラヴァスの母ヴィルシーナはこれで母子重賞制覇となり、馬主の佐々木さんにとっては感慨深い勝利になったと思います。まさに馬主人生の中でも、最高の瞬間だったでしょうね。
2着にはジナンボーが入りました。スタートで後手を踏んでしまうも、当日のレースで内を開けて走るのが当たり前になっていたことから、少しの荒れた馬場では気にしない馬の特徴、恵まれたスローペースからも上がっていきました。そして、4角から外に出す騎乗でした。鞍上のミルコは同じ戦法をその前から行っていて、結果として結び付いたのが当レースだけだったことからも、馬の走りにペースなど全てにおいて恵まれたなという印象。スタートを出ていれば、もっと楽になったのではないかなと着差を見ると悔やまれるレースでした。
53キロで挑んだワーケアに関しては、これで見切りをつけても良いかなと思えるレースになりましたね。この結果からも今年の3歳馬のレベルが低下していることが理解できました。3歳のみならず今年の2歳のレベルも個人的には??がたくさんついている現状だけに、日本競馬界が成長過程の中でレベル低下というよどみのようなものを感じています。
今週からは開催が中京・中山に切り替わります。似ているだけに、勝ち馬投票券を購入する際には、間違わないようにくれぐれもご注意ください!そんな中、早速中山では紫苑Sと京成杯オータムH、中京ではセントウルSが行われます。この中でも私が一番楽しみにしているレースは京成杯オータムHになります。ここに出てくるメンバーは秋に向けて非常に楽しみな馬ばかりですし、予想が難しいレースになると思っています。
まず人気になるのは52キロのスマイルカナでしょうね。桜花賞3着はフロックでなかったことを見せつけたいという陣営の力の入れようを感じます。しかし、ここは同型で昨年の覇者トロワゼトワルもいますので、展開がカギになると思います。開幕週ということもあり、前有利の展開も想像されるだけに、多くの馬が前をけん制し速くなればラセットの切れ味が改めて脅威になります。
そして、ここでも力を見せつけ、秋のマイル戦線にきてほしいルフトシュトロームには一番期待しています。ルメール騎手に乗り替わってアンドラステがどんな走りを見せてくれるかにも注目しています。福永の夏の次は何の秋になるのか?その始まりを見逃さないように、皆様お楽しみください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。