元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
新女王認定
2020/10/6(火)
皆様、こんにちは!先週はフランスで日本競馬の夢になっている凱旋門賞が行われましたね。眠い目をこすりながらもTVの前で、準備万端で観ることができました。日本からはディアドラが挑み、日本人騎手としては豊ちゃんが渡仏するも、騎乗予定のジャパンを管理するエイダン・オブライエン厩舎の使用する飼葉から禁止薬物が発覚し、まさかの直前で出走停止となってしまいました。
私が現役時代にも騎乗予定の馬が、馬場が合わないとの理由により直前で出馬キャンセルということがありましたが、今回は禁止薬物ですからね。残念でならないでしょうが、凱旋門賞の空気を現場で感じることが豊ちゃんにとってのモチベーションの足しになったことと願います。
結果は日本でもおなじみのクリスチャン・デムーロが勝利し、天国にいる父に届ける記念の勝利となりました。前走を見る限りソットサスは終わったのかな?と思っていましたが「国を、環境を変えたことで馬がもう一度走る気になっていた」というコメントからもルジェ調教師の一手が、今回の勝利を導いたと思います。本当に素晴らしい勝利でした。
ジャパンは残念なことになってしまいましたが、ジャパンで行われたスプリンターズSの話をしましょう。勝利したのは凱旋門賞が行われたフランスが生んだリーディング騎手、ルメール騎乗のグランアレグリアでした。しっかりと馬のバランスを整えて乗るルメールだからこそ、中山の1200mは差し切れない展開になるかもしれないと懸念していましたが、心配など何もいらないというような走りを見せつけられました。
スタートでは一息で少し遅れたグランアレグリア。それをよそ目に絶好枠からハナを切ったモズスーパーフレアでしたが、ゲート入りを拒んでいたビアンフェが競りかける形になり、この時点でモズは無くなりました。逃げ馬は自分でレースを作ることもできますが、絡まれると一番脆い諸刃の剣の良くない方が出たレースとなりました。ペースは32秒台となり、これは差し馬の展開だ!となりました。
すると4角で勝負がかったミスターメロディと福永君が内から抜け出してくると直線では一気に馬場の良い外へ。最高の騎乗だ!と思った矢先にダノンスマッシュが交わし切り、これは!と思った時、大外にいたグランアレグリアがバランスを整え、ムチが入るとまるでゲームかのような末脚で一気に勝利を挙げました。3歳時は奥の強さまでは見せきれていませんでしたが、休んで挑んだ阪神C。あのレースを見た時にアーモンドアイに匹敵する強さになったと思っていました。
1400~1600mがベストかなと思っていましたが、今回のスプリント戦を勝ったことで、この馬の素質が更に上のものになったと感じましたね。簡単に勝ったように見えますがルメールでなければここまでの走りはさせられなかったですし、ここに合わせて仕上げてきた名門・藤沢和厩舎の力を見せつけられた勝利だったと思います。
さて、季節外れの台風が関西に迫ってきていますが、安全な開催を願って観ていきましょう。今週からは東京・京都・新潟の3場開催になりますので、心の中で唱えてお間違えのないように!土曜日には東京競馬場でサウジアラビアRC、日曜日には毎日王冠、京都では京都大賞典が行われます。毎日王冠には世代レベルが疑われている中、コントレイルと並ぶ実力のサリオスが出馬してきます。ここでの結果が3歳世代の判定に繋がるでしょうし、本番前の叩きとはいえ、良い走りを期待してしまいます。
もう一頭の3歳馬サトノインプレッサにも期待しています。こちらは夏を超えて更に良くなっている気がしますので、逆転も見てみたいと思っています。その他に気になるのがサンレイポケットになります。地味ではありますが着実に力をつけてきていますし、疲れが抜けていれば面白い一頭かと思います。
京都大賞典は台風の影響がどこまで出るかでしょうがパフォーマプロミスに期待しています。馬場もコースも向いていると思いますからね。あとは開幕週の馬場がどうなるかがポイントになります。皆様、秋競馬もジャパンでシャンパン乾杯できるように当てましょう!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。