元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
これぞ競馬道!最高のハーモニー
2021/2/22(月)
皆様、こんにちは!花粉の季節になりましたね。私は花粉症とは無縁のため、まったくといっていいほど何もないのですが、周りではみんな大変そうです。昔は花粉症という言葉すら知らず、暖かくなってきた頃にクシャミや鼻水が出る人を見て、季節の変わり目には風邪をひきやすいからねと言っていたことを思い出します。コロナもですが発見されていくものと明確になってくるもの、まだまだ世の中には知らないだけで存在しているものがあるんだろうなと興味深く考えてしまいました。良いことが新たに発見されることに期待していきたいですね。
それでは競馬の話に参りましょう。日曜日には2021年最初のG1レース、フェブラリーSが行われました。勝利したのは新たな王者の発見!カフェファラオとルメールのコンビでした。カフェファラオと言えば、デビュー戦では10馬身差の圧勝をし、これはとてつもない馬が出てきたと思わされました。2戦目では出遅れ、外々をマクり勝利するもチグハグな競馬で、このレベルの馬の教育という面で残念なレースになったのを覚えています。
3戦目には重賞を制覇し、初の地方ナイターでは馬場や色々なことがかみ合わずに敗戦。その後のシリウスSではまたまた圧巻の走りで勝利も、性格面での難しさが垣間見えた一戦になりました。続くチャンピオンズCでも難しいところが出て敗戦。そして今回、騎手と厩舎側が沢山話をし、チークピーシズをつけて挑んできました。しかし、今回のレースで素晴らしかったのはそこではなく、陣営が難しい性格の馬のマイナスポイントを丁寧に全てカバーするように教えてきたことにあります。
特に馬込みでの走り方やコントロールをつけやすく変えてきたところは、さすが名門堀厩舎とうなる内容でした。その期待を結果で応えたのがルメールの技術。レースはスタート後、チークをつけたことからも前進気勢が出ていました。戦前から馬込みは厳しいのではと思っていたため、ハナを奪うのか?と思った矢先に、迷いなくルメールは下げました。陣営から馬込みでも大丈夫になっているからと説明があったのかも知れません。
その読み通り、少し早くなったペース。ハナには角居厩舎最後のG1挑戦ワイドファラオが行き、内からはエアアルマス、ペースが速くその後ろにいたヘリオスが脱落する中、内からポジションを取り続け、直線では前がタレるのを見越し、早めに外へと誘導。難なくコントロールしたルメールの技術と調教してきた堀厩舎の、まるで素晴らしいハーモニーを見るかのような勝利となりました。レース後の堀調教師の「チークはあくまで補正道具であり、外しても同じように走れるように育成していきたい」という言葉は、勝って尚おごることなく競馬道に真摯に向き合っていると感じさせられ素晴らしかったです。
2着にはエアスピネルが飛び込んできました。こちらは池添君の騎乗停止により鮫島駿君が騎乗していましたが、非常に素晴らしかったと思います。特に4コーナーからの立ち回りです。王者を倒すためにはロスが出ては勝ち切れません。そう考え内で我慢すると、追い出したいタイミングからワンテンポ置くことを判断しました。エアスピネルといえば、昔から一瞬のキレが待ち味とはいえ脚が持続できないため、この判断は素晴らしかったです。
そこからスペースを見つけ出すと一気にスパート。一瞬、差し切れるか!?と思いましたが、そこは大将ルメールに一歩届かずでした。しかし、G1戦で若手がこの様な騎乗を見せてくれると嬉しくなります。ベテランの技を見せてくれたワンダーリーデルの典ちゃんといい、非常に見応えのあるレースでした。
東京開催が終わり、今週から中山開催に戻ります。中山・阪神・小倉ですからね。お間違えなく!その中山では天才豊ちゃんの同期でもある蛯名君が引退を迎えます。関東の騎手たちを支え、代表としてJRAにもしっかりと意見を貫いてきた彼。時には怖い先輩と思われることもあったでしょう。それも後輩たちへ思いを繋ぎ、安全施行が行えるようにという考えがあったからだと思います。レース後には引退式がこの状況のためYouTube配信で行われます。重賞最後の騎乗は藤沢和厩舎のゴーフォザサミットとのコンビになる様です。数々の結果を出してきた蛯名君に有終の美を飾ってほしいなと思っています。
しかし、そうはさせまいと後輩の意地と共に出てくるのは堀厩舎と松山君のコンビ、ヒシイグアスではないでしょうか。前走でもしっかりと重賞を勝ち切り、勢いに乗る当馬の人気は必至です。バビットも侮れません。仕切り直しになる一戦で、期待したいところではあります。ビターエンダーにも注目したいですし、ウインイクシードはコース巧者。混戦模様の中山記念を制するのはどの馬か!?蛯名君の引退式同様、お見逃しなく!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。