元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
池添兄弟
2021/3/23(火)
皆様、こんにちは!何と言っても天才武豊ちゃんの骨折に驚いた週の始まりとなりましたね。ゲートで、馬とゲートに挟まれるという経験は騎手ならば多くが経験していることだと思います。ひとつの原因として、海外よりもゲートの作りが広いということがあります。その余ったスペースの中で馬が少し動けるようになるため、ゲートで我慢ができない馬などは動いてしまいますからね。
ただ、日本にはショーグンやコンテナのような超大型馬もいるため、どこに基準を合わせるのかは明確にはできないと思いますが、JRAも大型馬がいる際のゲートといない時の海外仕様のゲートと2種類を用意してもいいかもしれませんね。もちろん、その狭いゲートでも我慢できない馬は動くでしょうけど、少しでも動かさない方法を模索するのも手ではないでしょうか。
その豊ちゃんが騎乗予定だったユーキャンスマイルが藤岡佑君に乗り替わった阪神大賞典では、和田君とディープボンドが圧倒的な走りで勝利しましたね。降り続いた雨でただでさえタフなレースにプラスして、よりタフなレースになりましたが、長くいい脚を使い見事な勝利を挙げました。皐月賞以外で手綱を握っていた和田君にとっては自分が知っているよりも更に上の走りをしてくれたという印象を持ったのではないでしょうか。ステイヤーとして開花の瞬間にも思えました。今回は早めからの展開も合いましたし、長く追い続けられる和田君だからこその勝利だったと思います。
2着ユーキャンスマイルは脚をタメる形を選んでのレースでしたが、展開が合わなかったと思います。しかし、武器を増やす上では初騎乗が突然舞い降りた藤岡佑君には、違うトライをしてほしかった気持ちも少しありました。ただ、本番は次でしょうから、スタイルを崩さずに挑みたいという気持ちも分かりますから難しいところですね。
1番人気に推奨されたアリストテレスは道中で行きたがる素振りを出し、失速してしまいましたね。ルメールとしても前に勝ち馬を置き、必死になだめようとしましたが今回は上手くいきませんでしたね。馬場プラスでタフなレースだっただけに、今回の結果からはこなしているけれど100%のステイヤーではないというのが見えた結果となりました。
中山で行われたスプリングSでは池添兄弟のタッグが見事な勝利を挙げました。私は父の兼雄君と兄弟弟子で、彼らが子供の頃から見ていましたからこの勝利は感動するものがありましたね。しかも、そのレース内容は素晴らしかったの一言。特殊な馬場になった中山でしたがヴィクティファルスと謙一は非常に冷静なレースを行いましたね。4コーナーでは外まで回されましたが、かえってあの馬場と末脚を活かすにはいい判断でした。少し早めに動いたアサマノイタズラを計ったように差し切りました。母ヴィルジニアはシルバーステートのお姉ちゃんということもあり、これからが楽しみになりました。
今週は中京で電撃の6ハロン高松宮記念が行われます。豊ちゃんが騎乗予定であったレシステンシアは浜中君に乗り替わりが発表され、ここで結果を出してもらいたいなと思っています。しかし、そうはさせまいと混戦模様が予想されます。その中でも1番人気にはダノンスマッシュが選ばれると思います。前走はスプリントが強い香港馬(香港スプリント)を倒しており、今回勝利を挙げれば圧倒的な存在になるだけに、非常に楽しみです。
そこに続くのが前述レシステンシアではないでしょうか。その他でもモズスーパーフレアが松若君に戻るのは楽しみですし、インディチャンプにはスプリント界でも活躍してほしいです。今週は怪我人が出ないように願いましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。