元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
本当のファインプレー
2021/4/5(月)
皆様、こんにちは!栗東の桜も満開を迎え「今年もこの桜を見られた」とうれしくなってしまいました。ほんの1週間ほどの綺麗な花びらを咲かせるために、こつこつと毎日を生きてくれる桜ですが、その1週間で1年が全て報われるような綺麗さを感じさせてくれるのは嬉しいですね。最近では年々、老いていく体にムチを打つように、散歩や庭掃除などをやるようにしています。散歩をしていると松田博先生に会ったり、競馬界を支えてきた方達も同じように散歩していて「まだまだいけますね!」なんて話をしています(笑)。
それでは競馬の話をしましょう。桜のようにひとつひとつ積み重ねてきた無敗のレイパパレ。今回は雨が降り出し非常に悪いコンディションの中、逃げて無敗3冠馬コントレイルや3階級制覇を狙ったグランアレグリアを突き放し、大阪杯で見事G1勝利を挙げました。
秋華賞では川田君に乗る馬がいたため、ルメールとのコンビ予定となっていました。しかし、抽選に外れたため、ハンデ52キロ(ルメールは53キロが最低斤量)で特別戦(大原S)に出走となりました。当時、デアリングタクトを負かすのではないか?という走りだったのを覚えています。もし、ルメールで秋華賞に出ていれば、このコンビが継続されていたか疑問になりますね。そう思うと、川田君にとっては大きなターニングポイントだったと思います。
スタートで少し後手を踏みましたが、馬場の状態を考えると川田君はハナを奪いにいきました。色々なところでこの作戦に賞賛が上がっていますが、私の個人的に思うファインプレーはレイパパレに新馬から乗り、気性的に危ういところがある馬に対し、丁寧に教え続けたところにあると思います。逃げたよりも逃げられる馬に仕込んできたというところこそが一番のポイントだと感じました。
追うようにハッピーグリン、内にはサリオスと続く形になり、3-~4コーナーではポジションが思っているより1列後ろになってしまったコントレイルが上っていきました。それを内か併せるようにグランアレグリアとまさに豪華なメンバーを引き連れていきましたが、4角で外の様子を見て、これなら出せると一気に馬場の良い所まで持っていきました。これは前走でも経験していた走り方でまさに全てが整った勝利となりました。馬場を考えるとペースは速かったですが、それでも押し切れたのは適性が素晴らしかったこともあると思います。
続いて雨のプロ、モズベッロが入りました。こちらも雨だけではない謙一君の勝負がかった乗り方が生んだ2着だったと思います。3着にコントレイルでしたが、こちらは馬場に苦しめられましたね。4着グランアレグリアも初めての2000mでしたが、流石は名門藤沢和厩舎の仕上げできっちり中距離仕様になっていましたね。ベストではないにしろ、G1でもこの距離を対応できることが分かったのはプラスになったと思います。
5着のサリオスも馬場に泣かされましたね。4角で内を選んだことは個人的には間違いでなかったと思います。川田君が外に出す準備をしているのを悟った松山君。この時の手応えの違いを一番近くで感じたと思います。勝つために内を選択し、少しでも有利に立つ必要がありました。傍から見ていると馬場が悪いのに内を選んだと思われますが、あの手応えの違いから勝つためには苦渋の選択をしなくてはならなかったと私は考えます。最高のメンバーでそれぞれが見所のあるレースを見せてくれました。
大阪杯が終われば、次は牝馬クラシック桜花賞が行われます。例年と馬場が違うために非常に難しいレースになりそうですが、まずここでの注目はソダシに集まると思います。白毛馬での初のG1制覇から彼女がどのように成長したか非常に楽しみなのと、この悪くなった馬場もこなせるパワーを感じますからね。
そこに食いつきたいサトノレイナスもいます。しかし、こちらは良馬場が欲しいだろうなと見ている1頭です。その他でもメイケイエールと典ちゃんにアッと驚くレースをしてほしいほしいなと思っていますし、穴としてはファインルージュに期待しています。桜の女王になるのはどの馬か!?桜花賞は今週日曜日、阪神競馬場です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。