元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
生き残る岡田繁幸さんの思い
2021/5/26(水)
皆様、こんにちは!連日のコロナ報道も慣れが出て、何も驚かなくなった今日この頃。神戸市ではワクチンを大量に使用不可にしてしまう事例が出ており、怒りを通りこし呆れしかないニュースも報道されています。しかし、これも神戸市だけではなく、市に配布する時の徹底した管理方法を提案できていない国にも問題があると思います。この1年、国を挙げてコロナ対策を実行してきた割にはお粗末すぎる対応で、緊急事態宣言もどこまで効力があるのか、理解を求めるための保証なども追いついていません。
マイナンバーカードを導入した際に、このような時でも売上や個人の収入を管理し、税からも保証金などを計算しやすくしたはずが、任意のため思った進捗もなく、管理もできず、そして保証も確定できずとなっています。やることが中途半端なことがここで一気に膿として出てきている気がします。日本を守るための信念を貫き通してほしいと思います。
それでは競馬の話に参りましょう。競馬界では信念を貫き通した1人の男が、オークスで夢を叶えた日になりました。馬名はドイツ語で生き残るという意味のユーバーレーベンがラフィアン創始者の岡田繁幸さんのクラシック初制覇を達成させました。岡田さんと言えば、馬を見る目が素晴らしいと評価され、吉田兄弟と共に競馬界を支えてきた重鎮でもありました。残念ながら亡くなってしまい、思いは息子さんへと引き継がれました。今回はそんな岡田さんの思いが味方したようなレースでした。
スタート後、東京2400mの1コーナーのごちゃつきを避けるため、ポジションを下げました。この時、ひとつ後ろになってしまったなという印象を受けました。サトノレイナスのダービー挑戦で圧倒的1番人気に支持されたソダシは前に馬を置くことがなかなかできず、馬と少し喧嘩するような入り方となってしまいました。この時、外から来たステラリアと川田君にプレッシャーを受けたことも大きかったと思います。しかし、圧倒的1番人気だからこそで、これすらも跳ね返す必要がソダシにはあったと思います。
向正面でもピッチが上がらず、ソダシ包囲網となってしまったレースで、4コーナーでもソダシのジリジリとしたワンペースの抜け出しを許さないと皆が動かないレースとなりました。このソダシを気にしたペースこそが勝ち馬にとっては最高の展開になったと思います。スタミナ勝負の形となったレースで、1頭外々へと導かれると、圧倒的な手応えで一気に他馬を引き離し、岡田さんの悲願の初クラシックをプレゼントする勝利となりました。
鞍上のミルコにとっては勝利したラヴズオンリーユーのオークスが重なったと思います。あの勝利の経験があったから、4コーナーの入りや直線でも落ち着いたレースでした。しかし、今回のメンバーでこの距離では力が違いすぎましたね。スタミナ勝負になったことも父ゴールドシップから引き継がれた最高の能力ですからね。
そして、今回最高に上手く乗ったのはアカイトリノムスメのルメールだったと思います。しっかりと東京2400mの枠の利を活かすレースを実行し、内から迫るも届かずのレースでしたが、スタートから道中、最後の直線まで最高の騎乗だったと思います。それでも勝てなかったのは、陣営の思いがこのレース展開を作り、ユーバーレーベンに味方したといったところだと思います。まさに、岡田さんの実績や馬への熱い信頼、そして夢が強く生き残るレースとなりました。
今週は競馬の祭典、ホースマンの夢、日本ダービーが開催されます。一生に一度の夢を叶えるのはどの陣営になるのか。まずは皐月賞馬、今回も大本命のエフフォーリアと横山武君のコンビが圧倒的人気に推されると思います。彼の性格的にいつもと変わらないレースをしてくれると思いますが、ソダシのようにシフトを引かれた時にどう対応するのかは非常に楽しみです。1番人気を一番大事なレースで勝たせるというのは本当に難しいことでもありますから。
続くのは牝馬での挑戦となるサトノレイナス。こちらはルメールも自信がありそうで、本当に怖い存在になりそうです。その他では別路線組のシャフリヤールにも注目しています。ダービー2勝の福永君と勝負師・藤原先生のコンビは鬼気迫るものがありますから。持ち直したならばヴィクティファルスも見直したい一頭。そこに伏兵たちがどう絡むかのレースになりそうですが、今週も枠順が非常に重要になります。誰の夢が実現することになるのか、ドリームマッチ日本ダービーはいよいよ日曜日です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。