元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
罵声より馬生
2021/7/13(火)
皆様、こんにちは!今週はセレクトセールが大盛り上がりを見せました。コロナ対策のため多くの人達が来場できない中でも、今年で最後になるディープインパクト産駒や新星シルバーステート産駒などをめぐり熱い戦いが行われていました。その中でも注目はウマ娘が大ヒットしたサイバーエージェントの藤田晋社長の爆買いでしたね。初日から15億を超す購入を見せ、馬主界の流れの変化を見せつけた結果となりました。どこの厩舎へと入っていくのか、主戦騎手を誰に構えるのかというのも興味深いです。今回で言えば長谷川さんと伝説オーナー金子さん、ダノックスさんや近藤さんと数年後のダービーが一体どうなるのか本当に楽しみです。
それでは先週のレースを振り返りましょう。夏の名物ハンデレース七夕賞が福島競馬場で行われました。レースを制したのは名前にふたつの星座を持つトーラスジェミニと戸崎君のコンビでした。レースはスタート後、内枠のロザムールが押し出されるような形でハナを切りました。鞍上としてはここでハナに行きたくない構えをしていましたが、結果的に行かせてもらえたことで、この馬の走りができたラッキーだったと思います。
それを見るようにトーラスジェミニが細かくプレッシャーをかけ続けると4コーナー手前から一気に加速を入れました。戸崎君の好騎乗が光った瞬間でした。前走の安田記念でもいいレースをしていましたし、手が本当に合うのだと思います。馬場の良い外から勝利のミルキーウェイへ導くと最後は脚色が鈍るも凌ぎ切り、見事な勝利を挙げました。
2着にはマイペースのレースができたロザムールが入り、唯一の牝馬がその名前の如く(愛のバラ)まさに年に1度の七夕を彩る結果となりました。道悪や内枠から逃がしてもらえたことなど、全てが良い方に向いたレースだったと思います。3着には展開が向かなかったショウナンバルディが入りました。レースとしては完璧も、行った行ったの競馬が合わなかったですね。ただ、岩田康君はただ勝つためにというよりも馬のリズムを大事にして乗るタイプの騎手で、その結果として馬生が良い方向にいくだけに、次に期待したい走りでした。
そして、土曜の小倉新馬ではベルカントやイベリスの弟、サイードが順調に勝ち上がりました。姉のような快速馬とは少しタイプが違いそうでしたが、福永君は本当に教えながら勝つのが上手だなと思わされるレースでした。よく新馬戦で人気馬が逃げ切られて負けるレースがありますが、福永君は勝ち切りますからね。またスピードの違いで逃げてしまうケースもありますが、しっかりと抑えながら勝利しています。
新馬でハナに行きながら勝つ馬の多くは次が見込めないことが多いので、その辺りもひとつの見方として楽しいかもしれません。競走馬として産まれたからには勝ち上がらないと生き残っていけません。しかし、レースを覚えないとその後が苦しくなります。馬生にとって能力を見極め、どんな結果が最高なのかは難しい問題でもあります。ただ、ホースマンは信じた馬の道を少しでも良くできるように考え、レース毎に馬毎に結果を求めています。その辺りでも福永君は最高の新馬戦を実行していると思います。
今週は土曜日の函館2歳Sで若駒達が早速重賞に挑戦します。日曜日には小倉で中京記念、函館で函館記念が行われます。その中でも注目は函館記念になるでしょうね。初めての芝で出走を狙っているカフェファラオが非常に楽しみです。ハンデが58.5キロと出たため陣営がどう判断するかは分かりませんが、芝で見てみたいと思っていたので、このハンデでも出走していただきたいというのが個人的な感想です。
その他ではマイネルウィルトスと函館人の丹内君に注目したいです。勝利すればまたウイニングランを期待してしまいますね。安定しているバイオスパークやそろそろか?というトーセンスーリヤもいます。難しいメンバー構成ですが、今後を占う大きな意味のあるレースになりそうです。是非、皆様も罵声よりも馬生を考えた応援をよろしくお願い致します!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。