元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ジャパンオールスタージョッキーズ
2021/9/1(水)
皆様、こんにちは!最近、我が家の周りでは稲刈りが始まりました。ということは新米の登場になるなと今からウキウキしています。新米は普通のお米に比べて柔らかさがあり甘味や水分量も多いことから本当に美味しいですよね。日本では新人のことを新米と呼ぶこともあるように、ピチピチ甘味のある人達の将来を連想して、そう呼ぶのかもしれませんね。競馬サークルでは新人をあんちゃんと呼ぶ風習があり、呼び名があんちゃんから名前に変わった時が、騎手にとって嬉しい瞬間でもあるんですよ。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。先週は新潟で新潟2歳S、札幌ではキーンランドCが行われました。いつもならばワールドオールスタージョッキーシリーズが開催される週ですが、コロナの影響で今年も開催されませんでした。しかし、それに見劣りしないほど豪華な日本代表が集まったジャパンオールスタージョッキーズのような新潟2歳Sでは、小倉からこの馬のために来たといっても過言ではなかった川田君騎乗のセリフォスが荒れた馬場を気にせずに突き抜け勝利しました。
その瞬間、頭によぎったのは同じ父を持つアドマイヤマーズのようなレースの上手さと能力値でした。川田君のコメントから少し左に行きたがる素振りや馬場の適性など、本当に返し馬を大事にしているのが聞こえてきました。その中で枠からも外ではなく内を選択したことは、騎手のレース前の考え方にこそ勝因があったと思います。そこに技術と馬の能力が加わりレースの選択肢が増え、イメージを実現させた非常に大きな勝利でした。マイル路線で極めた道を進んでくれたらなと思いつつ、中山2000mまでなら保つのではないか?とクラシック参戦にも期待し、稲刈りが終わり新米ホースもまだまだ出てくるだけに、陣営にとっては嬉しい悩みが増えたことでしょう。
2着には私の期待馬アライバルが入りました。こちらも北海道からルメールが出てきたことからも気にしていた一頭。エンジンのかかりに時間を要してしまい今回は敗れてしまいましたが、逆に距離適性的に1800m~が合うのかなと思いました。それでも、今回の敗戦から鞍上や陣営もたくさんの収穫を得ることができたはず。日本のトップ2騎手による戦いは本当に見応えのあるレースでした。皆様も是非、パドックは大事ですが、返し馬で騎手が何を確認しているのかなどを見ていただけると競馬の楽しみが増えると思います。個人的には人気馬の返し馬中継も良いですが、全頭を画面の端にでも流していてくれたら、コロナ禍の中でもお客様に優しいのになぁと思ってしまっています。
とうとう夏競馬も最終週となります。新潟、小倉、札幌が最後になりますので、悔いの残らないように楽しんでくださいね。札幌では札幌2歳S、新潟では新潟記念、小倉では小倉2歳Sと全場で重賞が開催されます。最終週だけあって馬場の痛みも激しい所があるだけに枠の並びも非常に重要になりますのでご注意ください!この中でも荒れそうだと感じているのは新潟記念になります。
トーセンスーリヤが人気を集めるでしょうが、私の注目はラインベックになります。ダートを試したり色々な試行錯誤を行う中で、このレースが得意な友道厩舎がどう仕上げてくるのか非常に楽しみでもあります。金子さんの勝負服がいつも上位に来ていますからね。その他では、馬場適性や成長を期待したいことからもラーゴムが見直しになる一戦だと思っています。クラヴェルやザダルなどもおり混戦が予想されますが、夏の終わりを最高の形で締めくくりましょう。なつのおーわーり~と言えば森山直太朗さん、彼と言えばさくら、さくらと言えばピンク帽にも是非注目を!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。