元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ドラゴン馬券!?
2021/9/16(木)
皆様、こんにちは!すっかりクーラーのスイッチを入れる朝のルーティーンが無くなり、秋の訪れを毎日のように感じています。そんな最近、よく師匠でもある大久保元調教師に会う機会があり、お互い歳を取りましたねと昔話を楽しんだりしています。思えば中学生で北海度から京都にあった厩舎へ弟子入りし、今の生活があることをしみじみと感じるようになりました。その先生の息子さんである大久保龍調教師が管理するディープボンドがフランスでやってくれました。
騎乗したのはクリスチャン・デムーロで、非常に面白いレースをしたなという印象を受けました。日本に来ている時から馬にとってどう走らせたら良いのかをよく考え、固定概念に縛られずに挑戦するタイプで、今回はフランスの馬達のスタートの遅さやディープボンドの長くいい脚を見事に使ったように思えました。馬場も合っていましたし、相手はレベルとしては少し物足りないところはありましたが、それでも本番でサプライズがあってもおかしくない走りでした。日本馬が凱旋門賞を勝つにはハナに近いポジションで勝負することが、勝利への一歩になるかもしれません。
それでは日本の競馬の話をしましょう。2場開催となった先週、中京競馬場ではセントウルSが行われレシステンシアが勝利しました。スタートが非常に速く、ハナで競馬するのかな?と思っていましたが、内からシャンデリアムーンが主張した瞬間にルメールは引くことを選択しました。この選択が最後の最後で残せた勝因だったと思います。そして、ここで引きながらスピードや折り合いを欠くことなく、すんなりと走らせたところが流石ルメールといった騎乗でした。4コーナー手前では一度手応えが怪しいところはありましたが、そこから再度スピードを乗せると、外から迫るピクシーナイトをハナ差で負かしました。
2着のピクシーナイトは1200mに変えたことで大きな収穫があるレースとなりました。今回は開幕週で外枠とコース的に辛い枠にも関わらずあの走りは今から来年が楽しみになったほどでした。騎乗した福永君もここはトライアルで外枠ということも踏まえて教えながら走らせ、感触としては勝利以上に興奮する結果を得たと思います。3着にはクリノガウディーと岩田康君のコンビが入りましたね。課題になっていたササり癖に関しても岩田君が付きっ切りで乗っているおかげかなくなり、素晴らしいレースをしたと思います。色々なことで勘違いされる彼ですが、馬に対して真剣に誰よりも向き合っているからこその結果で、そういったことも分かってもらいたいなと思いました。
本番のスプリンターズSでも、ここの1・2着馬は本命対抗になってくると思います。特にレシステンシアに関しては良いトライアルになったと思います。本番ではビアンフェやモズスーパーフレアがおり速い競馬も想定されますからね。そこに調子を戻してきていればダノンスマッシュと面白い戦いになると思います。馬券を買う側も非常に楽しませてもらった良いトライアルレースでした。
今週は阪神ジャンプS、ローズS、セントライト記念と重賞が目白押しです。その中でも注目はローズSになります。人気を集めそうなのはアールドヴィーヴルですが、個人的には台風で馬場の緩みが気になるところではあります。しかし、成長分でどこまでしっかりしてきたかを見る上では楽しみな1頭です。2番手にはクールキャットが選ばれるでしょうね。東京で勝利した走りが素晴らしかったことからも、ここも期待したいと思います。その他にオヌールなどの良血もいますし、個人的にはタガノの2頭が気になっています。雨が降れば降るほど勝率が上がる気がする和田竜君の騎乗というところも注目する理由です。龍志の次は竜二なんていうドラゴン馬券に注目です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。