元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
中年の星☆
2021/12/20(月)
皆様、こんにちは!師走も終わりに近づき、年末を思わせてくれるM-1グランプリが行われました。毎年のことですが、漫才No.1を決めるこの大会は本当に感動します。我が家では関西バリバリの漫才が人気で、今年こそは見取り図!と思っていたのですが、残念ながら敗者復活できずに終了してしまいました。
優勝したのは長谷川さんが50歳になる錦鯉でした。歳をとっても諦めず、やっと当たったスポットライトを逃さず優勝を勝ち取った姿は、涙が出る思いでした。これだけ自分を犠牲にしてでも続けたいことがあるというのは素晴らしい人生なのではないかと思います。成功が遠く逃げるのもひとつ、続けるのもひとつ。人それぞれの道がありますが、今回は続けた錦鯉の二人の勝利だったと思います。本当に素晴らしいお笑いを見せてもらいました。
競馬界でも52歳中年の星がやってくれました。レジェンド武豊ちゃんがとうとう念願の朝日杯フューチュリティSを制しました。国内G1全制覇までは新設したホープフルSを残すも、見ている誰もが嬉しくなる勝利だったと思います。オーナーの松島さんにとっては初の国内G1制覇となり、それも鞍上が勝っていなかったレースでの達成で、本当に今まで積み上げた武豊愛が実った瞬間のように見えました。また馬名のドウデュースは勝利目前という意味のデュースを達成するDOで、まさに豊ちゃんが国内G1完全制覇目前の勝利をその名の通り挙げました。
レースはスタート一番、最内のカジュフェイスと秋山君が出たなりでハナを取る中、1番人気セリフォスは少し出すような形を取りました。前走の藤岡佑君は気を入れすぎずに乗っていたため、出すとどうなるんだ?と思って見ていましたが、案の定引っかかる形となりました。クリスチャンとしてはこれぐらいのかかりは想定内だったと思いますが、この一瞬が勿体ない結果を導いてしまったかもしれません。騎乗レベルは世界最高峰も、ここは
乗り替わりでの弊害が出たような気がしました。
反対に操縦性の良さが武器のドウデュースは馬なりでポジションを取りました。その後ろにジオグリフとなりました。返し馬から少し重めに写り、馬がレース感覚を忘れていたような素振りをしていました。やはり、レースでも少し追走に苦労したように見えました。そんな中、4コーナーを周り直線に入ると、圧巻の手応えでセリフォスが先頭を捕まえました。それまでのレースでどのコースが伸びるのかを把握していたクリスチャンは迷わず外の進路を選びました。
しかし、それを見逃さないのがレジェンド豊ちゃん。すぐさま併せる形を取ると、最後は見事差し切っての勝利となりました。念願のG1制覇を52歳で達成したレジェンドはまだまだ止まりません。落ちる体力面をカバーするための技術やメンタルが進化しています。だからこそ達成できた勝利だったと思います。ホープフルSの新設により、国内全G1制覇までリーチになっていたのにあと2つとされた記録が、これで再度のリーチ。まさにアン・ドゥ・トロワ(1,2,3)のようにドウデュース=2回目の完全勝利目前となりました。
これで残す2021年競馬は3日間となりました。G1は有馬記念、そしてホープフルSで終了となります。有馬記念はなんといってもエフフォーリア対クロノジェネシスから目が離せません。しかし、クロノジェネシスは海外帰りということが不安材料となります。ましてやマカヒキなどが苦しんだフランスの馬場と大敗によるメンタルも気になります。しかし、馬の力はトップレベルだけに好勝負を期待したく思います。有馬記念といえば、その年を表すような結果になることが多いだけにキセキやペルシアンナイトというおじさん達の逆襲にも期待したいところです。
火曜日のホープフルSではコマンドラインが注目を集めると思います。ここに待ったをかけたいと、福永君の怪我により回ってきた横山武史君とキラーアビリティに注目しています。その他にもジャスティンパレスとのコンビでリベンジに燃えるクリスチャン、岩田望来君と初重賞をG1でサトノヘリオス、穴候補オニャンコポンと楽しみなメンバーが揃っています。2歳G1はまだまだ分からないところがあるだけに、最後まで目をギラつかせてほしいと思います!
それでは、皆様2021年も大変お世話になりました!街を歩いていると「読んでますよ!言いたいことをズバっと書いてあって気持ちがいい」などの声を関係者からも頂きます。本当にありがとうございます。2022年も私の辛口コラムをよろしくお願い致します!良いお年を!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。