元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
キュウリとビリーバー
2022/8/3(水)
皆様、こんにちは!夏は暑い!と言わんばかりの照りてりの太陽。家の中にいてもバテるほどで参っています。そんな中、孫が週末に遊びに来てくれました。初めは照れたような顔をして、喋りかけても恥ずかしがっていたのですが、一緒に私が楽しんでいる家庭菜園で作っているキュウリを収穫しました。そして、帰る際には「キュウリを取ったのが一番楽しかった!」と笑顔で言われたときには本当に嬉しかったです。夏は暑いから嫌だと思いますが、夏休みは孫たちが遊びに来やすいから我慢しようと思いました(笑)。良い日でした!
さて、暑かろうが馬も人も休みがない競馬の話をしましょう。先週は新潟・札幌の変則開催となり、遠征組は揃って新潟に集まることになりました。そんな中、新潟では名物アイビスサマーダッシュが行われ、杉原誠君とビリーバーのコンビが勝利しました。レース前から外枠に注目していましたが、開幕週なら内も変わらないんじゃないかな…と個人的には思っていました。すると息子から「開幕週であっても外ラチ沿いじゃないとこのレースは勝てないよ」と言われ、そんなことないけどなと思っていましたが、またしても外枠のピンク帽が1~4着の中に3頭入るという結果でした。
ましてや、レース前に「ビリーバーの1000mはいいよ。この枠なら勝てるよ」と言われていたのでびっくりしました。レースはスタートからシンシティが楽に逃げる展開に。しかし、道中で富田君が少し固くなっているように感じました。これでは止まるかもしれないと思いましたが開幕週に絶好の外枠だっただけに、残せるか?と見ていると一気にビリーバーと杉原君のコンビが飲み込み、見事人馬共に初重賞を挙げました。
1000mであのレースをするというのは馬を知って、信じていないとできない運びだったと思います。それでも、今までコンビを組んできた相棒の走りを貫き、そして結果を出したのは本当に嬉しかったと思います。師匠の藤沢和先生が定年引退となり、支えになっていたものがなくなって、ひとつ騎手として大きくなったのかもしれません。相棒を信じ、自分の成長を信じた彼が本当のビリーバーだったのかもしれません。
今週も変則2場開催ということで、新潟ではレパードS,札幌ではエルムSと珍しく両方共ダート重賞になります。レパードSと言えば3歳ダート界の中でも出世レースと呼ばれるひとつですし、ここを制したい馬達が集まります。その中でも、まず注目したいのはオメガパフュームの弟ホウオウルーレットになります。圧巻のデビュー戦はビックリの一言。前走は厳しいレースになるも終わってみれば圧勝となっており、ここでも負けられないと思います。
前走では展開が向かなかったハピも虎視眈々と頂点を狙っています。こちらは同厩舎のチュウワウィザードを彷彿とさせるだけに、左回りの長い直線は有利になるのではないでしょうか。前走圧勝のタイセイドレフォンやヘラルドバローズからも目が離せません。また、初G1のオークスで周回している時に他馬を蹴ってしまい苦い思い出となってしまったラブパイローですが、ここで重賞を制覇して素晴らしい記録を作ってほしいと個人的に願っています。キュウリは色々なものを肥料にし、収穫までコツコツと育てます。苦い思い出も肥料にし、諦めずに努力することで、勝利という花を収穫してもらいたいなと思います。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。