元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
線で見た勝利
2022/8/31(水)
皆様、こんにちは!毎年楽しみにしている24時間テレビが放送されました。今年のテーマは「会いたい」でしたね。沢山の再会に涙をしたのですが、その中でも感動したのはauのCMで桃姫をしているキラリちゃんの亡くなったお父さんの夢を叶えるトライアスロンでした。笑顔で全てを走り抜けた姿は、苦しさの中でこそ人間の本性が見えるなと思わされました。50キロ以上の距離を泳ぎ、自転車を漕ぎ、走り抜けたのは本当に素晴らしかったです。今年もよいサライを聞くことができました!
JRAでも夏の楽しみのひとつワールドオールスタージョッキーシリーズが札幌競馬場で行われ、53歳レジェンド豊ちゃんが30年ぶりの2度目の優勝を飾りました!今年は芝・砂のダービーを制し、絶好調の勢いそのまま結果を出しました。まだまだ若い騎手には負けないという匠の技は見ていても痺れる騎乗でした。札幌競馬場のコースレイアウトを駆使し、少し足りない馬でも持ってくるあたりは豊ちゃんだからこそだと思います。
2位には川田君、3位に私が優勝予想していた松山君が入る結果となりました。日本チームの上位独占で終わりましたが、豊ちゃんのコメントにもあった、「まずはこの状況の中、日本に来てくれたワールドチームのジョッキーにも感謝」という言葉は、ハッとさせられました。難しい環境の中で来日し、騎乗してくれたワールドチーム。結果よりもファンの皆様の前で世界の技や技術を見せてくれたことに感謝しなきゃなと思わされました。
そのワールドチームのメンバーも多数騎乗したキーンランドCも行われ、推奨させてもらっていたヴェントヴォーチェが見事勝利を挙げました。中山ではスプリンターズSを制すことができるほどのタイムで勝利していたこと、少し体調が良くなかったのかな?と思うレースを挟み、前走は1000mに挑戦。ここで競馬の景色が変わったことで、馬が1200mを走ることを再度楽しみにしていました。そこに鞍上のクリストフの技術。今回はエポワスでの経験も活きた勝利だったと思います。
札幌開催も終盤に向かい、このレースは外々へと進路を求める馬が多くなります。しかし、クリストフは枠や展開もありましたが、エポワスで勝利した際に外を回る他馬を見て、内を選択して勝っていました。更に札幌コースは4角でスパイラルコーナーを採用しているため、他の競馬場よりも外を回すと直線に入るためには多くの技術と馬のセンスが出てしまいます。だからこそ、内を通しても足りると判断できたのだと思います。名手の経験とそれを実現できる技術、体調を立て直してきたヴェントヴォーチェに勝利の女神が微笑んだのは納得の結果でした。
2着には3歳馬ウインマーベルが入り、こちらは前走の重賞制覇から古馬相手でも結果を出せたのは大きな意味があります。スプリンターズSの本番はどの馬を選択するのか、買う側からすると非常に難しい結果になってしまった印象でした。
夏競馬も残すところ1週。札幌・小倉・新潟の最終週となります。各競馬場では重賞競走がそれぞれ開催されます。その中でも最注目は札幌2歳Sになります。注目を集めるのはブラストワンピースの全弟ブラストウェーブになるでしょうね。東京での新馬戦を除外で札幌デビューとなってしまいましたが、安定の勝利に、兄に負けないパワーと走りは札幌の洋芝に合うでしょうからね。今回は東京で騎乗を予定していた川田君に変更されていることからも改めて期待ができます。
その他では中京で勝利したダイヤモンドハンズやシャンドゥレールも人気を集めると思います。コース実績十分のドゥアイズがどこまでできるかも楽しみです。ジョウショーホープは前走窮屈なレースで進路を探す走りになっていたことから、ここで大穴一発リベンジに期待しておきます。新潟記念ではピンク帽!オレンジ帽!人気薄でも毎年絡んできていますのでお忘れなく。夏競馬最終週、馬券に勝ち、みんなで勝利のサライを歌いましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。