元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
2022 世代交代
2022/12/21(水)
皆様、こんにちは!ワールドカップは感動のフィナーレとなりましたね。アルゼンチンのメッシがとうとうW杯を手にしました。メッシといえば、幼少時代ホルモンの病気にかかり、毎月のように注射をしなくては体が成長しなかったそうです。アルゼンチンのクラブチームに補助をしてもらう形で入ろうとするも落選し、その際にバルセロナのスカウトの目に止まり、スペインへの移住とバルセロナでも治療していたと聞きました。だからこそ、バルセロナを退団する日は涙を流し、移籍を決意したのです。
そんな英雄を支えるため、引退した元選手でさえもメッシと仲のよい人をホテルに帯同させ国を上げて優勝を取りにきて、見事に勝ち切りました。海外で活躍する馬でも帯同馬が必要なように、勝つためには色々な準備と心意気が必要なのだと、改めて思わされたアルゼンチンの優勝でした。
先週は朝日杯フューチュリティSが行われ、見事1番人気のドルチェモアが勝利しました。その母といえば桜花賞馬アユサンで、親子揃って阪神競馬場でG1勝利となりましたね。騎乗した坂井君はG1・2勝目となりましたが、ひとつ勝ったことで堂々と乗っていましたし、これからどんどんと彼の名がG1の勝利騎手に上がってくることを予感させるレースでした。好枠を活かしきり競馬の上手い馬の見本の様なレースでした。力の要る馬場も合ったと思います。
2着にはダノンタッチダウンが入りました。まだまだこれからよくなるという体つきでの素晴らしい末脚は、来年のNHKマイルCでこちらが王者となるのではないかという走りに映りました。ダノン×川田のコンビはまだまだ夢を見させてくれそうです。
3着に入ったレイベリングも素晴らしい走りでしたね。フランケル産駒は初戦に圧巻の走りをすることが多く、2走目で上にいくか、まともに走らないかと極端に分かれるのですが、2戦目のG1でこの走りは大したものだと感心させられました。走るためのセンスがある馬で、この先に気性面での難しさが出てくるかですが、こちらにも期待ができると思います。非常に来年が楽しみになる一戦でした。
残すところ、3日間の開催を残すのみ。2022年はどんな年だったでしょうか?個人的な感想としては世代交代というイメージが強い一年でした。リーディング騎手は現時点でほぼ川田君になり、G1を初勝利した騎手の面々、新しい厩舎の躍動に、福永君の調教師試験合格など、競馬界としても違うステージに移ったようなイメージがあります。
集大成となる有馬記念はそんな1年を表すような勝利が多いことからも、世代交代という面で私の本命はイクイノックスになります。それともメッシが最後のタイトルを取ったことからもタイトルホルダーが意地を見せてくれるのか、エムバペのような新星ヴェラアズールのG1連勝があるのか、はたまた引退が近づいている福永君が最後に獲っていない有馬記念を制するのか。皆様の1年を重ねて、応援してください!!
28日に行われるホープフルSの本命はファントムシーフになります。相手はハーツコンチェルトやガストリック、コースも向きそうなグリューネグリーンあたりで落ち着くレースになる気がしています。JRAの締めくくりとなる日程だけに、仕事納めに競馬納め!という素晴らしい形で終わりますように。2022年も当コラムをご愛読ありがとうございました!!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。