元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
新たな門出
2023/3/2(木)
皆様、こんにちは!2023年もとうとう3月に突入しました。競馬界での3月は新学期となり、多くの調教師や福永君の引退を迎え、新たな調教師や騎手のデビューとなります。関西からは田口貫太君と河原田菜々さんの2人がデビューします。田口君に関しては両親共に笠松競馬の関係者になり、小さな頃から競馬に携わってきただけに期待しています。今の新人は調教技術が上がり、馬に対して長い時間関わってきている人が増えているのが要因になっているのかと思います。
しかし、レース展開やセンスといったところに関しては馬に長くではなく競馬に長く関わっていることも重要になります。2人には騎手になったことだけで満足せず、競馬を勉強するための生活をしてもらえたらなと思っています。その他にも、かつて体育会TVの企画でマスクドジョッキーに勝利した佐藤翔馬君も騎手になりましたし、今週からのレースは楽しみが沢山待っています。
前述した福永君が騎乗した最後のレースがサウジアラビアで行われました。リメイクは3着という結果でしたが、アメリカの2頭に強さを改めて見せられつつも、よく戦ってくれたなという印象を受けました。有終の美とはいきませんでしたが素晴らしいレースだったと思います。勝利したエリートパワーのフランキーのジョッキーカメラ動画を見せてもらいましたが、ものすごい走りをしていたと思いますので、是非皆様もJOCKEY CAMで検索してみてください。
そのサウジアラビアではサウジカップでパンサラッサと吉田豊騎手が勝利しました。ペースといい、馬場を上手く使ったレースをしたという印象を受けました。また内の馬場を警戒した馬達にも助けられた展開となり、全てが向いた勝利だったなと思いました。挑戦することで結果を出してきたチーム矢作にとってはまたまた勲章を手に入れたこととなり、当たり前を疑い、挑戦することでしか得られない勝利を掴み獲りました。
感動の勝利の後に日本では中山記念が行われました。一時期は命さえ危ぶまれたヒシイグアスと松山君のコンビが勝利しました。最後は少し止まっていましたが、連覇という形での勝利はお見事でしたね。ここから、更に調子を上向かせて今年こそG1へという思いではないでしょうか。そして、このレースでは非常に危ない事象が起きました。イルーシヴパンサーのM.デムーロ騎手とドーブネの豊ちゃんの斜行によりシュネルマイスターのバシュロ騎手が内ラチに激突しながら走ることとなりました。
色々な意見が上がったと聞いていますが、個人的な見解としてデムーロ騎手は直線に入り、いったん外をチョイスしました。その際に外から被されたことで外に出すことができませんでした。その一瞬で空いたスペースにシュネルマイスターとバシュロ騎手がインを狙い馬の頭を入れました。この時点で、この走るコースはバシュロ騎手とシュネルマイスターのレーンになります。勿論、脚がなければ取り返せるのですが、今回はそれではありませんでした。
前は2頭分のスペースが空いていたこともありましたが、ドーブネは逃げていたこともあり、モタれることを想定すると内ラチから1頭分は空ける必要があります。そのため、デムーロ騎手としては外をチョイスした時点でこの内が2頭分空いていてもシュネルマイスターが入った以上、選んではいけないコースだったと思います。
しかし、勝利するためには入るしかないと狙ったがために逃げ馬が内にモタれ、シュネルマイスターをラチに激突させる結果となりました。狙いたくなる気持ちはわかりますが、その一瞬の判断でバシュロ騎手を落としていてもおかしくない危険な騎乗だったと思います。落馬で辛い想いをした騎手を何人も見てきました。だからこそ、勝負しにいくことと危険なことは別と再度考えてもらいたいと思いました。
今週の競馬は2場開催となります。中山、阪神で新人騎手のデビューがあり、福永君が引退記念としてチューリップ賞で誘導馬に騎乗することも発表されました。是非、皆様には楽しんでもらえたらと思います。その中でも注目はディープインパクト記念弥生賞になります。人気が予想されたグランヴィノスが出馬をやめ、頭数としても少なくなりましたが楽しみな一戦に変わりありません。注目を集めるのはトップナイフと典ちゃんのコンビになると思います。前走は同じコースで行われたホープフルSで2着に入っていますし、勝って息子が乗るであろうソールオリオンスとの本番での対決に弾みをつけたいところです。
しかし、私の注目はワンダイレクトになります。前走は外から規格外の脚を使われての敗戦となりましたが、普通なら勝っていてもおかしくないレースでしたから。その他にも父サトノクラウンを管理していた堀厩舎のタスティエーラや本番に向けて再度アピールしたいグリューネグリーンといったあたりが注目だと思います。今週は新たな門出に相応しいレースに期待しましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。