元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
機(木)は熟した!
2023/3/30(木)
皆様、こんにちは!先日、コーヒー豆の焙煎をされているコーヒー中毒製作所という奇抜な商品を頂きました。頂いてすぐに手動のミルでコーヒーを挽くと、なんともいえない素晴らしい香りが立ち、ドリップするとさらにプラスされてアロマのような素晴らしい香りに包まれました。しっかりと温度管理をしながらドリップしたことで新鮮なコーヒーオイルの抽出もでき、非常に美味しくいただきました。これは毎月リピートしてしまうかもしれません。まさに木は熟したコーヒーでした(笑)。是非、気になる方は検索してみてください。
それでは競馬の話をしていきましょう。まずは何と言ってもドバイワールドカップの話になります。とうとう日本馬がダートで世界一の称号を得ました。その名はウシュバテソーロ。騎乗したのが先週のコラムで絶賛させていただいた日本の4番打者川田君というのも感慨深い勝利になったと思います。関係者の「オルフェーヴル産駒ということもあり、初めのうちは難しいところがあった。しかし、江田騎手がそれに対応してくれ、こんな大きな舞台で勝つことができた」というコメントにはジーンときましたね。
競馬もコーヒーを入れるのと同じくらい奥が深いです。最後の勝利や最後の一滴を絞り出すまでの間に沢山の工程があります。湿度や温度でも変わるような世界。そうやってひとつひとつを積み重ねてきたことが今回の勝利になったと思います。日本競馬界にとってもヴィクトワールピサのオールウェザーでの初制覇から12年。機は熟した素晴らしい勝利でした。
日本では雨の中で高松宮記念が行われ、団野騎手と西村調教師が管理するファストフォースが勝利しました。両者、当馬ともに初のG1制覇となる初々しい勝利でした。ファストフォースといえば、西村調教師が期待している一頭と聞いていました。しかし、選べるレースが少ない中で遅れたデビュー。思った調教を組み切れずにJRAでは勝つことができませんでした。そこで北海道に移籍し、ダートでゆっくりと出来上がるのを待ち、レースに挑むと勝利を重ねてJRAに再転入。そして、路線をスプリントにしたことで本来の力を発揮し確実に成長の階段を登ってきた一頭です。
雨を味方にしたこと、扱いやすい馬ということもありますが、団野君がギリギリを攻めた結果の勝利だったと思います。しかし、彼の同期は本当に素晴らしい結果を出していますね。同じレースに騎乗していた岩田望君もグレナディアガーズのことを考え、勝利するにはあの乗り方しかないと決意しているのが分かりましたし、展開が向かなかった時の敗北も受け入れる覚悟を持って勝負する年代だなと改めて思わされました。本当に素晴らしい競馬を見せてもらいました。
今週はそんな団野君のお父さんが担当するジェラルディーナと同期の岩田望君がコンビを組んで出馬してくる大阪杯が阪神競馬場で行われます。なんといっても注目はスターズオンアースとルメールのコンビが集めるのではないでしょうか。ここも勝ち上がり、ジェンティルドンナやアーモンドアイなど名牝の道を歩んでくるのか興味が尽きません。
そこに待ったをかけたいのがここで結果を出したいジャックドールになりそうです。万全の態勢で今回こそはという思いがあるでしょう。川田君騎乗のヴェルトライゼンデや岩田康君騎乗のノースブリッジにヒシイグアス、先のジェラルディーナがどう対抗してくるのか楽しみです。熟成した馬達の春の中距離路線頂上決定戦。勝利の香りをまとい、てっぺんに上りつめる馬はどの馬か。いよいよ今週日曜日です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。