元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
2日連続のルメールマジック
2023/5/4(木)
皆様、こんにちは!今週は驚きのニュースが発表されました。6人の若手騎手が競馬のジョッキールームでスマホ等を使用しており30日間の騎乗停止となりました。ハッキリと言ってプロ失格です。ジョッキールームとは騎手の待機室みたいな部屋で女性騎手用は男性騎手と別に用意されています。その個室で使っていたというのですがから弁明の余地はありません。また、コロナの感染を防ぐため申請を出すことで認定調整ルームとしてホテルに泊まることができます。しかし、こちらも情報漏洩防止等の目的で携帯電話の使用を禁止されています。
それを騎手同士ならいいと思ったという勝手な解釈で使用していたと言うのですからビックリです。ネット社会になり馬の情報を見たりしたい場合は調整ルームで職員さんに相談して確認することができますが、それ以上のことを勝手にしていたのですから。30日では短いくらいだと思います。調整ルームや携帯電話禁止は日本独自のルールかもしれません。しかし、国が運営する以上、疑われることを防止するために敷いたルールです。抜け道があると言えばあると思いますが、だからこそ最低限のルールとしたわけです。
さらに騎手は勝利した時には多くの賞金をもらえます。勿論、その連絡ができないだけで賞金が高いわけではありませんが、少なくとも私は外部と接触できない時間の分も含まれていると解釈しています。海外のように、自由にスマホを触れる環境を望むならその国で騎手をすればいいと思います。先輩騎手やJRAが守ってきたことを競馬学校でも散々注意されてきた子達がやってしまったことは、非常に大きな影響を及ぼします。こんなことをしていれば騎手の節内移動なども認められなくなってしまいますからね。
それではケチのつくような話は終わりにして競馬の話をしましょう。先週はグランドオープンから初めて京都競馬場でG1天皇賞(春) が行われました。淀の3200mに春の盾が帰ってきた!と改めて感じる人も多かったと思います。そんな中、勝利したのはジャスティンパレスとルメールのコンビでした。前日の青葉賞でも勝利を挙げていたルメールでしたが、この2日間の騎乗は唸らされるほどの上手さでした。
青葉賞ではペースが遅いと見るや前にいる馬を突き、ペースを上げさせると自分は欲しかったポジションに納まり、最後に素晴らしい脚を使うなど後ろからレースをコントロールしましたし、天皇賞(春)では1週目に最内をキープしながらペースを判断すると、ゴールまでのウィニングロードを逆算しながら外に出して行き、最高のレースで勝利しました。ジャスティンパレスが阪神大賞典の時に見せていた成長力は偽物ではなかったと証明するレースとなりましたね。
2着にはまたまたディープボンドが入りました。レース巧者ということもあり、またもや惜敗となってしまいました。1番人気に選ばれたのはタイトルホルダー。返し馬から硬いところ気になっていましたが、スタート後の走りを見ていつもと違うことを確信しました。スタート後に出したのでなんとか大丈夫なのかと思っていた4コーナー手前でミスステップのように走りが崩れた矢先、ずるずると下がり競走中止となりました。エコーの結果は異常なしだったそうですが、あの状態では限界だったということだと思います。一度休み、立て直すことで、また強いタイトルホルダーを見せてほしいと思います。
今週は東京競馬場でNHKマイルCが行われます。メンバーとしては混戦が予想されるだけに、どの馬にもチャンスはあると思っています。その中で本命に選ばれるのはエエヤンになるのではないでしょうか。中山コースで素晴らしい走りをしていますが東京コースでは勝っていない点が少し気になっています。しかし、馬に力はついてきていますので楽しみです。
重賞勝利で勢いがあるオオバンブルマイやウンブライルなども有力だと思います。そこにドルチェモアなど重賞で結果を出している馬もいます。そして、私の穴候補としてはシャンパンカラーを選びたいです。どの馬が勝っても驚きませんが、波乱でも人気通りでも、日本競馬の素晴らしさを改めて見せてくれるようなレースを期待しています!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。