元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ダービー騎手の積み重ね
2023/5/11(木)
皆様、こんにちは!本日のニュースで古川奈穂騎手が大井競馬場で調教騎乗することが報道されましたね。スマートフォンの使用により騎乗停止になる期間もより多くの馬に乗り、自分達がどれだけ恵まれた環境で競馬できているかを知るのに素晴らしい取り組みだなと感じました。今でも中央と地方では調教に関してもペースが違います。中央が決して楽だということではありませんが、地方では毎日多くの馬に騎乗する必要があります。
だからこそ馬に乗る機会が増え、技術や多くの馬の背中を知るということは彼女にとっても素晴らしい経験になるのではないでしょうか。反省の期間をマイナスだけで終わらせないというのは本当に素晴らしいです。正直レースを見ていて、この子大丈夫か?と心配するほどでしたが最近はトレーニングの効果が少しづつ出ていることが乗り方からも分かりますから、ここで更にレベルアップしてもらいたいなと思います。
それではNHKマイルCを振り返りましょう。まずは、このコラムを見て馬券を買った皆様、おめでとうございます!私もビックリしましたが、穴推奨していたシャンパンカラーが優勝し、騎乗した内田君にとっては久しぶりのG1勝利となりました。では、なぜ推奨したかをご説明したいと思います。まず、気になっていたのはデビュー戦です。東京マイルで新馬らしからぬ末脚を使って勝利し、2戦目はまったく違うハナを奪う競馬で制しました。その後、期待していた京成杯での負け方を見た時に、中山ではこの馬にとって最高の走りはできないということを感じていました。
次のレースも再度中山で走ることになりますが、ここでは3着という結果を残しました。このニュージーランドTで内田君は脚の使える長さや馬の特性を掴んだように思います。その結果、東京マイルでは負けておらずもっと素晴らしい走りができると判断した上で、雨予報と聞いてこの馬の走り方ならばこなしてくれそうという予想も上乗せしての推奨でした。全てがハマらないとG1は勝てませんが今回は枠から馬場、相手関係と全てがうまくいったことによる勝利だったと思います。
内田君も上手く馬の機嫌をとりながら乗りました。エージェントを外して依頼アプリを作ってみたり、ダービー騎手でも勝てる馬に乗れなくなってきたり、人として腐ってもおかしくない状況でした。それでも彼はひとつでも上の着順を取り乗せてくれた人へ恩返しをするんだ!と自分自身を鼓舞し、諦めなかった。そして、今回G1を制しました。一緒にやってきた元騎手のバレットさんを初め、チーム内田の努力が花を再度開かせた瞬間。諦めなければ咲く花もあるということを見せてくれた勇気が出る勝利でした。
今週はヴィクトリアマイルが行われます。残念ながら直前の発表でメイケイエールが回避となりましたが、素晴らしいメンバーが揃いました。その中でも注目はスターズオンアースになります。ハッキリ言ってこの馬も東京向きだと思っています。阪神マイルでは忙しい部分があるのに対し、東京の広々としたコースは最高の舞台になるのではないでしょうか。そこに対抗してくるのはソダシになります。レーン騎手が騎乗し、さらに雨でも大丈夫だと思いますので、全てにおいて高いレベルでこなしてくれる気がしています。
ナミュールやソングラインといった馬達も拮抗していると思います。そして、今週の穴推奨はサウンドビバーチェになります。勝利するまでには「かなり色々なものが噛み合わないと」と思うと同時に、マイルは彼女にとって非常に面白い舞台だと思っています。今週も感動の勝利が待っているのか、楽しみにレースを迎えましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。