元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
これが東京だ!お嬢さん
2023/5/25(木)
皆様、こんにちは!大相撲では元白鵬の宮城野部屋の北青鵬が快進撃を繰り広げています。北海道出身で身長204cmの身体に今までの相撲では見たことがない力感のない構えで自分の得意な形になるまで待ち、一気にパワーで投げ飛ばしていくのは圧巻の一言。更に相撲を覚えればどんな力士になるのかと楽しみで仕方ありません。あの体格はまさに宝物。宮城野親方がよく言う型を身に着け、日本の相撲界を変えてくれる存在になると思います。
先週は牝馬クラシックのオークスが東京競馬場で行われました。北青鵬と同じく与えられた牝馬とは思えない雄大な馬体で1冠目を制していたリバティアイランドが2冠目を手に入れましたね。今回のレースで問題は2400mという距離への適性だと思っていました。正直、勝った今でも2400mは彼女にとっては長かったと思っています。しかし、それを陣営ならびに騎手が一丸となり、長距離を走れる体、そして気持ちを作りあげてきました。それこそが最大の勝因だったと思います。
レースはスタートから内枠のライトクオンタムが逃げる形を取り、2番手にはキミノナハマリアがつけました。1000mは1分、2000mは2分というよどみのない、まるで機械のようなピッチが刻まれる中、女王は前走追走に苦しんでいましたが、今回は6番手を取ることができました。そこから4コーナーでは早々と進路を獲得して圧巻の走りで後続を振り切ると6馬身差の圧勝で勝利しました。父ドゥラメンテが出した当時のレコードよりも0秒1速いタイムが彼女を更に際立たせたと思います。これだけのタイムで走れるのですから2400mも才能の前には何も問題がありませんでした。
海外ではアーモンドアイが比喩されるほどの強さで、これからの彼女があの雄大な馬体と共に歴史を作ってくれるのが楽しみで仕方ありません。レース後には話題のジョッキーカメラで「これが東京(で勝つ)だ!お嬢さん」のコメントには真の女王になったんだ。そして、まだまだこれからこの景色を見ようという意図が含まれていたように感じました。
2着にはハーパーが入りましたが、内でじっと我慢しているなと見ていると、4コーナーではリバティアイランドの真後ろを取ったルメールの騎乗はサブいぼものでしたね。あれほどまでに冷静にかつ、勝つために貫けるメンタルと技術はやはり凄まじいと感じました。素晴らしいクラシックだったなと改めて思えるレースでした。
今週は全ホースマンが夢に見る日本ダービーが行われます。出るだけでも嬉しいレースで勝利を挙げるのはどの馬なのか非常に楽しみです。牝馬で2冠馬が出たことで、牡馬も2冠馬の誕生になるのか、エフフォーリアとの悔しさを胸に横山武君とソールオリエンスがまずは注目を集めそうです。中山ではリバティアイランドの父でもあるドゥラメンテのようにコーナーリングで外に膨れるように走っていただけに、左回りの方が得意なのではないでしょうか。しかし、全員の夢であるダービーだけに簡単に勝てることはないとも思っています。
そのライバル筆頭はスキルヴィングになりそうです。ルメールは東京での勝率ならびに2400mなど全てのデータで上位にくるだけに、枠順次第では逆転もありえると思っています。その他にも、豊ちゃんに乗り替わるファントムシーフや前走で強さを見せたサトノグランツ、しがらきではなく天栄を使い始めた堀厩舎のタスティエーラに友道厩舎のダービー仕上げシャザーンなども楽しみです。枠も非常に大事になるレースで、通常であれば外枠は厳しくなります。それだけに枠順発表を待って、予想を楽しみましょう!「これがダービーだ!お坊ちゃん」と叫ぶのは誰か。日本ダービーは今週日曜日です!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。