元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
リベンジ達成!THEダービーポジション
2023/5/31(水)
皆様、こんにちは!楽しみにしていた大相撲が終わってしまいました。照ノ富士が横綱の威厳を見せつける相撲で優勝。そして、この場所では霧馬山が見事な相撲を取り続け、とうとう昇進を決めました。親方から霧島の名を引き継ぐことも決まり、新たな大関の誕生に来場所が楽しみで仕方ありません。その他にも落合など注目を集める若い力士の活躍も目立ち、相撲新時代が間もなくこようとしている気がしています。
それでは波乱、歓喜、悲しみのあった第90回日本ダービーの話をしましょう。コロナが第5類に引き下げになったことから活気が戻った競馬場での頂上決定戦。スタートから波乱の幕開けとなりました。ドゥラエレーデがつまずく形でスタートすると乗せていた坂井瑠君が落馬するアクシデント。歓声と悲鳴が混じりながらの1コーナーでは、想定通りパクスオトマニカが楽に逃げる形を取りました。2番手にはホウオウビスケッツがつけるも追いかけることをしなかったため、非常に遅いペースで前半を迎えることになりました。
そのペースを味方につけたのが勝利したタスティエーラとレーンのコンビでした。4コーナーではダービーポジションと呼ばれる位置から最後は際どい差を残しきりダービー勝利を挙げました。ここ数年は後ろから差し切るようなダービーが増えていただけに、今回も後ろから決まるかもしれないと思っていましたが、THEダービーポジションでの勝利。タスティエーラはサトノクラウンの初年度産駒になり、いきなりのダービー制覇となりましたね。
テレビを観ていると担当者はサトノクラウンと同じ方で、父は同じ厩舎のドゥラメンテに敗れましたが見事初年度からリベンジを果たしました。サトノクラウンは血統面からもサンデーサイレンスやディープインパクトが増えすぎた日本競馬では需要が更に増えるはずで、馬産地にとっても嬉しい勝利だったと思います。
2着には1番人気のソールオリエンスが入りました。またしても武史君は勝てませんでした。ただ、この短期間に2頭も圧倒的1番人気で日本ダービーに挑めたことはすごいことだと思います。しかし、勝つことでしか評価されないのが騎手です。負けたということは何かマイナス面があったのだと思います。それを突き詰めることが彼にとっては一番大事になるかもしれません。走りとしては左回りでも子供っぽさが変わっていないので、本当によくなるのは秋以降かもしれないなという印象を受けました。
ゴール後にはスキルヴィングが倒れ、命を落としました。最も注目されるダービーで2番人気に推奨された馬の倒れる姿は悲しみと衝撃だったと思います。馬も人も常にギリギリの状態で勝負している、それが競馬。ファンの皆様も、命がけの勝負なのだと感じながら観戦していただけたらと願います。複雑な感情が入り混じる日本ダービーとなりましたが、勝利したタスティエーラとレーン騎手には最大のおめでとうを送ります。
今週は東京競馬場で安田記念が行われます。人気を集めるのは昨年覇者でヴィクトリアM完勝のソングライン、今回は川田君とのコンビになるソダシ、マイラーズCを制して臨むシュネルマイスターになるのではないでしょうか。しかし、私の注目はイルーシヴパンサーになります。今春からフリーになった岩田望君はJRA初G1をここで手にし、もうひとつ上のステージへと登ってもらいたい。勿論、簡単ではありませんし、前述した馬達以外にセリフォスやレッドモンレーヴもおり、非常に面白いレースになる予感がしています。悲しみのない、歓喜だけのG1を期待しましょう!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。