元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
完全なレベルアップ
2023/9/7(木)
皆様、こんにちは!とうとう9月に入り、耐え難かった暑さが少しマシになり、早く過ごしやすい日がきてほしいと願っています。近況では息子が韓国へと行きました。クラウンプライドとリメイクの調教のためです。最近は韓国でも馬がレベルアップし、レースランクもどんどんと上げていることを見ると簡単ではないと思っています。しかし、世界を飛び回り走らせてきた彼の技術を韓国でも十分に発揮してくれると信じています。
両馬とも川田君が韓国に渡り騎乗してくれるとのことで、それもまた心強いことだと思っています。先日も書いた通り、川田君は今や世界でオファーを受けるべき騎手です。だからこそ、韓国にもKAWADAの名前を轟かせてもらいたいと願っています。
先週はWASJで結果を残した望来君がまたまたやってくれました。夏競馬の最後を締めくくる小倉2歳Sが行われ、アスクワンタイムとのコンビで制しました。兄弟馬がこの場所で重賞を勝っていたことからも適性があったように感じます。レースは予想通りドナヴィーナスが逃げる展開に。注目を集めていたキャンシーエンゼルが3番手につける中、アスクワンタイムは後方を進みました。しかし、4コーナー手前から望来君が促すと物凄い勢いで馬が進み、これは差し切るのではないかという脚色。
WASJで優勝したことも相まって自信を持ち、一呼吸おいてから信じきって外に出すと一気に全てを差し切り勝利しました。以前からリズムを大切に乗ることを意識していた望来君でしたが、そこに迷いがなくなったことで馬の推進力が上がった気がしました。4コーナーでの捌きや気持ちの余裕を持つことで更なる高みにいける気がしました。藤原先生に教え込まれてきた技術と父のレース感覚を持ち、そこから独立して一人になることで自分への責任が自信に変わったことで得た勝利だったと思います。
先週で夏競馬が終わりました。毎年のことですが、この仕事をしている誰もが楽しみにしている夏競馬です。いつもとは違うご飯や違う雰囲気の中、新たな気持ちで働くことができますからね。現役時代を思い出して名残惜しい気持ちにもなりつつ、秋競馬の始まりは中山・阪神で開催されます。土日で3つの重賞が開催されますが、その中でもセントウルSに注目しています。
まず人気を集めそうなのがアグリになります。前回は香港G1でしたが、ここのメンバーでは負けられないところで、開幕週の馬場も味方してくれると思います。しかし、心配は札幌で落馬した横山和君が騎乗できるかどうかだと思います。そこまで難しい馬ではないので代役でもと思いますが、それがいつ判明して、レースまでにコンタクトを取れているかは大事なことだと思っています。ともあれ力としては抜けているので、杞憂に終わるかもしれませんが。
そう簡単に勝たせないと陣営が思っているのはビッグシーザーになるのではないでしょうか。今年も3歳馬が色々なレースで勝利していることからも期待がかかります。そこに前走は少し不完全燃焼だったエイシンスポッターや千直を使ったことで行きっぷりがどう出るのかジャングロ、復活してほしいピクシーナイトにここでもチャンスがありそうなスマートクラージュと楽しみなメンバーです。世界レベルへと上がってきている日本人騎手の活躍を今週も期待しています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。