元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
ルメールマジック
2023/10/26(木)
皆様、こんにちは!とうとう円安が今年最安の150円代に突入しました。日本競馬は強くなれど日本経済はなかなか強くなりませんね。円安になれば海外レースでの賞金が必然と上がることからも、日本競馬の弱体やレベル低下に繋がることだと思っています。その他にも、海外から新しい血を入れるための購入も値段が変わってきてしまいます。買い控えに繋がれば、日本競馬での繁殖にも影響が出ますからね。悪循環から飛び出すためには、思い切ったこうじゃないとダメだという当たり前を壊してほしいです。
それでは先週の競馬を振り返りましょう。3冠最後の菊花賞を制したのは当たり前を壊し、自分と相棒を信じ切ったレースをしたルメールとドゥレッツァ。まさしくルメールマジックでした。レースはスタート直後ナイトインロンドンがハナを奪う形になり、これで落ち着くかなと思った矢先、ドゥレッツァが少しかかるようにハナを奪い返す形になりました。場内からおぉぉという驚きの歓声が響き渡る中、ルメールの頭の中には2つの選択肢があったと思います。
それは馬の気持ちを優先させ3000mの中で調整する方法、もうひとつは無理に抑えてでも控えさせることです。その中で、彼は馬の気持ちを優先させ逃げることを選択しました。ここで行こうが後半で折り合わせ修正することができるという自信があったと思います。その後も0,5秒単位でペースを落とすことで回りを戸惑わせ、一気に彼のペースへと持ち込みました。向正面ではドゥレッツァの真後ろにいたナイトインロンドンだけは遅くなっていることに気ついて突くことにしました。しかし、ここでルメールは自分の相棒はリラックスする時間がいると張り合わず、内でじっと急かすことをせずに溜める選択をしました。
迎えた4コーナーでは抜群の手応えで再度抜き返すと、一気に突き放して勝利。ここまで馬と人が一体になり、勝利を挙げたというのは数少ない素晴らしいレースだったと思います。2着にはタスティエーラが入りましたが、こちらもモレイラの技術がふんだんに入っていただけに、ルメールマジックに今回は屈したといったところでした。3着にはソールオリエンスが入りました。距離適性を考えればよく来たなという走りでした。今後はマイルから中距離路線で活躍してくれると思っています。この3頭の次走は楽しみになりますし、古馬との対決がどうなっていくのかにも注目してください。
今週は天覧競馬となる天皇賞(秋)が東京競馬場で行われます。まさに最強馬決定戦。THE KINGを決める一戦に注目は大きなものになっています。まずは世界一の馬イクイノックス。そして、ダービーで同馬を倒したドウデュースの再戦になります。お互いが成長して大人になり、どんなレースになるのかワクワクしています。格闘技ならば那須川天心 対 武尊の一戦といった感じですね。
そこに他馬がどういったレースをするのかもポイントになってくると思います。特に気になっているのはガイアフォースになります。着実に力をつけていますし、この一戦でも西村君が思い切ったレースをしてくれるのではないかと思っているからです。今回は買い目を減らし、厚めにいくことが必要になります。世紀の一戦を是非、生観戦してくださいね!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。