元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
時、早し
2023/11/1(水)
皆様、こんにちは!とうとう2023年も残すところ2ヶ月となりました。時間が過ぎるのが早すぎてビックリしています。特に、歳をとればとるほど早くなっている気がしています。これは数学で10歳の場合だと1/10 に対して、73歳なら1/73 となるようにだんだんと1年が短く感じるという現象みたいです。100歳まで生きれば一体どんな速さで1年が過ぎるのか気になります。
早くなるのは1年だけではありません。競馬界でも年を重ねるたびにホースマンたちの技術が積み重ねられ、とうとう芝2000mを1分55秒台で走り抜ける馬が誕生しました。先週は東京競馬場で天皇賞(秋)が行われイクイノックスとルメールのコンビが驚くタイムで勝利を挙げました。控えてよし、行ってよし、コントロールもつけば出していけばいくほど加速する天才は、日本歴代1位といってもよいほどの強さだと感じました。
レースは外からジャックドールと藤岡佑君がハナを主張する形となりました。1コーナーの入り方からも同馬を活かすべく速いペースを選択しました。速すぎたというよりは速さの中に馬の休息がない逃げとなってしまった印象。その後ろにつけていたルメールも、差し馬が有利なペースだと感じていたと思います。しかし、ジョッキーカメラを見てもイクイノックスは無理して走っていないですし、ルメールもリズム良くというところだけだったと思います。直線に入ると逃げるジャックドールを一気に捕まえ、最後はターフヴィジョンを見ながら余裕のゴール。強い。あまりにも強すぎる勝利でした。まるで穴がない馬です。
2着にはジャスティンパレスが入りました。こちらは展開もハマったイメージで、イクイノックスを倒す競馬というよりは着拾いが上手くいったという印象です。もちろん力が無ければここまでも来れませんが…。7着に敗れたドウデュースは直前に豊ちゃんから戸崎君へ乗り替わりになりました。彼にとってもプレッシャーだったと思います。しかし、それでも挑戦した姿には盛大な拍手を送りたいです。
レースは久々の分もあり、少し噛んでしまったところはありました。しかし、イクイノックスを倒すための競馬をしたのはこちらだと思います。競馬は結果が全てです。絶対王者を倒しにいく7着と倒すのは無理だからと違う競馬をすることでは意味が異なります。だからこそ今回の7着は戦いにいっての着順で仕方がなかった。あまりにも相手が強過ぎたという印象です。これでガス抜きできていれば次のレースが楽しみになるでしょうし、絶対王者相手でも諦めないリベンジに期待しています。
今週は祝日金曜にJBC、日曜早朝にはアメリカでブリーダーズカップが行われます。中央競馬でも重賞がありますが、なんといってもJBCに注目しています。スプリントは豊ちゃんのケガにより御神本騎手に乗り替わりになるリメイクに注目しています。コリアでの勝利といい、日本の短距離ダートでは間違いなくNo.1だと思っています。大井を知り尽くしているジョッキーだけに思い切った競馬で勝利してもらいたいと思っています。
クラシックはテーオーケインズ対メイショウハリオに注目が集まっています。どちらを選びますか?と言われると非常に難しい選択で、ハリオに関しては韓国を断念した影響も心配しています。しかし、得意の大井だけに力は出してくれることでしょう。その他にもレディスクラシックや門別で2歳優駿もあります。まさにダート重賞盛りだくさんの今週。見逃せない感動の瞬間は生観戦で!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。