元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
馬場を見極める力
2024/1/12(金)
皆様、こんにちは!2024年になって2度目の投稿となりました。新年から競馬も2週目となりますが、まだまだ金沢での被害は酷く、日常を取り戻すには時間がかかるようです。少しでも力になれることがあればなと思います。
そして、同期の坂井千明元騎手が亡くなりました。この年齢でも同期というと特別な感情がありますし、あんなことがあったなと思い出がぽろぽろと出てきました。私も不調がないかと言えばウソになる年齢になりました。しかし、毎週のように若い騎手が来てアドバイスを求めてくれ、週末のレースを見る楽しみでなんとか頑張っています。彼らの重賞やG1勝利を見るまで私は頑張ってみます。坂井君のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
先週の京都の馬場は、改装した影響がバッチリと出てしまったと思っています。クッション値は硬めとなっていましたが、芝の根付きが中京同様に改装した影響から甘くなり、1レースから芝がボンボンと飛んでいく馬場となっていました。こうなると馬場の適性+選ぶ目と技術が非常に大事になります。その馬場を選ぶ目を持っているのが川田君だと私は思っているのですが、それを証明してくれるような勝利をシンザン記念でノーブルロジャーと見せてくれました。
レースはスタートからゼルトザームが逃げる形を取る中、ノーブルロジャーは10番手辺りを追走しました。川田君はまだまだ走る体はあるのに幼さが残るノーブルロジャーのリズムを大事にしながら、競馬を教えているように見えました。迎えた3コーナーで馬場を読み切った川田君は一気に外を選択しました。更に直線に入っても外、外の進路を選び、見事な勝利を挙げました。
初日にはMr.金杯こと岩田康君が見事な、いや見事すぎる内差しを決めましたが、3日目は全く違う馬場になっていましたからね。京都金杯の岩田康君といい、シンザン記念の川田君といい、馬にとって最高の乗り方をしてくれた素晴らしいレースだったなと思います。騎手の能力に非常に重要な馬場を見極める力を巧みな技術で見せつけてくれました。
今週からは京都、中山と小倉でレースが行われます。小倉では土曜日に愛知杯、日曜日には京都で日経新春杯、中山で京成杯が行われます。その中でも日経新春杯に注目しています。1番人気にはサトノグランツが選ばれると思います。この距離はまさにピッタリだと思いますし、得意の右回りで外が伸びるのであれば川田君としても馬場を選びやすいのではないでしょうか。
それに待ったをかけたいのがリベンジに燃えるダービー3着馬のハーツコンチェルト。ここでの結果次第で今後のローテーションも決まるでしょうし、斤量も差があるだけに勝ち上がりたいレースになると思います。そこにサヴォーナやレッドバリエンテもいますからね。
リビアングラスの鞍上は田口君が選ばれました。毎週見るたびに上手くなってくる彼ですし、毎日木馬に乗っては練習をしていると聞いています。そんな努力を重ねる彼に勝利の女神が微笑んでくれないかなと思っています。積み上げた努力で全てが報われるとは限りません。しかし、それでも諦めずに努力を続ける人にしか勝利は呼べません。それがこのレースになってほしいと願っています。
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。