元騎手という視点から最新競馬ニュースを大胆解説。愛する競馬を良くするために、時には厳しく物申させていただきます。週末重賞の見所と注目馬もピックアップ!
古き良き競馬
2024/5/2(木)
皆様、こんにちは!桜の季節が過ぎると一気に夏のような気候になる中、毎年恒例の田んぼに水が入り、カエルの大合唱が始まりました。ここまで大合唱されると、もはや寝るのに邪魔というよりも子守唄のように聞こえてきます。今にして思えば、これも昭和から続く古き良き習慣なんだなと感じでいます。
そんな古き良き習慣を競馬でいえば師弟関係や騎手と馬のコンビがあります。師匠であり義父の由太郎は昔、キーストンで山本さんを降ろすとオーナーが言った際には「降ろすならウチから引き上げてください」とまで言い切るほど、義理人情に熱い人でした。それだけ人馬の絆を信じていました。
今では外国人騎手やトップ騎手への乗り替わりが当たり前になりました。もちろん勝負ですし、トップジョッキーが乗った方が前にくる確率が上がるのですから理解できます。しかし、胸を熱くさせるのはやはり勝利だけでなく、馬と人にどんなストーリーがあるかだと思います。
そんなストーリーがあった天皇賞(春)を振り返りましょう。20年前イングランディーレの逃げ切り勝利を目撃し、騎手を志した菱田君と怪我で1年休んでいたテーオーロイヤルのコンビが勝利しました。ずっと苦楽を共にしてきたコンビが師匠の馬でG1を勝って恩返しをする。こんな古き良き昭和の競馬を思い出しました。菱田君も長きに渡りコンビを組んできたからこそ帝王の名に相応しい、強気の王道競馬で馬を信じた渾身の騎乗だったと思います。素晴らしかった!
今週はNHKマイルCが行われます。ルメール騎手が落馬負傷から復帰することでも注目が集まりますが、私の推しはジャンタルマンタルになります。以前からアドマイヤマーズを彷彿させると言ってきましたがまさに同じローテーションできますし、秋はマイルCS制覇にも期待しています。
そこに新馬以来のコンビ復活となるルメールとアスコリピチェーノがどんな走りをするかにも注目です。ノーブルロジャーやディスペランツァといった馬達にも力があるだけに渾身のぶつかり合いが見られそうです。ゴールデンウィークで交通面の混雑に気をつけながらも是非競馬場でお楽しみください!
プロフィール
松田 幸春 - Yukiharu Matsuda
北海道生まれ(出身地は京都)。1969年騎手デビュー。通算成績は3908戦377勝で、その中にはディアマンテ(エリザベス女王杯)、リニアクイン(オークス)、ミヤマポピー(エリザベス女王杯)など伝説の名馬の勝利も含まれる。1987年にアイルランドの研修生として日本人騎手では始めて海外の騎乗を経験しており、知る人ぞ知る国際派のパイオニア。1992年2月の引退後は調教助手に転じ、解散まで伊藤修司厩舎の屋台骨を支え、その後は鮫島一歩厩舎で幾多の名馬を育て上げた。時代を渡り歩いた関西競馬界の証人であり、アドバイスを求めに来る後輩は後を絶たない。