'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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勝利数
11月11日時点1556勝
騎乗にとって何よりも大事なポイント ハミを語る
2015/2/8(日)
消極的なレース運びだったAJCC
-:それでは、よろしくお願い致します。まず、AJCC(G2)のパッションダンス(牡7、栗東・友道厩舎)から振り返っていただきたいのですが、テン乗りで、枠やコース形態、馬場状態を考えたら、まずまず枠は良いところを引けた印象がありました。しかし、結果はジリジリとは来ているものの、もう一つ届かない内容でした。テン乗りなので、手探りな面もあったでしょうが、ご自身の印象としてはいかがだったでしょうか?
戸崎圭太騎手:映像を観せてもらって、枠はこの馬にとっては内過ぎるかなと。理想はもう少し外が良かったですね。レースでの乗り方も、自分のイメージとは違うようになってしまって、もう少し先行したかったし……。結局、あの馬の良さは出せなかった騎乗だったと思っています。
-:思ったより行けなかった要因としては、どういったことが挙げられますか?
圭太:そんなに行く馬もいなかったですし、行ききってしまうのは嫌でした。そのあたりを敬遠しながら乗るところが、少し消極的になってしまった結果、位置取りが後ろになってしまった感じですね。
-:さじ加減が難しいところを迷ったところで、結果的には中途半端になってしまったと。
圭太:そうですね。スタートも良かったので、もう少し出してからでも良かったですね。消極的でした。
-:そして、レースは逃げ切りの結果でした。結果的には位置取りが命運を分けたレースでしたが、先ほどのお話からも行ききってハナに立ってしまうのは、あんまり良くないタイプということですね。
圭太:先生(調教師)からもそういう指示だったのでね。馬も返し馬で調子が良く、けっこう行きっ振りも良かったので、何か一気に行ってしまうのもね。それはそれで言われたところでもあり、少し構えちゃいましたね。ただ、ペースも遅かったですね。
-: 1、2着が最初にハナに行った馬と2番手に行った馬ですから。(2着の)ミトラのいる位置や、もう少し後ろで運んでいればという感じだった訳ですね。
圭太:結論は失敗ですね。ええ。そうですね。位置に尽きますね。
乾きが良い 新装中山の馬場
-:馬場に話を移すと、中山が改装されて、馬場も改修された上での2開催が終わりました。2開催通しての印象はどうでしたか?
圭太:良い状態というか、開催をしていくにつれて、時計が速くなっている印象がありますね。
-:それは踏み固められたというか、馬場が固まったという感じですか。それよりも雨量の問題なのか?
圭太:いや、雨も中間(平日)に降ったりしているのでね。普段ならばもう少し緩さがあるのかと思うのですが、乾きが早いんですよね。
-:そこはやっぱり、排水性を高めた影響というか、効果が出ているということですね。
圭太:そうですね。だから、競馬はしやすいですよね。
-:乗ってみて、今までの馬場が悪くなる中山と今の中山、好みの問題で言ったらどっちが良いですか?
圭太:まあ、今の方が良いですね。馬場が荒れると、大半は荒れ馬場で走り辛い馬が多いじゃないですか。そういう心配をしなくて良いので、今の方が良いかなと。
-:硬度でいえば、硬い馬場でしょうか?
圭太:始まった頃よりはそう感じますね。乾燥しているのもあるとはいえ、もう少し水分を含んでいても良いかなと思いますね。
戸崎圭太の好みはリングバミ
-:AJCCといえば、幾度とコンビを組んできたエアソミュール(牡6、栗東・角居厩舎)と対戦することになりましたね。
圭太:道中で隣にいましたが、ペースは遅かったですし、けっこうガンガンと気が入って走っているなと思いましたね。それでも、クリスチャン(デムーロ)はその辺をしっかりなだめて、抑えての3着ですからね。
-:あのペースで3着だったので、届かなかったのは残念だったですが、良い内容だったのかなと思います。
圭太:ただ、あの馬は(ペースが)遅い方が良いと思うんですよね。
-:それは前もおっしゃっていましたね。
圭太:ハイ。遅くて我慢させておけば、終いしっかり来られるのかな、という気はしているので。
-:「今回は普通のハミに替えた」という話をしていたのですが、あの馬にとって、ハミの交換はどう感じますか?
圭太:リングから替わったのかな?僕は基本的にリングバミが好きなので、クリスチャンがどう感触を得たか分からないですね。それでも、(リングを)嫌がる人は嫌がりますよね。僕はどっちかと言えば、リングの方が好きなんですよね。
「ハミもそうですし、そこのコンタクトをしている感覚って人それぞれ違うんです。だから、その人の特徴や乗り方も違うし、感覚も違うので、競馬は奥が深いという感じですよね」
-:さすがにハミの感覚は、馬の背中を知らない人間にはわからない領域ですね。競馬ファンにも伝わるように、普通のハミとリングバミの違いを教えてもらって良いですか?
圭太:う~ん、ちょっとした感触なのでしょうが、伝えづらいですよね。
(元騎手の)戸崎圭太騎手マネージャー:普通のハミでも自由ですが、基本リングというのはモタれる馬などに使う事が多いからね。あとは引っ掛かる馬ですか。
圭太:引っ掛かる馬にも使うんだ?
マネ:(操作)口が利かない馬ね。要はリングって、イジれるんですよ。
圭太:その「イジれる」という表現が分からないはずですよね。
マネ:ハミによって馬とのコンタクトが「イジれる」とか「抜ける」という言い方をするのですが、さすがに乗馬をした人しか分からないですか。
圭太:難しいね。ここ(ハミ)でしかコンタクトを取れないじゃないですか。ここで馬と会話をしているワケで、ここの感覚が重要。ハミに好き嫌いがあって、僕はリングの方が良いかな、という印象で、コンタクトが取りやすいですね。
マネ:「モタれる」と言っても、結局片方の操作が利かない馬とかで、そういう馬にリングを使うと効果があるんです。要は口が利かないんですよ。引っ掛かる馬でも、本当に全然操縦ができないという馬は、リングの方が良かったりするからね。
圭太:ハミもそうですし、そこのコンタクトをしている感覚って人それぞれ違うんです。だから、その人の特徴や乗り方も違うし、感覚も違うので、競馬は奥が深いという感じですよね。
「ハミは馬と直接コンタクトを取る場所なので、そこが一番大事なところですよね」
-:リングを使っていた馬で、ご自身の代表的な騎乗馬はいましたか?
圭太:エクセラント(カーヴ)(牝6、美浦・堀厩舎)はそうだね。ただ、ああいう馬でも、「普通のハミの方が良い」と言う人も絶対いると思うんですよね。そこは難しいところですね。
-:最近はトライアビットというハミが流行っているんですね。
圭太:僕はあんまり好きじゃないですね。地方の方が多いかもしれませんね。でも、それじゃなくても、リングでも良いような気がするんですよね。騎手が乗りやすいことよりかは、レースに行ってきちんと走れるハミを使うという方が、たぶん大事だと思うし、スタッフはそういう風に考えてハミをやっているのだと思うので、自分がリングが好きだからと言って、リングにする訳にもいかないですよね。
-:馬具の話で言えば、この前はステッキの話を伺いましたが、ハミや口元の操作というのは、ステッキよりももっと重要だということですね。
圭太:そうですね。直接コンタクトを取る場所なので、そこが一番大事なところですよね。例えば、手綱なんて何でも良いんだろうし、メンコとか頭絡、鞍よりもそこは一番大事なところだと思うので。
前走快勝からひと息のトロワボヌール
-:話題はレース回顧に戻らせていただきます。TCK女王盃(Jpn3)のトロワボヌール(牝5、美浦・畠山吉厩舎)は2度目の騎乗でしたが、結果は4着。前走から後退する結果でした。
圭太:条件的には馬場が少し渋って、距離も枠順も最高に良いかと思って、自信を持って臨みました。結論は直線は少し進路が狭かったのですが、きっとトロワだったら、あそこは伸びてくるはずなのでね。そこに問題はなかったと思いますが、右回りが苦手だなというのは感じましたね。新馬も右で勝っているし、その後も右で走っているのですが、ここ最近はずっと左回りで走っていて、恐らくあの馬も左回りに走りやすさを感じたのか、道中での走るバランスが違いましたね。
-:時間やレースを重ねていく上で、馬自身が左回りに走り慣れてきてしまっているのかもしれませんね。
圭太:それは感じましたね。船橋の左回りの走りとは、僕は違ったと思います。
-:直線はちょっと狭くなりましたが、あれは大きな影響はないということですね。
圭太:あの馬はあそこを突き抜けてくれる能力は持っているのでね。それに狭くなって抜け出してからも、伸びはあんまり……。道中の走りが僕は気になりました。
-:南関は左回りが多いですし、交流重賞も多いので、条件さえ戻れば、という感じですね。距離適性はどれくらいがベストでしょうか?
圭太:僕自身は1600~1800がベストだと思っています。
-:その上で気になるのは、次戦のプランはご存知ですか?
圭太:川崎のエンプレス杯。2100mだから距離が長いんじゃないかな……。
-:じゃあ、本質からは少し長い条件にはなってくる訳ですね。
圭太:う~ん、乗り方次第じゃないですか。
10年ぶり?の騎乗停止
-:最後に、中山最終週で騎乗停止になりましたね。こちらについても触れておこうと思います。
圭太:聞かれなかったら、自分から言おうかと思っていました。「そこは触れなくて良いんですか?」と。全然話題にされなかったからね。ハハハ(笑)。
-:珍しいケースですよね。
圭太:珍しいというか、本当に迷惑を掛けてしまったので、そこは自分でも反省しなきゃいけないし、ショックでもあったほど。それくらい嫌だったですね。年間ずっと通して乗れるようにという目標もありましたからね。ここで途切れるということで、悔しいというか……。これを機に、また成長しなきゃいけないという思いです。
-:どれぐらい振りですか?
圭太:いや~、ちょっと分からないですね。地方の時もだいぶなかったので。
-:5~6年はないですか?
マネ:10年ぐらいないんじゃないの。
圭太:10年ぐらいになるのかな。フェアに乗るというのも大事なことだと思うので、今回のことは、自分でも受け止めていますよ。
-:ある意味、久々の土日休日を堪能するというか、大切につかいたいところですね。
圭太:本当ですね。これはもう気持ちを切り替えて、ゆっくり休んで、心を落ち着かせたいと思います。
-:今回も長々とありがとうございました。リフレッシュした「新生・戸崎圭太」に期待しています!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。