'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月25日時点1561勝
世界での経験を糧に 阪神ジュベナイルFはリスグラシューを導け!
2016/12/9(金)
今週は香港での騎乗を果たし、見事に勝ち星をマーク。シリーズ3位と一矢を報いた戸崎騎手。熾烈を極めるリーディング争い、G1での騎乗と目まぐるしい日々を送っていることと想像するが、週末は阪神JFでのリスグラシューなど注目馬の騎乗が相次いでおり、その手腕に期待が集まる。年内のJRA開催も残り3週。ラストスパートとなるか、ご注目いただきたい。
香港国際騎手招待競走は今年も3位に!
-:今週水曜は香港でロンジン・インターナショナル・ジョッキーズ・チャンピオンシップに騎乗。結果、昨年に続く3位タイということでお疲れ様でした!
圭太:ありがとうございます。
-:2年連続の出場ということで、慣れはあったのかもしれませんが、香港での滞在期間の印象としていかがでしたか?
圭太:確かに慣れもありましたからね。火曜はイベントがあって、水曜は夜にレース。木曜は特になかったのですが、飛行機の時間もあったので、それほど歩き回ることもなく過ごしましたよ。空いている時間は観光もできましたし、公私で充実していました。
レース前日にライアン・ムーア騎手(左)、ミルコ・デムーロ騎手(右)と記念撮影(写真は本人提供)
香港のヴィクトリア・ピークにて(写真は本人提供)
-:そして、レースそのものは4戦目で勝ち星。聞くところによれば、騎乗馬のラインナップは厳しいなんて話も耳にしていたので、3戦を終えて、このまま難しいかな……と思っていましたが、勝ち星をあげられて何よりでしたね。
圭太:そうですね。本当に一勝出来たことは何よりでした。去年も話題にしたかもしれませんが、ハッピーバレー競馬場はキツいコーナーで難しいコース。それが今年はBコースで仮柵が動いていて、余計にキツくて、みんな外に振られる感じでした。
-:その中で4戦目は2番手から運ばれて勝ち星。昨年、香港競馬は調教師からの指示が細かいというお話がありましたが、今年も変わらずでしたか?
圭太:まあ、変わらないですね。ただ、指示といっても位置取りだけだったりするもので。今年は3戦目まで全部「ハナにいってくれ」というオーダーだったのですが、行ける馬もいたり、行けなかったり……。
-:ちなみに、去年に経験されたことで戸惑いはないかと思いますが、検量だったり、こちらと勝手が違ったりするのですか?
圭太:ああ、それはありますよ。香港では直前のレースが終わってからではないと検量が出来なくて、「そんなに急で大丈夫?」と思ったものですが、職員もついてくれているので。でも、本当に勝てたことが何よりですし、来年も来たいし、素晴らしい経験をさせてもらえましたよ。
-:ちなみに、「食事」の方はどうでしたか?
圭太:ああ、まあ何とか選びながらこなしましたよ。大丈夫でした(笑)。
初コンビ・リスグラシューで2歳女王の栄冠を
-:さあ、そして、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)はリスグラシュー(牝2、栗東・矢作厩舎)に騎乗されますね。枠順も今朝出ましたが、まさかの大外枠……。
圭太:う~ん、そうですね(苦笑)。これはモマれない枠に入ったとプラスに考えて臨みたいですね。
-:ですよね……。レースでは初騎乗ですが、一週前には追い切りで騎乗済み。ジョッキー騎乗とはいえ、なかなか良い時計も出ていましたね。
圭太:ええ。動ける馬ですね。フットワークも良い感触を得ましたし、持ち味としてはキレ味が身上なのかな。イメージは良いですよ!
-:枠順が出たばかりで、レースの組み立てなどはこれから改めてされると思いますが、今年は牝馬が強いという評判。それだけに、ライバルも多いですね。
圭太:特にソウルスターリングは強そうですね。あとはジューヌエコールですか。さすがに無傷の連勝を続けているわけですから。
-:阪神JFは3年前に制して、ゆかりのあるレースだと思います。意気込みのほどを聞かせていただけますか?
圭太:まあ、(ゆかりは)そうですね(笑)。また、こうしてチャンスのある馬に乗せていただけることを嬉しく思いますし、責任も感じます。どのレースもそうですが、G1では一つでもニつでも勝ちたいですから。良いメンバーが揃っているので、僕もしっかり導けたらと思っています。
先週は栗東トレセンへ駆けつけ1週前追い切りに騎乗
-:その他のレースについてもよろしくお願いします!日曜阪神の堺ステークスにはレッドサバス(牡4、栗東・松田国厩舎)が出てきますね。
圭太:この2戦のレース通り、終いはしっかりしたモノを持っていますよね。前走は相手も強かったですし、距離も問題ないはず。あとは多少、展開に左右されるところがあるので、そこだけは良い方に向いてほしいです。
-:土曜の中山に移ると、ラピスラズリSのメラグラーナ(牝4、栗東・池添学厩舎)は前走こそ敗れましたが、1000万下、準オープンと連勝してきましたね。
圭太:以前、乗せていただいた時から、良い馬だとは思っていました。当時とは距離も変えて、レースぶりも変わっていますよね。それによって、この馬本来の良さが出てきたのだと思います。ここ最近の走りを参考にしつつ、能力を引き出してあげればと思っています。
-:同じ勝負服で8R(3歳上1000万下)にはおなじみのヨンカー(牡3、美浦・和田郎厩舎)が出ますね。
圭太:前走を観てもわかりますが、スムーズな競馬を心がけたいですよね。能力はあると思いますから。
-:霞ヶ浦特別のソールインパクト(牡4、美浦・戸田厩舎)はどうですか?
圭太:これも以前に乗せていただいた時は気難しさを感じていましたが、ここ最近は成績も安定してきていますからね。そういった精神面の成長も窺えるのかもしれませんね。なおかつ上がりが掛かるような展開になれば、と思います。
負けて強しの競馬 展開に泣いたモーニン
-:ここからはレース回顧になりますが、チャンピオンズC(G1)のモーニン(牡4、栗東・石坂厩舎)は大外枠をひいて、個人的にはチャンスかと思っていました。
圭太:う~ん。出足も良かったし、ハイペースで番手につけて、そこまでは良かったのですが、外からも来られましたからね。そこで砂をかぶってひるんでしまったのでね。でも、そこから盛り返していますから……。
-:普通ならば、あそこからズルズルと後退しておかしくないところですよね。
圭太:ええ。あそこでもっと主張しておけばよかったかと思いますし、マクってきた馬も結局は沈んでいますからね。モロさを出しつつも、伸びてくるあたり、もったいない歯がゆい競馬でした。
-:距離なども問題なさそうですもんね。
圭太:そうですね。条件がつきまとうところもありますが、今回は力を出しきれず、申し訳なく思います。
-:同じ日曜中京のモンドアルジェンテ(牡4、美浦・萩原厩舎)はこんなに人気を集めるのか、と思ったほどですが、強かったですね~。
圭太:いやあ、そうですね。率直に良くなっていました。今までテンについていけるような馬ではなかったですからね。戦前に口にしたように、左回りが良かったのか、状態なのかはわかりませんが、これまでとは違った印象でしたよ。
-:昇級でも期待出来そうですね。
圭太:この雰囲気ならば、通用すると思います。
-:ステイヤーズS(G2)のプレストウィック(牡5、美浦・武藤厩舎)はどうでしたか?
圭太:テン乗りで指示も出ていたのですが、結果はまずまずも指示通りに乗れなかったのもありますね。
-:もっと前々でといった指示だったのですか?
圭太:ポジションよりも、人気馬2頭と同じ位置では太刀打ちできないんじゃないか、ということで違ったところで運ぶ話だったのです。しかし、道中でマクっていくつもりが、なかなか動けないポジションにはいってしまったのでね。
-:チュラカーギー(牝3、美浦・中舘厩舎)は人気通りの結果でしたね。
圭太:スピードもあるし、力が違いましたよ。
-:次週は土日とも中山での騎乗ということで、残り3週のリーディング争いにも引き続き注目ですね。そういえば、香港では世界のトップジョッキーとも顔を覚えられたなんて話をされていましたね。ムーア騎手とも記念撮影されて、送っていただきましたが
圭太:そうですね。あんまり話が出来ているのかは不安でしたが、水曜も終わった後にバーで飲もうなんて話になって。で、ホテルのバーにいったら、スマレンとボウマンにも会いまして。
-:そりゃあ、世界的なジョッキーの会合ですね。
圭太:向こうは別のグループで奥さんもいたので、気を遣ったのですが、「一緒に飲もう」という話になりまして。すごく楽しかったですよ。競馬の話やら何やらと。
-:「趣味のゴルフ」に並ぶ戸崎騎手といえば「得意の英語」というキャッチコピー?もありますね。
圭太:それが何とか成り立ったんで(笑)。うちの奥さんが英語の聞き取りが少しは出来るというのもあったのですが。
-:でも、それなら、今後、シャーガーカップなど行ける可能性も膨らみますね。
圭太:そうですね。色々なところに出ていきたいです。
-:今週末はその経験を糧に、G1でも頑張ってほしいです。
圭太:ハイ。頑張ります。
(聞き手:競馬ラボ・小野田学)
※次回は12月16日(金)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。