'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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シリーズ・戸崎圭太を知る男たち~唯一の弟弟子が明かす素顔~
2018/6/14(木)
戸崎圭太騎手本人が語らない(語りたがらない)素顔を明かしていく、シリーズ[不定期連載・戸崎圭太を知る男たち]。久々の更新は、戸崎騎手が大井競馬在籍時代に所属していた厩舎の弟弟子にあたる大井競馬の山崎良騎手を直撃。昨年も年間2勝に終わり、現役騎手としては満足のいく成績を残せていないのが本音だろうが、そこで戸崎騎手が送ったアドバイスとは?また同じ騎手として、戸崎騎手の凄さ、技術面についても語ってもらった。
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-:それでは、よろしくお願いします。かな~り不定期の企画として、自身について多くを語りたがらない騎手だからこそ(笑)、戸崎圭太騎手にゆかりのある人に話を聞いていこうという企画です。なぜ今回、山崎騎手だったかと言うと、2月に矢野貴之さんと戸崎騎手の対談をしてもらったのですが、そこで話題に挙がったのが山崎良騎手でした。さすがに読まれたりはされていないと思いますが…。
山崎良騎手:いえ、読ませていただきましたよ。
-:そうでしたか(笑)。そこで、戸崎さんから「もうちょっと頑張れよ」みたいな内容だったので、耳の痛い話ではあったと思いますが。
良:いや、普通に嬉しかったですよ。やっぱり普段は言ってくれないので。
-:話を聞いたところでは戸崎騎手から「トレセンに行け」みたいな話はしたと。そういう話は、普段しゃべっていてもなかなか教えてくれない話なので。僕は毎週話を聞いていても、新鮮でした。
良:あんまり自分から言わない人ですからね。
▲8年目となる大井の山崎良騎手 戸崎騎手同様、香取和孝厩舎所属でデビューした
-:ですよね。そのエピソードを教えていただきたいのですけど、そういう話があったのはいつ頃だったのですか?
良:高崎(境共同トレーニングセンター、旧高崎競馬境町トレセン)に行き始めたのが、今年の初めくらいですから、最近ですね。僕が、今後のことについて相談をして、その時にどこでもいいから乗りにいく、手伝いにする場所を増やすように言われまして、候補の中で一番良いのが高崎なんじゃないかなと。浦和という案もあったのですが「誰もやっていないことをやった方が良いんじゃないか」と言われて。
-:どれくらいの頻度で行かれているのですか?
良:だいたい月一ですが、行ける時は月二ですね。
-:けっこう、距離もありますからね。
良:ありますね。電車で3時間半くらいですけどね。泊まるところも、矢野さんと今でも連絡を取り合っているくらい厩務員さんの厚意で泊めてもらって、僕にとってはすごく新鮮ですけどね。
-:もともと戸崎騎手に相談するキッカケになったのは、いつ頃だったのですか?
良:去年の11月くらいで、すぐに行ったので。結果、乗り馬も増えて、アドバイスに従って良かったです。
▲戸崎圭太騎手が騎手デビュー初勝利を挙げた馬を担当していた厩務員さんの
送別会を戸崎騎手が主催(写真:山崎騎手提供)
-:大井時代、弟子として時期が被っていたのはどれくらいですか?
良:実はそれがそんなにないです。僕はデビューした年の10月には高知に行っていたので。僕のデビュー前も大井に来ることはありましたが、圭太さんは競馬に専念されていた頃ですし、ちょっとしゃべっただけくらいでしたから。いま思えば、ちょっと被った程度なのが良かったのかもしれないですけどね(笑)。
-:2013年には戸崎騎手もJRA移籍を果たしましたし、そう考えるとあまり接点はなかったわけで。その頃の印象はどうでしたか。
良:圭太さんとしゃべる時は、今でも言えることですが、ちょっと気を遣っちゃうので、当時は全然しゃべれなかったですね。何かオーラといいますか、恐れ多いところがあります。そんなに深く話さなかったし、調教にもあまりいなかったですからね。
-:その頃は、騎乗数が多過ぎて、なかなかという感じでしたかね。しかも、当時は試験勉強もされていましたから。
良:そうですね。あの時はけっこう忙しそうでしたね。
-:ただ、その後も付き合いは続いていたということですね。
良:とくに最近増えましたね。
-:逆に、最近の方が、ですか。
良:最近は僕からもちょこちょこ連絡をするようになって、競馬を一緒に観てくれたり、何人か若手の指導をしてくれたり。
▲(写真:山崎騎手提供)東京競馬場にて
山崎騎手を発見した戸崎騎手のリアクションに注目
-:そんなこともあったんですね。
良:本当に限られた人数の若手ですね。(小林)拓未さんと(藤本)現暉や(笹川)翼などですか。
-:へえ~意外ですね。僕は初めて聞きましたよ。
良:ああ、本当ですか。頻繁ではないのですが、森下厩舎に土居さんという元バレットの人がいて、その人も呼んで何度か教えてくれていますけどね。
-:「戸崎先生」の講習はどうでしたか。
良:やっぱり考えていることがすごいですよね。深い。常日頃から考えてないと、あんなことは言えないですよね。何か生活が家族と競馬くらいなのかなと。言ったら、「競馬オタク」みたいな感じなのかなという気がします。
-:前回のこのシリーズでも取り上げさせていただいた、栗東の調教助手さんがいまして、地方競馬教養センターの同期で元ジョッキーの方なのです。同じようなインタビューをさせてもらいましたけど、同じようなことを言っていましたね。
良:他に何をやっているのかなんて、あまり聞かないですもん。たまに家族で旅行に行ったり、それくらいしか聞かないですね。最近、圭太さんの行っているジムを紹介してもらって、通い始めたのですが、キツいですね。体幹などを中心に鍛えるジムですが、やっぱり差があります。僕もまだ行って2回目ですが、トレーニングのやり方はやっぱりすごく違いますよね。こういうことをやっているんだ、と驚かされました。
-:「長い一本の下駄でも、騎乗姿勢で立てる」みたいなことを言っていましたけどね。
良:あそこに行けば、そうかもしれないですね。ありそうですね。
-:印象に残る言葉、エピソードはありますか?
良:圭太さんはけっこう人に強く言わないイメージがあるのですが、高崎に行く話の時は本当に強く言ってくれましたね。それで、僕もこれはまずいなと思って、すぐに行動して…。やっぱり言葉に重みがあるじゃないですか。普段なら競馬のこと、人間関係のことは気軽にアドバイスしてくれるのですが、いつもの圭太さんはあの性格ですから笑顔で「あんまり深く考えないで、適当にやれば良いんだよ」みたいな、そんな感じだったのですが、その時は違いましたね
-:それが、その時は違ったということですね。
良:眼力が半端ないじゃないですか(笑)。いまだに冗談は言えないですね。冗談なんか言ったら、本当に怒られそうです。
-:僕が接しているのとは、ちょっと違うのかもしれないですけどね。
良:あんまり下の若手や後輩からは、あまり言われたくない系なのかな…(笑)。
-:この前の対談の時でも「的場さんはイジれない。(坂井)英光さんでも、自分はあんまりイジれない。内田さんもそう」と言っていましたね。先輩、後輩という、ちょっと昔ながらのところもあるのですかね。
良:だから、裏表が本当にないですよ。そういうところが好きですけどね。家族以外であそこまで信用出来る人と言ったら、なかなかいないですもんね。
-:戸崎騎手とは大井時代、同じ厩舎の所属ということで、弟弟子に当たるんですよね。
良:圭太さんはそういう関わりを大事にしてくれるので「これも縁なんだから」と、身内みたいに言ってくれますよ。もう切っても切れない存在みたいな感じですね。それは嬉しいですけどね。弟弟子だから、もっと活躍してくれたら嬉しいんだろうけど、今のこんな成績でも対等に話してくれるし、すごいなと思いますけどね。やっぱり上の人と下の人では話し方も変わるじゃないですか。同じですもん。そこら辺の人間的なものはすごいなと。
-:同業者として、騎手としての技術的な部分はどう思いますか?
良:一番は、やっぱり競馬に行っても馬のことを第一に考えているんですよね。特に道中の重要性が高いですし、そのコンタクトが凄いなと。それに、自分の努力は絶対に怠らないタイプじゃないですか。だから、木馬をやっても、馬の動かし方や考え方が全然違って。競馬に乗らないと分からないかもしれないですけど、圭太さんは乗っていても、1回毎に自分の体重を鐙に伝えることをすごく大事にしているみたいですね。外からじゃ分からないですけど、そこをすごく意識していることを覚えています。「常に馬を前に出しておく」「動いているから良いんじゃなくて、踏んで常に動かして、馬をコントロールする」ということは、けっこう言われますね。最近もちょっと鐙を延ばされたかな?
-:鐙の長さも馬によって多少差はあるでしょうが、変わったと。
良:おそらくそうですね。それに「何かあったら教えてくれよ」と、僕たちからも吸収しようとしますからね。「僕たちから学ぶことがあるんですか?」と。「あるよ、お前たちからも」と、そんな感じですからね。
-:そのシャツもそうですけど、用具はもらったりするのですか。
良:ちょこちょこデサントのシャツくらいで、あまりもらわないですけど、大井にいる時に、最初の頃はありましたよ。
-:戸崎騎手が大井に乗りに来た時には必ず会っているのですか?
良:鞍置きくらいですけど、会いますね。それは毎回しますね。圭太さんは「鞍置きに出られる時は出ろ」と常に言っているので。圭太さんの時に出なかったら「他で出ていないだろう」と言われるので、ハハハ。
-:良い先輩ですね。
良:僕も何とか成績を出したいです。何か色々試して変われば。「この世界はキッカケ一つでいくらでもいけるから」と言ってくれているので。キッカケも大切ですし、そのキッカケを掴むために、今シッカリやっておかないと。圭太さんがやっていることを、なるべく自分もやってみたいし、ジムもそうですけど、そういうので何か考えが変われば、またチャンスも増えてくるだろうし。JRAのリーディングを獲った人と同じようなトレーニングをしているところに行けるというのは、大きいですからね。弟弟子じゃないと、そんなことはないですからね。
-:戸崎騎手から教わったことを基に、ご自身の目標はありますか。
良:僕は、まず2桁の勝ち星ですね。そこからだと思っているので、年内2桁は行きたいですね。2桁に行ったら徐々にチャンスも増えてくると思うので。何年か先の勝ち星の目標を決めてあるので、それから逆算して。
-:それは言われて決めた目標ですか?
良:いや、それは自分で決めました。
-:自分で考えられるところは考えないといけないですもんね。改めて、戸崎さんに対して何かコメントがあれば。
良:普段お世話になっているし、本当にすごく良くしてくれているので、本当は僕からご飯代を1回くらい出さないといけないくらいなのですが、ハハハ。
-:収入が違いますからね。
良:そうですけど、お世話になりっぱなしなので。今後もお世話になると思うので、またご飯行きましょうと。
-:成績を挙げることでも恩返ししないといけないですね。今回はありがとうございました!
【山崎 良】Ryo Yamazaki
1992年2月12日生まれ、東京都八王子市出身。八王子実践高校在学中に競馬界に憧れを抱く。JRA騎手になることも一時は目指したが、身体面などの理由もあり、受験を断念。その際、地方競馬の存在を知り、高校卒業を待たずして地方競馬教養センターを受験。大井競馬についても詳しく知らない状態で、大井競馬・香取和孝厩舎所属として2011年にデビュー。所属の香取厩舎の先輩には戸崎圭太騎手がおり、その縁もあり、現在も縁が続いている。今年初めから戸崎騎手のアドバイスもあり、群馬県の境共同トレーニングセンターでの調教にも騎乗。チャンスを求め、奮闘している。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。