'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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12月16日時点1567勝
負傷から10日過ぎ・・・連載再開&ダノンキングリーの健闘を祈る
2019/11/16(土)
連載再開。ご存知の通り、11月4日の浦和競馬で行われたJBCレディスクラシックにて落馬。検査の結果、右肘の開放骨折と診断された戸崎圭太騎手。1週前には病床からコメントを寄せてくれたが、既報どおり手術は終了し、退院し、現在は静養しているという。今後も復帰への過程、リハビリの経過などを逐一聞かせてくれるそうだが、今回は復帰後の第一声として、通常通りの連載を更新。大怪我を経て味わった感覚、ダノンキングリーへの思いなどを語ってくれた。
※最下部にお知らせもあります!
-:ということで、負傷後も連載再開となりますが、JBCのレースから10日ほど。具合はいかがですか?
圭太:変わらず、ですよ。まだリハビリに至るレベルではありませんし、痛みはありますが、今後も通院も続きますからね。
-:この1週間は今までとは全く違った形で日々過ごされたと思います。
圭太:これで4回目の大きなケガですけど、痛みが一番ありますね。今までは手術を終えてしまえば、あまり痛みは感じなかったのですが、その分、スッキリしないところはありますかね。肘の外側の開放骨折ということで箇所が箇所ですし、先生もおっしゃっていましたけど、そこは時間が経って治るのを待つしかないということですね。
-:ケガをされた時のことを改めて振り返っていただくと、スタートしてすぐに先行争いが起きた中でのアクシデントでした。
圭太:流石に落ちる瞬間のことは覚えていませんが、今までは怪我をした時は記憶がなかったのに今回はありましたね。どうやって骨折したかは分かりませんが、落ちてから肘から下の腕があり得ない方向を向いていたので「やっちゃったな」という感じでしたね。手を動かそうと思っても、自分では動かせない。左手で自分の右腕を持って運んだ感じくらいの勢いでしたね。その後、出血もすごくて、自分でも驚きながら救急室には行きました。
-:僕も落ちた時は、すぐにスンナリ起き上がってくれるのかなと思いましたが、あの動きを見ると、これは…という感じだったので。
圭太:腕だけだったので、起き上がるには起き上がれたのでしょうけど、ただ、ショックと驚きで起きてるような状況でなかったですよね。
-:先週はすでに1週間競馬が行われました。落馬をして戦線離脱することになって、考えられたことはありましたか。今週だったらマイルCS(G1)のダノンキングリーもいますし、自分が乗っていた馬たちが走っていることになっています。
圭太:ダノンキングリーに関しては、正直そこに騎乗出来ていないことは悔しさもあり、残念でもあり、色々と思うことはあります。ただ、こうなった以上は追い切りの動画を観たりしながら、順調に行ってくれたら良いなとはすごく思います。レースも今週ですけど、頑張って勝ってもらいたいな、という思いが強いです。応援する側になっちゃっていますけど、心から応援したいという気持ちですね。
-:先週も騎乗してきたワンダーリーデルが武蔵野S(G3)を勝ったり、サンライズノヴァも頑張っていたり、クロコスミアもエリザベス女王杯(G1)で2着など、乗っていた馬がことごとく走っていましたが、さすがに病院で競馬をリアルタイムで観ていられなかったですか。
圭太:いや、病院で観ていましたよ。ただ、正直、このケガで思ったことは、今まではケガをしたら焦りだったり、「早く乗らなきゃ、早く戻りたいな」という気持ちがありましたけど、今回はそういうことはなく…。初めての心境だったんですけど、「ちょっと競馬から離れたいな」というのが正直な気持ちでしたね。なので、月曜日にケガをしましたけど、競馬のニュースも見なかったですし、珍しく見たいとも思わなかったんですよね。今まではこんなことはなかったのですけど、やっぱり日にちが経ってから、冷静に見られるようになって、見てはいましたけど、初めての心境でしたね。
-:それは復帰まで時間が掛かってしまうことへのショックなのか、今の時期に戦線離脱する悔しさだったのでしょうか。
圭太:いや、そういうことではなかったですよね。時間が掛かることも冷静に受け止められたし、早く乗りたいという気持ちがなかったんですよね。自分に問いかけても「何だ、この感情は?」という感じでしたね。ケガをして良かったという訳ではないんですけど、この1週間で色々振り返ってみて、何かここ最近は楽しくなかったというか、結果ばかりを求めていたことなど、色々考えさせられた時間でしたね。
-:ある意味、自分の仕事を俯瞰して見られたと。やっぱり第一線でやっていく中でプレッシャーもあった訳ですね。
圭太:やっている時はそういう風に見られているものだと思っていたんですけど、いざ離れてみると、何か自分ではない姿で仕事をしていたというか、競馬をしていたかなという感じですかね。そういうところを今感じていますね。
-:まだまだ体を動かせるような状態ではない訳ですし、その客観的な視点から見た期間が、今度どう繋がっていくのか…復帰した時に上手く繋がればいいですね。
圭太:そうですね。本当に初めての感覚だったので。今まで乗りたくないと思ったことはないですよね。どこかで歯車が狂ってきていたのは分かっていたのですけど、その中でも噛み合って、上り調子でもありましたし、そういった中で自分を失っていたというか、どこか周りが見切れていなかったといいますか…。色々な意味で「今生きているな」という感じを受けますね。
-:やっぱり今の競馬界でトップにいれば、もちろん勝ち星や大きい舞台で乗れる機会もあると思いますけど、結果も求められますし、シビア中でずっとやり続けなければいけないという環境ではありますからね。
圭太:でも、それはどこの世界でもそうです。勝負事ですし、プロの世界ですし、本当にそんな甘っちょろいことを言うなよ、ということも百も承知です。休まざるを得ないという環境になったからこそ、こういうことは考えることですけど、こういう思いがあった中で、また騎乗出来たら、もっと違った騎乗が出来るのかなというのは、今では思いますけどね。それは、本当に超一流だったら、乗りながらそれを感じ取って、結果に繋げていくことも出来るのでしょうけど、そこも改めて気付かされましたね。
-:まだ1週間弱なので、そう大きな差はないと思いますけど、復帰のメドは体が動いて、具合を診てからとなりますか。
圭太:そうですね。普通の骨折ではないのですね。普通だったら、2カ月とか出るんでしょうけど、長い目で見ていますね。これまでの中でも最も長いので。
-:そういう意味でも、基本JRAは週末だけの開催で、JRAに移籍されて7年くらいになりますが、なかなか今のような日々を送るということも、今までなかった訳ですよね。
圭太:今はやっぱり自分を見つめ直すじゃないですけど、土日の競馬を観たりして、自分と比較して、こういう状況の時はどうだったのかなど感じながら…今はそれをやりたいかな。
-:ケガをされた時に、肉体改造をされるジョッキーもいると思いますが、そこはどうでしょう。
圭太:いや、肉体的には、僕は自信を持っていましたからね。トレーナーの先生とも一緒にやって、体つきも良くなって、良い感じで来ていたので、その辺は特にどうこうはないですね。あとは復帰する時にはしっかり戻すだけで。
-:何頭かですが、毎週伺っていたレース回顧も需要があると思いますので、お願い出来ればなと思います。アルゼンチン共和国杯で2着のタイセイトレイルはいかがだったでしょうか。
圭太:僕のイメージでは枠順も良かったですし、行く馬がどれかなと思っていたんですけど、オジュウチョウサンが行くと見ていました。それの後ろに付けるイメージでしたが、スタートは出てくれたものの、二の脚が付かずに後ろからになってしまいましたね。折り合いもギリギリで、休み明けでちょっと気負っていた感じもありましたが、その中でもスローペースの中、我慢してくれて、最後は弾けてくれましたね。
-:今までだと先行して、末脚を伸ばすというよりはジワジワ来るイメージがありました。いい意味でこれまでと違うところがありましたね。
圭太:返し馬を終えて、そういうイメージは立ったんですけどね。
-:3歳上2勝クラスで3着のケイアイビリジアンはどうでしたか。
圭太:我が強いタイプの馬で、自分勝手なところがあるような馬でした。勝負どころの4コーナーではやっぱり自分からという意思はあまり感じられず、ステッキでちょっと気持ちを入れるような感じでした。ギアを入れたら少し反応してくれたんですけど、そこからはジリジリという脚で、多少遊んでいるようなところも見受けられましたね。
-:錦秋Sで2着のアームズレングスは出遅れもありましたが、このクラスでも通用する走りはしているのかなという感じはしましたが。
圭太:先生とも「外を回さずに、内の道を探して差してこよう」という話だったので、そういうイメージで行きました。外を回していても、勝った馬(ワイルドカード)は強かった感じを受けました。ただ、最後は良い脚を持っているので、力も付けているし、安定して走っているので、楽しみな馬だと思いますね。
-:3歳上1勝クラスを制したオーバーディリバーは着差以上に強かったですね。
圭太:そうですね。まだ気性的には若さが見られて、レース前とかもテンションが高かったりしていて、そういう仕草を見せるんですけど、レースでは落ち着いて走れていますかね。本当に最後の直線も、差はそんなになかったですけど、余力はある感じで、この馬も順調に行ってくれれば、楽しみな馬だなという感じですね。
-:フットワーク的には大トビ。内枠じゃない方が走りやすいですか。
圭太:どうだろう。そんなこともない気はしますけどね。
-:3歳上で2勝クラスを差し切ったキングリッドは馬群が密集した競馬で、外から勝ちましたが。
圭太:良い形になりましたよ。外枠でしたけど、ちょうど良いところに嵌まれました。また1回使ったことで、気負いもなかったですね。楽に走っていたので、その分、弾けてくれましたね。状態が上がったといいますか、このくらいの能力は、本当に一瞬の決め手はある馬なので、上手く嵌まってくれた感じはしますね。
-:新馬勝ちのメートルムナールはいかがだったでしょうか。
圭太:馬格もあり、先生からも「ちょっとオットリしている」ということを聞いていたのですが、レースに行ってからはスタートも良かったですし、二の脚も素軽く、遊び遊び走っているようなところもあり、余裕も感じられました。先々、使って楽しみじゃないですかね。
-:ファンタジーSで2着のマジックキャッスルは惜しかったですね。
圭太:結果、もう一つ前のポジションだったらなというところ。輸送だったり、(-4で)体重も(あまり)減らずにクリアしてくれたのかなと思いますけどね。まだまだ良くなる余地はあるので、初めての揉まれる競馬で、差して来られたのは収穫だったなと思いますね。
-:馬格がない方なので、距離はやっぱり1400くらいまでですか。
圭太:いや、1600くらいあっても大丈夫でしょう。
-:道中も外枠の馬が無駄に内に入ってきているような感じでしたが、ちょっと余計でしたね。
圭太:ん~まあ、それも競馬ですからね。雰囲気は良かったですし、成長は見込めました。
-:貴船Sで2着のクライシスは流れも向きましたね。
圭太:久々の分もあって、前半はオットリしているところがありましたけど、この馬は本当に能力がある馬なので、上手くタメが効けば、弾けると思いますのでね。今後も良い形でレースが出来れば、十分通用すると思いますね。
-:さて、次週からも連載を続けさせていただくことになりますが、なかなか負傷していても毎週、喋っていただくのは異例ですね。
圭太:そうですね。やっている人は見たことがないですよね。僕もどうやって良いのかどうかというのも…。
-:僕はウエルカムですけど、ファンも喜んでいると思いますけどね。
圭太:そうですかね。
-:ただ、まだ安静にしないといけない時期だと思います。
圭太:まずは一定期間をクリアして、一安心かなという感じで。
-:今の1日は長いでしょうね。
圭太:長いですね。手術してようやく1週間ちょっとですけど、長いですね。ギブスをしているので、ちょっと動きが悪いというか。こんな時期ですから、質問だったり、1週間の心境だったり、行動だったり、大した差はないんだろうけど(笑)、その辺を伝えていければ良いのかなという感じですかね。
-:ありがとうございます。ちなみに大井の先輩、坂井英光さんが調教師に受かられていましたね。
圭太:受かりましたか!?
-:ええ発表されていました。
圭太:あ~良かった、良かった!それは良かったです。
▲15日、大井競馬場で騎手として現役最後の騎乗を終えた坂井英光騎手
-:夏にパーティー用のコメントを取りに行った時も、勉強しに学校に行かれているから、いらっしゃらないみたいな感じでしたからね。そして、盟友・真島大輔さんも復帰されていましたね。最後に、この1週間でガックリ来たり、という感情はなかったですか。
圭太:それはなかったですね。今までの方がありましたよ。やっぱり競馬に乗れないというのがね。初めての心境なんですよね。これが良いのか、悪いのか分からないですけど。ただ、ダノンキングリーに関しては、乗れないことに対してショックはありましたよね。今は気持ちを切り替えて、頑張ってもらいたいなというところですけど。
-:ご家族のみなさんも、今まで家にいることが少なかったのに、家にいることが多くなるというのは複雑なところですよね。
圭太:僕が全然動けないから、嫁さんは大変ですよね。食事のことでも、骨を早く良くするのに良いものを考えて、作ってくれているので。外食も少なくなって、大変だと思いますけどね。人に迷惑を掛けるばっかりで、本当にケガをして良いことはないですよね。さっきも言いましたけど、自分の心境がどうのこうの言っていますけど、そんなことは綺麗事で、そうやって感じる部分はありますけど、迷惑を掛けていることが一番なので。
-:やっぱり影響も大きい人ですからね。
圭太:いやあ、そこはどうなのか分からないですけど。
-:まだそんなレベルではないでしょうけど、段々と体を動かせるようになったら、こういうような治療法をやっていこうとか、トレーナーさんと相談をされているのですか。
圭太:それはそうですね。任していますけど、もう色々とメニューは作ってくれているので。痛みや大変さだったり、時間が掛かることは覚悟しているので、そこはやることをシッカリやってという感じですね。
-:そこら辺も逐一追って行ければと思います。スポニチさんの連載もお休みらしいので、折角やるのだから、ちゃんとファンの人にも伝えていけるように、頑張りたいと思いますので、改めてお願い出来ればと思います。
圭太:こちらこそお願いします。
-:まずお大事に。ありがとうございます。
圭太:はい、ありがとうございました。
※次回は11月23日(土)に更新予定です!
ということで、復帰までの期間も『週刊!戸崎圭太』は更新していくことになりました。
ただし、話題不足、素材不足になる可能性は否めません…。そこでファンの皆さまにも色々募集します。
(1)戸崎圭太騎手への質問
過去のレースのこと競馬にまつわるギモンなど、何でも問題ありません。ただし、これから行われるレースや馬についてはお答えできませんので悪しからずご了承ください。
(2)戸崎圭太騎手のアナタのお気に入りの一枚
いつの写真でも問題ありません。皆さんが気に入っている写真があれば、コラム内で紹介させていただきます。ただし、1週間につき1枚まで。お名前、なぜその写真を選んだのか、という理由があればよりいいです。軽い容量(横幅1000px以内)でお願いします。
(3)当コラムでやって欲しい企画など
実現性は高くないと思いますが、こんな企画が見たい、こういう対談が読みたいなどあれば、どしどしお寄せください。
すべてのご応募はメールにて受け付けております。お名前(ペンネーム)を記載の上、以下のアドレスまで。もちろん戸崎騎手への応援メッセージも引き続き募集中です。
keita_tosaki@keibalab.jp
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。