'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
さあ2020年の初騎乗!感謝と胸躍る復帰へ ダノンキングリーとの再コンビも決定
2020/5/22(金)
いよいよ実戦の場へ。昨年11月4日のJBCレディスクラシックでの落馬、右肘の開放骨折により、長期戦線離脱していた戸崎圭太騎手。2度の手術、リハビリを経て、23日の東京競馬から復帰することとなった。今週は5鞍の乗り鞍を予定。レースを2日後に控えた心境、そして再び騎乗が決定した安田記念でのダノンキングリーに対する思いを語ってくれた。
決してマイナスだけではなかった 過去最長の戦線離脱期間
——季節は春といいますか、もう夏も近いですが、いよいよ今週から実戦復帰。ある意味、新年のスタートですね!レースを2日後に控えた現在、どんな心境ですか?
いよいよだな、という思いです。今週も美浦で騎乗馬の話だったり、想定に名前があることなどを聞かれたりしましたが、実戦が近づいてきたことをひしひしと感じました。復帰する実感が湧いてきましたし、レースに戻れること、また乗れることを幸せに感じます。美浦に行くのは先週の日曜までを最後に、週中から今までと同じようなスケジュールに戻すつもりだったのですが、あまりに久々でしたし、「普段はどんな1週間を送っていたっけ」という感覚はありましたね。他にも、競馬場へどんな用意をして向かっていたか、東京競馬場に必要な道具は置いていたか、あまりに久々でちょっと不安になりましたね(笑)。
——2週前の段階では、まだまだ未知数という段階から、先週はGOサインを出せる状態に具合も良化したとのこと。これまで毎週聞かせてもらっているからこそ、ずいぶん長くかかったと実感しますし、僕は不安に感じる面もありますが、今の感触はどうですか。
まあ僕自身もビックリというか、日付を定めたことでより良くなってきたような感触はあります。今更良くなるという言い方もおかしいですし、これはトレーナーなどもわからない領域というか、自分の感覚の問題ですが、順調ですね。これまで競馬で乗ってきたからこそ、攻め馬の感触と競馬は違うということは百も承知ですが、実戦でどう乗れるか、楽しみにしています。
——半年というブランク。ここまでを振り返って辛かったことと言えば、どんなことが挙げられますか。
う~ん、初めて経験することばかり。コレということではなく、もどかしさが大きかったですね。手術のあとは痛みもあって、麻酔が切れた時は特に痛かったですね。それも2度の手術がありましたし、注射も決して好きではないので、点滴なんかも嫌でしたよ。リハビリもやればやっただけ良くなるのではなく、こんなにも地道なものかと…。色々な経験をさせてもらいましたね。数多くの方に迷惑を掛け、サポートもしてもらったので、怪我をして良かったとは言えませんが、気づけたこと、経験できてことがあり、決してマイナスだけではなかったと思います。
常々言っているのですが、携わってもらった方々には感謝しかありませんし、復帰に際し、色々な言葉をいただいたことを嬉しく思います。
——日頃以上に言葉にも熱というか、ワクワク感が伝わってきますね。
自分でも感じます。まあ、5Rが復帰初戦ということでレースに行って緊張しないか、心配ですけどね。ゲートが開いて、馬が置いていかれないか、馬だけ走っているようなことなんてないよう、実戦勘だけは早く取り戻したいです。
——そんなムードで挑むリスタートの東京競馬ですが、土曜8Rのディナミーデン、12Rのグラマラスライフは追い切りにも騎乗されたようですね。
ディナミーデンは美浦トレセンへ戻った頃から乗せていただいているのですが、以前にもレースで乗せてもらいましたね。道中で力んでしまうところがあって、脚の使いどころも難しいタイプ。前回を使って、少し落ち着いているところがレースでどう出るのかな、という心配はありますが、いい傾向なんじゃないかと。上手く最後の脚を引き出したいですね。
グラマラスライフもだいぶ前に乗せてもらっていた馬。レース映像も事前に観た上で追い切りにも乗せてもらったところ、気ムラな面は出てきそうでしたが、追い切りでも反抗するようなところがあったりしていましたね。動きそのものは素軽いですし、道中でダラダラと走らせるよりは、自らのリズムで運べればと思います。
ダノンキングリー 陣営からの騎乗依頼に励み
——こんな話題をするのも、当面はなくなりそうですが、先週のレース、ヴィクトリアマイルや京王杯スプリングカップを観られてどうでしたか?
アーモンドアイは圧巻でしたね。スタートを決めて、ポジションをとれた時点でほぼ勝つんだろうなと思ってみていました。京王杯はダノンスマッシュが逃げるんだな、と。競馬も上手な馬ですし、走りそのものは決してスプリンターというタイプではない。ガシガシ行ったわけではないとはいえ、今、距離が持つのかなとは思いましたが、問題なかったですね。
——その他のレースでは、土曜の湘南ステークスは10頭立てで6頭、騎乗した経験のある馬。特にアドマイヤスコールの走りは気になりました。距離短縮でもこなせるんですね。
言われてみて、それだけいるんだと気づきましたね(笑)。アドマイヤスコールは道中でゴチャつくより、ワンターンでジワジワと使っていく競馬が良いのかもしれません。あまりペースが速くなかったことも良かったように思えます。
——昨年、JRAでの最後の騎乗が11月3日、東京12Rのケイアイビリジアン。先週の競馬では気難しさを出したような走りに思えましたが、どうですか。
そんな感じはありますね。ラストでモタれるようなところがありましたからね。
——今週から騎手・戸崎圭太としての復帰。ここへ向けて、体質面の強化も図られていたと思います。改めてこの1週間のスケジュールは変化がありましたか?
あまり体を追い込みし過ぎても良くないと思い、トレーニングは週の初めに変えましたね。でも、それはもうそうしていましたし、木曜は調整的なレベルに留めました。今週から自分は自宅から通うことになりますが(認定調整ルーム)、またそれも違った慣習ですから、どんな感覚になるか、ちょっと慣れが必要ですね。とはいえ、まだ乗り鞍もそう乗っていませんからね。
——先週のお話にもあった通り、乗り鞍は段階をみつつの復帰ということですね。そして、これは文字にしていないことも含め、毎度お話させてもらいましたが、残念ながら無観客での開催、復帰にはなってしまいました。
そこは残念ではありますが、映像を通して、いただいた声は届くと思います。今回、トレセンに戻った時も手紙などもきておりまして、トレセンにいなかった分、普段より数多くいただきました。
——いつになるのかわかりませんが、またファンの皆さんも戸崎さんへ向かって「おかえり」と言える時が早く戻るといいですね。ある意味、ファンの方々こそが「おかえり」ということにもなりますが……。そして、最後に。安田記念(G1)ではダノンキングリーの騎乗も公表されましたね。
萩原(清)先生からは以前からもレースの度に声を掛けていただきましたし、この中間もだいぶ前から「待ってるから」という言葉をもらいました。ここを読んでもらっていた人は、安田記念に乗れるか、復帰できるかもはっきりわからない雰囲気をわかっていただけたと思いますが、そう何度も言ってもらったことで熱くなりましたね。やってやるぞ、とリハビリにもより力が入った、励みになりました。
——安田記念は2週後ですが、楽しみですね。もちろんレースに乗るからには勝負の世界。結果は求められる環境に身を置くわけですが、僕個人としてはまずは無事な騎乗を願うばかりです。次週もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。ここまで皆さんもありがとうございました!
【コラム担当者より】
こんなタイミングなので、この6カ月をちょっと振り返らせてもらおうと思います。
まず、浦和での落馬。ジョッキーによって落ちる頻度は差があると思っていますが、普段、落馬すること自体が珍しい戸崎騎手だけに現場で観ていて非常に驚きました。落ちた直後の挙動を見ても、すぐに起き上がれない。医務室に運びこまれた様子からも、これは大事故になったのだろうとは理解しました。繰り返しになりますが、日々の騎乗、数多くの乗り鞍を当たり前に感じていた身からすると、休養することですら異例。数カ月掛かると聞いた時点で、騎手人生さえ危ぶまれるほどだったのではないかと察しました。事故から数日、手術を終えて電話をいただいた際の声は思いの外、ケロッとしているように感じましたけどね(笑)。
そこからご存知の通り、このコーナーもタイトル通り、毎週更新を続けていくことが決定。それはそれで難なくこなせたのですが、頂いた読者の方々の声にあったのが「近況の写真を載せて欲しい」ということ。僕としても実現出来ればといいとは感じました。ただ、この6カ月の間で何度か顔を会わせていただいた際も(最近はコロナウイルスの問題もあるのでずいぶんとお会いしておりませんが)、雰囲気はいつもと違う。言うならば勝負師としての表情じゃない。そう感じました。その様子を届けるべきか考えましたが、騎手・戸崎圭太を追っているコーナーとしては適切じゃないと自重しましたし、日頃、それだけ気持ちを高めているものだと感じた次第です。
浦和の現場で医務室の外から見えた怪我の具合から考えると、負傷による痛み、2度の手術の我慢、大変だったはずです。「騎手は1鞍1鞍、コツコツやっていくしかないから、リハビリも同じようなものだよ」とはおっしゃっていました。ただ、昨年はG1での上位入線も増えており、流れも徐々に上向いていた中での長期離脱。焦りやジレンマもあったでしょうが、毎週聞かせてもらう声は力強い。謙遜することが常の方とはいえ(苦笑)、このリハビリ期間で改めて戸崎さんの気持ちや人間の強さを感じました。僕としても毎週、騎乗馬の話を伺うルーティンこそ崩れてしまった中で、また馬の話題をする際に今まで以上に競馬を深く感じられるようにならないものか、と刺激になりました。
晴れて現場復帰。僕個人としては、復帰の喜びよりも心配が上回るところですが…いい意味で騎手人生の再スタートという位置づけになればと思いますし、これからドラマを作っていってほしいですね。その姿を当欄で少しでも紹介出来ればと思います。スポニチさんのコラムもあるはずですけどね。併せてよろしくお願いします(笑)。
※次回は5月29日(金)に更新予定です!
※当コーナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点に基づき、電話で取材を行っております
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。