'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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12月16日時点1567勝
ダノンキングリーと挑んだ安田記念は一生の思い出のレースに 秋のリベンジを誓う
2020/6/12(金)
悲願ならず。戸崎騎手にとっても予てから思い入れの深さを口にしてきたダノンキングリーと挑んだ安田記念だが、G1初制覇どころか、初めて掲示板を外す結果。4戦ぶりのコンビ復活で感じた、その敗因とは。また、復帰後最多となる土日計12鞍の騎乗で挑む今週。さらなる勝ち星も期待できそうだ。
マイルには手応えも想定外の豪雨に苦戦
——まずは週末のレースから伺いたいところですが、流石に今週は安田記念(G1)のダノンキングリーについて伺っていきたいと思います。結果は7着ということでしたが、敗因はどう感じられましたか?
やっぱり前の日の雨が痛かったですね。金曜に発表された枠を見て「いい枠が当たったな」とも思ってはいましたが、3~4コーナーの内側の馬場が悪く、そこで脚を取られながら走っていましたし、力んでいるようなところもあったのがポイントだったと思います。直線は一緒の脚になってしまいました。決してマイルが合わない感じは受けませんし、もう一度、いい馬場でやりたいという思いです。
——向こう正面や直線で多少狭くなるようなところはありましたが、スムーズだったとしても他を上回るような脚が溜まっていない印象。展開はイメージ通りでしたか。
そこは思っていた通りでしたね。どの馬がハナに行くかはわからなかったものの、1200mを使っているような馬もいたので、やはりスピードは違ったなと。行く馬がいなければハナにいってもいいくらいの考えではいましたが、やっぱりアーモンドアイより前で競馬はしたいと思っていました。レースの日もお昼休みに馬場を歩いたんですよ。その感触では、直線の内外は変わりないと思っていましたし、逆に直線では外に進路をとっても大丈夫だとは思いました。ただ、その後も他のレースを見たり、パトロールをチェックしても、直線はそこまでダメージが残っていなかったとはいえ、コーナー部分は影響があったように感じていましたね。
——レースを見ていても芝が掘れるのはコーナー部分でしたね。今回はスタートも速かったように思えましたし、確かに一瞬ハナでも行くのかと思ったほどでした。
速かったですね。ただ、ダービーと毎日王冠以外はゲートもそんなに問題はないんですよ。以前よりも改善されてきた点でもあるかもしれません。攻め馬の通り、馬の雰囲気もドッシリしていましたしね。
——復帰後、G1初騎乗に対する期待もありつつ、今回は相手も強力だったので、簡単な争いにはならないだろうという感覚もありました。
今回については結果で恩返しをできず申し訳ない思いですが、自分としては次を見据えています。ただ、このレースに限らず、現在の社会情勢、自分の復帰してからのタイミングを考えると、チャンスをいただいた調教師、厩舎スタッフ、オーナーの皆さんには感謝しかありません。もちろんダノンキングリーにも感謝です。それはいつも以上に思いますし、負けはしましたが、今後も忘れられない、一生の思い出になる安田記念になりました。
G1をいくつも勝っているようなジョッキーじゃないので、なかなか威勢のいい言葉を残せませんが……秋に巻き返したいです。
エプソムCは藤原英昭調教師とのコンビも復活
——G1が全てじゃないにせよ、また秋のG1シーズンへ向けて、ジョッキーもまた実績を積み重ねていってほしいところですが、今週の東京は12鞍の騎乗。乗り鞍も増えてきましたね。前走で騎乗したり、追い切りに騎乗されている馬も多くなってきました。
土曜4Rのレジイナアンは前走が惜しい内容だったと思います。形的には良かったですし、ああいう形で先行できれば、と思います。もうひと踏ん張りできそうですね。馬場的には速くなり過ぎるよりは時計が掛かった方が良いように思えます。12Rのニュートンテソーロは追い切りの感触が良かったです。成績を見てもらったらわかると思いますが、安定していますよね。追い切りで感じなかったのですが、多少遊ぶようなところがあるようなので、そこには気をつけたいところ。
——ニュートンテソーロは前走の時計も速かったですし、闘ってきた相手も強いところが多いですよね。日曜4Rのコトブキテティスは前走時の前にも追い切りに乗っていたんですね。走る度外枠を引いたり、惜しい競馬が続いています。
そうですね。追い切りの感触は凄く良いですよ。元気はあるし、気持ちも乗っている印象。レースにいくと常にワンパンチ足りないイメージはあって、前に行けば垂れてしまったり、差せば届かないと難しそうですね。馬場?田島(俊明)先生は「道悪はどうかな・・・」と言っていましたけど、乗った感触は決してダメじゃないと思うんですよ。父もハービンジャーですからね。
5Rのユーバーレーベンは幼さがありますけど、動きは良いですね。雨が予報されている週末の天気予報もマイナスにはならなさそうですし、活躍馬の母系でもあり、楽しみです。12Rのディナミーデンは復帰した日に惜しい結果でしたが、僕も復帰4週目。その辺りでカバーできませんかね(笑)。
——そして、エプソムC(G3)にはギベオンに騎乗。久々過ぎるだけにどうこう語っていただくのは難しいかもしれませんが、近走も前が狭くなったりなど力を出し切れていない競馬が続いています。
僕が乗せてもらった時は乗りやすくて、バネもある印象。道中では勝ち負けを意識していましたね。ただ、結果的に大事には至らなかったようですが、故障もあって着順は伴わなかったですね。どちらかというと、ここ最近の競馬では上がりが掛かった方がいいのかなと思いますね。
——藤原英昭厩舎の管理馬に乗るのは、復帰後、初めてですね。怪我をされた際は先生から連絡もあったそうですね。
はい、怒られないようにしっかり乗りたいと思います(笑)。
▲2018年のセントライト記念以来、ギベオンに騎乗
——先週は復帰後、初勝利もありましたね。安田記念以外も振り返っていただけますか。
ロードリッチは期待していましたが、序盤から行きっぷりも良くなく、フットワークもハマってくるのを待つような雰囲気。時計が掛かるダートの方が良さそうですし、噛み合わなかったですね。
ブランクチェックは条件が良かったですね。外枠でスムーズな競馬に徹することができて、強い内容でした。ココフィーユは決して相手関係もレベルが高くなかっただけに、先行できていればいい勝負ができたと思いますが、ゲートが決まらなかったことが誤算でした。
スパークオブライフは枠も良く、ロスなくいけました。4つコーナーで平坦コースの方がどちらかといえば良さそうですが、力は出してくれましたよ。ロークアルルージュはやっぱり気性面の問題ですかね……。能力はある馬なのですが。
チャムランテソーロは懸念していた通り、距離ですかね。攻め馬の良さがレースで活かせませんでした。ジリジリとは伸びてはいますが、差し決着でしたからね。デルマクリスタルは返し馬で硬さがあって、心配しましたが、レースにいったらいい走り。終始手応えも良く、道中は促すようなところがあるのかなと思っていたところ、そんなことは一切なく、レースはしやすかったですね。状態さえ良ければ、昇級してもやれそうですよ。
——これが待望の復帰後、初勝利。2020年のJRA初勝利でしたね。
もう3週目にはなりましたが、やはり復帰するだけでなく、勝つことの喜びをつくづく感じました。普段なら勝っても「おめでとう」とは言われてもそう多くはありませんが、引き上げてきてからも、周りからの反応が違って……。祝福の言葉をあれだけ多くの方に掛けてもらえるとは驚きましたし、物凄く感動しました。
——復帰週は帰宅されて、半年ぶりにアルコールを解禁されて、飲み過ぎてしまったなんてエピソードもありました。初勝利祝いもご自分でされたのですか?
いや、そこはダノンキングリーで結果を残せなかった残念な思いもありましたし、あえて振り返る感じではなかったですね。なにせもう飲み始めていましたからね。
——今回はほぼ競馬の話題だけで終えさせていただきますが、これが本来の形かなと思います。そういう流れになってきたことが何よりですね。今週もありがとうございました!
来週もよろしくお願いします!
※次回は6月19日(金)に更新予定です!
※当コーナーは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点に基づき、電話で取材を行っております
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。