'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
11月18日時点1558勝
天皇賞(秋)はダノンキングリー悲願G1制覇目指す&大怪我から一年 古巣・大井のJBCにも騎乗
2020/10/30(金)
主戦の意地を見せられるか。伝統の一戦・天皇賞・秋に今年はダノンキングリーと挑む戸崎騎手。デビューから手綱をとり続けながら、昨秋から春にかけて怪我により鞍上を譲ることにはなったが、安田記念に続くコンビ継続となった。その前走・安田記念は諸条件が重なり、芳しい結果をえられなかったが、ジョッキーにとっても思い入れのある一頭で悲願のG1勝利となるか。復帰後最多となる1日10鞍の騎乗、翌週にもJBCを控えるなど、話題は豊富。今週も意気込みのほどを語ってくれた。
ダノンキングリーは春のリベンジと関係者に報いる騎乗を目指す
——今週は土日ともに東京での騎乗。翌火曜は大井競馬場でJBCと話題は豊富。少し長くはなりますが、よろしくお願いします。まず天皇賞・秋(G1)にはダノンキングリーで挑まれますね。今回は安田記念以来のレース、距離も替わります。
楽しみなレースです。条件も良いと思いますし、好メンバーが揃う中でなんとか結果を出したいところ。今回は過去のレースを踏まえ、直行となりましたが、この判断も良い方に向いてくるんじゃないかと思います。コース替わりとはいえ、理想をいえば、馬場はもっとキレイな方が良かったですが、過去にも荒れた馬場でも走ってくれていますからね。
安田記念は僕も怪我からの復帰明けで、まだまだしっかり騎乗ができなかったと反省していますし、挽回する結果を残せたらと思います。
——今回は追い日以外にも手綱をとった前回と違い、追い切りには乗られずに挑まれます。
先生からは状態は安田記念の時よりも良いとは聞いていますし、当時は春3戦目でしたから今回は楽しみですね。ここ最近も自分で見たり、先生にも聞いていますが、以前と違って精神的な面でも落ち着きが出てきているんじゃないかと思います。安田の時点でも全体的にも成長を感じましたからね。
——今回は少頭数となりましたが、春は横山典弘騎手が手綱を執ったレースを含め、比較的先行する形にシフトしたように感じました。枠は出たばかりですが、レースのイメージはどう捉えていますか。
やっぱりこの馬の良いパフォーマンスとなると、去年の毎日王冠だと思うんです。あれを出遅れずに出来たら、より良いんじゃないかと思いますね。
——安田記念はいま思えば、状態面や馬場なども挙げられますが、決して牡馬としては大柄じゃない馬で初めての58kgの斤量もありましたね。
多少そういう面も慣れという意味ではあるかもしれませんね。
安田記念に向けて追い切られたダノンキングリー(右)
——今回は身長の高い助手さんが追い切りに乗られていますし、斤量にも慣れて、去年の脚を使ってほしいものです。改めてレースへ向けての意気込みの程をお願いします。
繰り返しになりますが、怪我をしていた間も萩原先生から何度も声を掛けていただきましたし、この馬に乗ることが復帰へ向けての一つのモチベーションでした。その中で安田記念は不甲斐ない結果になってしまいましたが、それでも乗せていただいた、乗せてくれる先生、馬主さんには感謝しています。その思いを結果で応えたいですね。
——今週は復帰後最多となる1日10鞍の予定でもありますが、土曜新馬のアメリカンエールは追い切りに乗られたそうですね。
1週前の時点ではまだ子供っぽさも目立って安定感がなさそうに思えましたが、当該週の追い切りではスムーズに走ってくれて、着実に良くなってくれましたね。
——土曜の3歳上1勝クラスでは、ジェロボーム、スターファイターとどうでしょうか。スターファイターは久々の騎乗ですが、追い切りに乗られましたね。
ジェロボームは大柄な馬で叩いた上積みがありそうです。前回は「モマれ弱い」と聞いていた割に、そんなところは見受けられなかったですね。今回どう出るかはわかりませんが、ひと叩きの効果に期待したいところです。スターファイターは既に力を証明していますけど、気難しそうなところがあるのでリズム良くいきたいですね。
——キタサンブラックMのスカイグルーヴは紫苑Sに続く騎乗ですね。距離も短くなります。
前回はフワフワしたところが見受けられましたし、気が入ってくれればと思います。距離は短い方が向いていると思うので良い結果に向いてほしいですね。
——アルテミスS(G3)のタウゼントシェーンはサフラン賞でよもやの結果。そこから巻き返しとなるでしょうか。
前回は思うような結果になりませんでしたが、仕切り直したいですね。新馬では好メンバーを相手に強い内容でしたし、力通りならと思います。1600mの距離がどうか、というところはあるのですが、東京コースならゆったり運べそうなのでこなしてほしいですね。
——日曜の2歳未勝利のスノーハレーション、新馬のプレフェリータとどうでしょうか。
スノーハレーションは一度使った上積みに期待したいですね。非力なところもあるので短い期間ではありますが、体質も強くなってくれたらと思います。プレフェリータは気持ちも入っていて、走ることには前向きそう。態勢は整っていそうです。
——久々のコンビではありますが、サトノアレックスにも騎乗されますね。
気難しいところは抱えているので、上手く力を引き出したいところ。能力自体は通用すると思います。
上積み感じたサトノフラッグ 菊花賞は3着
——そして、先週のレースについてもよろしくお願いします。菊花賞(G1)はサトノフラッグで3着でした。
馬はよく頑張ってくれたと思います。最後の脚が良かっただけに、もう少しポジションを取ってレースをしてあげたらと思います。道中でリラックスして走ってくれましたし、ああいう距離でも終いがしっかりしていたことは良かったと思います。一度使ったことで馬のスイッチが入っていたと思いますし、前回は内にモタれるようなところがありましたが、最後も真っ直ぐ走れていましたからね。
——正直、終わってみればポジションという点は気になっていたところでした。ただ、菊花賞のコース形態を考慮すると、スタートしてすぐにコーナーですし、隣枠がバビットですぐに前を入っていったことが痛かったのかと感じました。
それは言えますね。位置についてはスタート次第で、二の脚がつけばもう少し前でも、というところでした。道中も他の馬は内から上がっていったりしていましたが、自分としては馬場がひどく荒れていて、クッション性が失われているほど。周りが動いても内から行こうという考えは頭からなかったです。ただ、幾ら内が荒れようが、菊花賞だと内枠がやっぱり有利ですね。今回は脚を余すような結果になってしまいましたが、位置をとった場合に、この距離でもしっかり脚は使えるかわかりませんが、今後は長距離でもまた走ってみてほしいですね。
——菊花賞の一つ前は1200m戦、ショウナンアリアナはどうでしたか。
どんな競馬でもできそうな乗り易さを感じました。調子も良さそうでしたし、あと一歩でした。以前は馬体重が減りやすいようでしたが、年を重ねて馬も成長していうですね。
——富士ステークス(G3)のサトノアーサーは先週土曜の東京の芝がなかなか難しく思いましたが、最終的には内を通った分が良くなかったですか?
それはありますね。レースが終わってからも他のジョッキーと内外どちらが良かったんだろうね、なんて話はしていましたが、微々たる差とはいえ、難しい判断でした。馬自体は良いコンディションでしたし、上がりも掛かってくれたのですが。
——エンダウメントは枠が枠だけに難しいところでしたが、体もようやく絞れましたし、外を回らされながらもしぶとい内容でしたね。
そうですね。もう少しロスなくいければ際どかったと思いましたが、もともとポジションが取りづらい馬だったようですし、取れるようになって安定してきたようです。状態も良かったと思いますよ。
——アイビーSのトーセンインパルスはどうでしたか。
気も入ってきているのですが、もう少しリラックスして走れるといいですし、力を抜いて走らせてあげたかったですね。良いものは持っていそうですので力をつけていってほしいです。
——トップリーチは乗り替わりでしたが、惜しい内容でしたね。
もともと馬群を嫌がるところはあるようなのですが、外枠だったとはいえ、上手に走ってくれましたし、このクラスでも通用しますね。もっと多頭数で馬群に入った場合、どうなるかは未知数ですが、勝った時のようにマクって競馬をしなくても走れたように成長もしているのかもしれません。
——アウトオブザブルーはペースが厳しかったですね。
本当に遅かったですね。外々を回っていましたし、もう少し力を付けてくれればと思います。ただ、背中はいいモノを持っているので走ってくると思います。
——エンテレケイアで勝利となりましたね。ダート替わりだけでなく、前走より気持ちも入った感じですか?
馬もスタートから出していったことで気が入ってくれて、上手く噛み合ってきた感じですね。
大怪我から一年 大井でのJBCに参戦
——そして、次週火曜は大井競馬場でJBC。クラシックはデルマルーヴル、スプリントはジャスティンとのコンビですね。
クラシックは前回が久々の距離だったり、忙しい競馬でしたが、経験した上で2000mになるのは良いと思います。ジャスティンは色々課題や懸念材料はありますが、前回の勢いで期待しています。
——JBCといえば、昨年の落馬から1年。期するところはありますか?
特に落馬したことは気にならないかな(笑)。ただ、JBC自体、何度も乗せてもらって勝ったことがないので勝ちたい思いはありますし、怪我のないよう乗りたいです。怪我をすることなく、成長できていれば一番でしたけど、怪我をしたことで得られたもの、感じられたことはありますし、その成果をJBCだけでなく、見せていければと思いますし、良い方向に向いている手応えはあります。まあ、とにかくそんな間も支えてくれた周囲には凄く感謝しています。改めて一年だなと今は感じることはありませんけど、過ぎたら実感するのかもしれませんね。
——次週は京王杯2歳S、アルゼンチン共和国杯とありますが、2週後にはエリザベス女王杯も控えていますね。今週も安全な騎乗を忘れずに好結果を祈ります!
ありがとうございます。
※次回は11月6日(金)に更新予定です
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。