'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
人気コーナー!トップジョッキーならではの本音、レースへの意気込みをお届けします!
12月16日時点1567勝
怪我による復帰から約一年 夢舞台・日本ダービーはグレートマジシャンと挑む
2021/5/28(金)
いよいよやってきた競馬の祭典・日本ダービー。昨年は怪我からの復帰直後ということもあり、騎乗機会には恵まれなかったが、今年はグレートマジシャンと挑むことになった。ダービーにおいてテン乗りはデータ的にも決して好相性とはいかないが、2018・2019年とダービーは2年連続2着の実績。ジョッキーにとっても勝ちたいレースと公言するだけに惜敗のうっぷんを晴らすことができるだろうか。好騎乗を期待したい。
皐月賞馬とは未対戦 グレートマジシャンで逆転V目指す
——さあ、今週は日本ダービー(G1)ですね。今年はグレートマジシャンとのコンビを組むことになりましたが、木曜に発表された枠は7枠13番でしたね。
真ん中から内が良いと思っていましたね。それは誰もが思うかと思いますが、奇数番でもありますし、う~ん……色々と上手くいってほしいですね。
——1週前追い切りに乗られて、不安材料も少なからず感じたということですか。
レース映像を観た上での印象と実際に追い切りに乗った上では、精神面の幼さは不安なところではあるかなと感じました。ただ、そうした課題も従来の観衆が多い競馬場よりはやりやすい部分ではあるかと思います。
——今週の追い切りは厩舎スタッフが乗られていて、手前の替え方などに課題はありそうでしたが、実際、追い切りに乗った感触やイメージとの違いはいかがでしたか。
フットワークは自分が観た印象よりも良くなっているんだなと感じました。短い期間の間に成長していると思いましたね。追い切りの前半の入りが遅かったので多少行きたがるところはありましたけど、並び掛けるのは速かったですし、勢いがついてからの脚も良かったです。あとは道中、気をつけていければ良いですし、特徴を感じられたので良かったですね。
——レースにいかないとわからないでしょうが、馬のタイプとしてはどう感じられましたか。
あくまで印象では血統的なイメージもあるとはいえ、長い距離は大丈夫じゃないでしょうか。時計が速くてもこなせそうですね。むしろあまり道悪にならない方がいいとは思っていました。
——天気予報的には週末降ることはなさそうですね。それにしても怪我から復帰して約1年経ちます。ダービーは2年ぶりの騎乗になりますね。
先週で1年になりますね。正直、乗り出した頃は万全に近づけたと思っていましたが、実際はレースに行ってみると差がありましたね。自分の怪我と様子を観ながら乗っていたところはありましたし、日々、自分を見つめ直すじゃないですけど、何かゆっくりと時間を過ごしていった一年でした。その中で海外にも挑戦できたり、経験のない隔離生活もあったりと色々ありましたけど、それまではバタバタと過ごしていたことを思うと違った年でしたね。
ダービーについては、2着に来たことで、今までは勝ちたいと強く思うことはなかったのが「勝ちたい」と感じるようになりましたね。勝って○○ジョッキーというレースは本来、「ダービージョッキー」しかないと思いますし、誰もがそこを目指してやっているサークルだと思いますので、まず2年ぶりに騎乗できることに感謝したいですし、精一杯乗ってきたいですね。
心身ともに成長がほしいスルーセブンシーズ
——続いてその他の騎乗馬、先週の回顧もお願いしたいと思います。土曜3Rのギャリエノワール、最終レースのアポロティアモは追い切りに乗られたそうですね。
ギャリエノワールは能力がありそうだと感じました。休み明けの分、緩さもあって良くなるのはまだ先かもしれませんが、順調にはきていそうですし、良い動きをしていただけに頑張ってほしいですね。アポロティアモも追い切りの感触は良かったです。長い距離を使っていて、マイルになるので条件替わりに対応できればと思います。
——欅ステークスはスリーグランドに騎乗されますね。
この条件で強い勝ち方をしてくれましたからね。ただ、当時も逃げようと思って逃げたわけではありませんし、力を出し切れるよう走れればと思います。
——日曜4Rのコスモスケアヘッドは前走が人気薄での好走でした。
展開やメンバー次第というところはあると思いますが、前回は二の脚も良くハナへいってくれました。どんな競馬にも対応してくれそうです。
——薫風ステークスのマッスルビーチは以前乗られましたね。
当時は思った以上にハミをとっていて、距離はもう少し短くても良いかと思ったほど。でも、乗りやすいタイプですし、展開に左右されるかもしれませんが、力はあると思います。
——次週のさきたま杯にはノボバカラに騎乗されますね。
昨年勝っているようにコース適性はありそうですね。2走前も馬の状態が良かったのであの時のデキをキープできていればと思います。
——先週のレースではオークス(G1)のスルーセブンシーズは9着でした。
まず、懸念していたゲートを決められたのは良かったです。道中も良いところで競馬ができましたし、最後はもう少し伸びれば良かったのですが、そこは体力がついてきてほしいところですね。現状では馬場がもう少し渋っていたら周りが苦にする分、良かったのかもしれません。コース的にも今は中山の方が合うのかもしれませんね。素質はある馬だと思いますので、今後成長してくれれば楽しみな存在だと思います。
——パドックや地下馬道、返し馬の雰囲気はどうでしたか。
もう少し落ち着いてほしいところはありますね。精神的にも牝馬らしいところがあるので。
——1番人気のショウナンアオゾラはどうでしたか。
前回は前が詰まってしまいましたが、普通のレースといいますか、スムーズだと甘くなってしまいますね。決め打ちした方が良いタイプなのかもしれません。
——是政特別のペルルドールは厳しい流れを踏み留まっていましたね。
しぶとさを活かす競馬をしたいと思ってはいましたが、3コーナー辺りから早目にこられたのは厳しかったですね。東京コースとしては早くこられた印象です。
——スマートワンは自身も勝ち上がりレベルの走りに見えましたが……。
勝ち馬は上のクラスの馬のような走りでしたね。この馬もよく走っていますし、チャンスは近いと思いますよ。
——ランカンカンは好時計での勝利でしたね。
レースを見ると甘さがある印象でしたが、しっかり反応して、ギアも入ってくれて伸びてくれました。馬も成長していたんだと思います。
——ブッチーニはどうでしたか。
下手に乗ってしまいましたね。厩舎からは控えて直線で伸ばすイメージと言われていましたが、スムーズさを欠いてしまいましたから。力は足りると思いますし、巻き返せる馬だと思います。
——ダノンブレットは2~3着馬も強い内容でしたが、勝ち切りましたね。
前回乗せてもらった時も良いイメージでしたし、条件替わりはプラスだと思っていました。最後はまだ遊ぶような余裕もあったほど。昇級しても楽しみです。
——そして、怪我からの復帰といえば、昨年は安田記念(G1)のダノンキングリーに騎乗することも目標にリハビリに励まれました。残念ながら来週の安田記念は乗り替わりとなってしまいましたが、これまでダノンキングリーについては思い入れの強さが窺えただけに驚きもあった人が多いんじゃないかと思います。
乗せてもらいたかったのは本音です。ただ、結果も出せていませんし、出せなかったことにも悔しさはあります。乗り代わることにはしっかり受け止めたいと思いますね。
ただ、キングリーも結果的に回避しましたけど、中山記念の時はそもそも隔離もあって乗れないとしても当時から乗り代わることはわかっていたんです。馬に対しては復活してほしい思いもあります。僕としては勝負の世界ですから、まだまだ成長しないといけませんし、今後認められるような騎手にならなくちゃいけないと思います。
——ダノンキングリーはデビューからクラシックまで手綱を執り続けました。今年の2歳馬で乗っている馬はいますか。
はい、今週から乗せてもらっています。ビップアクアやサトノストロングですね。
——また次週からは新馬戦も始まりますし、来年へ向けての闘いにも注目していければと思います。ダービー、健闘を祈ります!
ありがとうございます。
※次回は6月4日(金)に更新予定です!当コーナーは電話で取材を行っております。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。