'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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12月16日時点1567勝
ヴィクトリアマイル勝利!今週はミッキーゴージャスでオークスへ
2023/5/19(金)
先週行われたヴィクトリアマイルは過去にも好成績を残していたレースではあったが、初コンビで安田記念でも引き続き騎乗するソングラインを復活へ導いた。レースに関してはタップリと振り返っていただいているが、今週はオークスに2戦2勝のミッキーゴージャスに騎乗。母はオークス馬ということもあって、コース適性を期待したくなるもの。今週も見せ場があるだろうか。
キャリア浅く成長の余地を残すミッキーゴージャス
——ヴィクトリアマイルの話を伺うべきですが、まずはオークス(G1)の話題を取り上げたいと思います。今年はミッキーゴージャスとのコンビで挑むことになりましたが、既に枠順は発表されましたね。
できればもっと内でも良かったなと思うところです。週末の天気次第ですが、良馬場なら内有利になりそうですからね。
——初出走は重、2戦目はやや重の中でのレースでしたが、良馬場になった場合の適性はどうでしょうか。
いい馬場でも走れるスピードもあると思いますからね。それに距離も他が苦労するようであればプラスになると思います。他も牝馬で24がいいという馬は少ないでしょうからね。他が苦にする分、有利になりそうです。
——オークスやダービーはスタンド前発走も一つの課題になるかと思います。
当日、どうなっているかわかりませんが、その辺りに不安がない訳ではない気性かなと思います。
——昨今のG1では少ないキャリアで臨むことが一般的になりましたが、たった2戦での挑戦です。
本当に良くなるのはまだまだ先かなと思います。それでもフットワークは素軽いですし、バネを感じる走りをします。伸びしろや成長の余地があるので楽しみです。
——土曜の騎乗馬ではイーデンテソーロは2戦続けての騎乗です。
競馬は上手な馬です。追ってから甘さがあるので、そこを含めて善戦してほしいです。
——ビップソリオは追い切りにも騎乗されていました。
能力のある馬ではありますが、歩様の硬さがありますね。トモの踏ん張りが利けば勝ち切れそうですが…。
——カーネーションCのクインズカムイは昇級になります。
勝った時はいい脚をみせてくれましたが、ああいう形でどこまでやれるか、ですね。
——ルージュエヴァイユは愛知杯以来のレースになります。
前走はレース後に爪を痛めたりというアクシデントもあったようですし、本来の走りではなかったです。状態はいいので改めて期待したいです。
——日曜のキングダラスは前走が不完全燃焼の内容でした。
前が壁になって追い出しが遅れてしまいましたね。ただ、ああいう競馬でも盛り返してくれたことは収穫。ブリンカーが効いていたのか、成長していたのか、前走の走りからも力の入るところです。
——ライリッズは追い切りに乗られたようですね。
いい雰囲気でしたね。馬自身も成長しているのかもしれません。
——ショウナンアレスは惜しい競馬が続きます。
競馬は上手でどこからでもレースになるイメージ。ただ、勝ち切れない面のある馬かと思います。
——セイルオンセイラーは昇級してからひと息ですね。
去年、勝ち上がった時の走りが上に行ったら苦戦しそうな雰囲気でした。そこからの成長に期待したいです。
ソングラインでヴィクトリアマイル3勝目!完全プレイバック
——さて、改めまして先週はヴィクトリアマイルをソングラインで勝利!おめでとうございました!!
ありがとうございます。ウイニングランをするのも久しぶりのこと。コロナによる制限から緩和されたスタンドでもあり、久しぶりにいいモノを味あわせてもらった思いです。
——着差だけみれば、ゴール前は勝ったことがすぐにわかるくらいですが、テンションを上げてみると、勝ったかどうかと焦りました。
アタマ差だったからね。差し切れた、前に行った感触はありましたよ。ただ、ソダシが外にいる並び。その外に馬がいるか、全く見えなかったんです。だから、本当にちゃんと勝ったかどうかはわからなかったんですよね。しかも、雨でちょっと暗かったじゃないですか。余計に定かではなかったですね。
——直線ではぽっかりとスペースが開いて、追い出しを待つくらいの余裕でしたね。
持っていられる手応えもあって、進路もゆったり見つけられるくらいでしたからね。あとは伸びてくれるだけ、というところでした。
——レース後のコメントでは、本来であれば外に出したい、という考えだったそうですね。
そうなんです。でも、周りが外に張っていきましたし、切り替えました。考えとしては道中から外目に取るくらいの考えでしたが、結果的にあの着差を思うと、外に行っていたらどうなっていたのかなと。発表は良馬場でしたか?感触的には良というくらいではなかったですし、あの馬場でもしっかり走っていましたし、内に行ったことは良かったと思っています。
——序盤から終始、内を通ることになりましたね。
考えとしては2~3列目で内に囲まれず、外へというプランでした。丸っきり違いましたね。スタートしてトモの踏ん張りが利かなかったです。一歩目は気を付けて欲しい、と言われていて、上手に出てくれたのですが、テンのスピード的にはそこまで速くなかったですね。しかも、外側でゴチャついたこともあって、余計に外へ出せませんでしたね。こうしてG1を勝たせていただくと、レース直後すぐには検量室には戻らないじゃないですか。見えてはいましたが、あれだけゴチャついていたのも、後になって知りましたね。
——レース前のソングラインの雰囲気はどうでしたか。
まずまず良かったです。返し馬では凄く乗り易くて、果たしてこれだけ大人しくて走れるのかどうか、と思うくらいでした。直前の攻め馬でも大人しさがあり、海外帰りでもありましたし、むしろこれでしっかり走れるのか、という心配があったくらいです。
——今回は3週連続で追い切りに乗られましたね。
最終追い切りに騎乗した戸崎騎手
依頼もあってのことですが、G1では初めてじゃないですかね。一度は乗っておきたいとは伝えたのですが、こうして続けて乗せていただくことで楽しさも感じました。一緒に作っていく感覚もありましたからね。今まではピンポイントで乗せてもらって、次は乗り替わりで……という感じだったりしましたから(笑)。メリットばかりではないかもしれませんが、自分としては新たな感覚がありました。
——林徹厩舎の管理馬に乗ること自体は珍しかったですね。
以前、カーディナルで勝たせてもらいましたが、先生もしっかり意見を求めてくれる印象が強かったです。一頭に関してしっかり突き詰める思いを感じられました。
——話は戻りますが、ウイニングランは久しぶりでしたか。
やっぱりスタンドに人が沢山いて、歓声のある環境はいいですね。喜びを分かち合えましたし、幸せな気持ちになりました。
——戸崎さんを特に応援している人はご本人が喜んでいるところを見て、ホッとしたり喜べたのではと思います。
おめでとうといった声も沢山もらいましたし、名前のコールもしてもらいましたからね。本当に嬉しかったです。
——ヴィクトリアマイルも3勝目ですが、そこに関しての意識はありませんか。
16年ヴィクトリアマイルをストレイトガールで制した戸崎騎手
いやいや、あります。ストレイトガールにはお世話になりましたし、最初に勝ったのは大波乱の決着。連覇の時は前哨戦の内容からも状態がどうかな、というところからガラっと変わって鮮明に覚えています。
——常日頃、交友関係が多いとは強調されないですが、さすがに周囲からの反応も大きかったですか。
ありましたね~。勇気をもらったなど、色々なコメントをもらいました。
——当日は母の日でもありましたね。
母からは「こんなに大きなプレゼントをもらったことがない」とコメントをもらいましたよ。色々とコメントを寄せていただいたので、最後に連絡しましたね。
——改めてG1勝利が2021年の秋華賞以来となったことはどうですか。
今年は他にもチャンスもあったわけで、遅くなってしまったことは申し訳ないです。そして、改めて周囲には感謝という思いがあります。馬主さん、厩舎スタッフ、生産者などにも。そして、ファンがいる競馬場で勝てたことは良かったです。あの大歓声は素晴らしいですよ。
——以前、G1を勝てそうで勝てなかった時は「日頃関わってくれる人に申し訳ない思いがある」とも仰っていましたね。
やっぱりそういった思いになるのも年齢的なものもあるのかなと。あとはここ最近、剣道道場で交友関係もできたこともありますかね。
——あの大きな怪我をされる前からダービーを勝ちたいとは仰っていました。そこに関してはどうでしょうか。
やっぱり勝ってみたいです。今回、改めて感じました。どんな景色なんだろうか、と思いましたね。
ピクシーナイトはまだまだ復調途上
——その他のレースではウナギノボリはどうでしたか。
展開は向いていましたし、しっかり伸びてくれましたね。今回は前走以上に1400mにも対応してくれたのですが、あとは結果だけというところでした。
——相手関係は強かったですが、ジャスリーはどうだったでしょうか。
中1週でしたが、状態は変わらずにきています。メンバーは揃っていましたが、もう少し良くなってくるといいですね。
——レオカクテルは初コンビでした。
引っ掛かる馬とは聞いていました。リズムをとれませんでしたね。ハミに乗ってくる走りで掛かっていましたし、外目の番手で壁も作れず、ロスもありました。
——京王杯スプリングC(G2)のピクシーナイトは長期休養から2戦目でした。
馬は良くなっていて、柔らかみが出てきました。ガス抜きもできたと言えばいいのかもしれませんが、雰囲気も良かったです。ただ、レースは分が悪くペースが落ち着いて、切れ味勝負。トビもゆったりとしている馬ですし、伸び伸び走らせあげられませんでした。実際、まだ良くなる余地もありそうですし、スムーズだったとしても勝ち切るまではどうかなと思いました。
——レッドプロフェシーのレースでは制裁も受けていましたね。
リズム良く走らせられませんでした。トビが大きく走りにブレもあって、そこをフォローさせられなかったです。不器用な面はありますが、能力は感じたのでもう少しフォローさせられたら良かったです。
——マルディランダはしっかり勝ち上がりました。
これくらいの走りはできる馬です。これまでは相手関係や馬場状態などの敗因がありましたからね。
——今週はたくさん語っていただきましたが、安田記念(G1)では引き続きソングラインに騎乗。次週のダービー(G1)はシーズンリッチで挑まれます。また、次週もよろしくお願いします!
よろしくお願いします!
※次回は5月26日(金)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。