'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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12月16日時点1567勝
祝・ソングラインで連勝&連覇!今週は東京で騎乗!
2023/6/9(金)
大雨や枠の不安を乗り越えて連覇達成!
——先週は安田記念(G1)をソングラインで勝利!おめでとうございました!
ありがとうございます!僕自身、G1を連勝させていただくのは初めてのこと。ストレイトガールのように前哨戦の敗戦を挟んで、G1は連勝というケースもありましたけど、貴重な経験をさせていただきました。しかも上半期の間に2つですからね。ソングラインと関係者には感謝しかありません。
——短い期間での連勝もそうですが、今回はヴィクトリアマイルの前に3度、安田記念の前にも2度も追い切りに騎乗されました。これも珍しいケースですね。
勝てた要因の一つとしてあったのかもしれませんね。こうしてコンスタントに乗ることで新たな発見もありましたし、馬の雰囲気の変化も感じられました。
——繰り返しになりますが、ヴィクトリアマイルから中2週でも1週前からしっかり乗られたことには驚かされました。
馬の状態もいい意味で上向いた面だけでしたし、本当におとなしくて乗り易い馬です。調教内容の指示としては、正直に言えば「大丈夫かな?」と驚かされましたが、獣医さんとも相談した上で考えてのことだったようなので、それが正解だったのでしょうね。本当にタフな馬です。余計なことをしませんし、おとなしくて本当に走るのかな?と思うくらい。ただ、今乗せてもらったからこそ、そう感じられているのでしょうし、心身が噛み合ってきたタイミングでいい時に乗せてもらいました。
——ただ、勝つだけではなくまた違ったスタンスで臨めた2戦ですね。
もちろん厩舎の仕上げもあってのことですし、厩舎サイドにも感謝です。そこにジョッキーとして加わることでちょっとしたスパイスじゃないですが、アドバイスもできて、それが活きたのなら何よりですね。
——先週、お話を伺ったタイミングでは枠は確定しませんでした。大外枠と聞いた時はどうでしたか?現代競馬で大外枠が有利になることは珍しいですが。
内枠から馬名を見て行って、名前がない。「これは外か……」と思ったら本当に大外でしたね(笑)。ただ、「外目」よりは一番外ならそれでいいか、そんな割り切りもありましたよ。天気も相当酷かったので、一概に内がいい馬場になる可能性もないと思っていましたし。
——金曜が東京に限らず相当な雨に見舞われ、土曜の午前までは降っていましたね。
もう雨は止んだんだな、と思ったり、レースを観るにつれて、内有利にならなければとみていました。結果的に多少、水分を含んだ馬場状態で走れましたね。ヴィクトリアマイルも発表こそ良馬場でしたが、雨もありましたし、どちらも雨を含んだ馬場でした。ただ、自分の考えでは内外の差は大きくなかったと思っています。
安田記念を制したポイントとは
——レースでの指示はありましたか?
今回は特になかったです。大外枠なので、もう「任せる、頼む」といった話でしたね。
——当日、跨った際の状態はどうでしたか。
力を出せるコンディションでしたね。チャンスはあるなと感じられました。もちろん落ち着きもありました。
——それにしても、いいポジションで運べたのではないでしょうか。
大外枠なので、どこの位置にハマれるかはポイントですね。強引に行きたくはないですし、外は回りたくない。下げるのも違いますからね。多少、運の要素もあるのですが、今回はソングラインの操縦性の良さと運でいい位置にハマれたと思います。
——前回もそれなりには先行できているものの、決してスタートが速い訳ではないと。
出方が上手じゃないんですよね。二の脚がつき辛いタイプだと思います。そこはスタッフも色々と工夫してくれた成果もあると思います。
——通過順でこそ10番手付近でコーナーを回っていましたが、前との差は然程ないポジションでしたね。
そこは取りに行っていますし、逆に下げてもいます。それができるのが素晴らしいですし、ポイントだったと思います。
——結果的には昨年のマイルCS勝ち馬を突き放しての勝利でした。
返し馬で跨った時にちょっとした硬さを感じました。ただ、悪い意味ではありません。たとえばマラソン選手、陸上選手がギリギリの体のコンディションで戦うような、究極の仕上がりだったのだと思います。それもテン乗りだったらわからないですけど、乗ってきた比較があったからこそ、感じられました。
——同じような経験はありましたか?
ストレイトガールですかね。以前との比較があったからこそ、それだけ思い切って臨めました。
——これは聞いている限りでの比較ですけど、先週の話の段階からも随分と前向きさは感じました。
そうですか。チャンスだと思っていましたし、ウオッカ以来の連覇が懸かっていると聞いていて、勝てば名牝と呼ばれるような域に行けるとも思っていたので、その称号を手にして欲しいなと感じていました。
成績を残すためにも日頃の準備を怠らずに
——ヴィクトリアマイルは母の日というタイミングでした。今回、話題にできるような周囲の反響はありましたか?
特にはないですかね。ただ、今回は両親を競馬場に招いていました。コロナ禍の前は自ら来ていたのですが、今はネット予約があったりじゃないですか?アナログな両親なので、そういうことが苦手で。だからダービーの時にこちらで招待していて、「だったら、安田記念も来る?」なんて話をして、続けてきていました。でも、「観に行くと負けるんだよな」なんて言われていて、そんなことは関係ないと思いつつも、目の前でG1を勝つことができて良かったですね。
——ウイニングランも短い期間で2度、経験しましたね。
今回は厩務員さんが随分とコースに出てきたから、ゆっくりと歩かせてもらいました。普通、並足でやるウイニングランってあまりないと思うんです。じっくり喜びを感じることができましたね。
——他社の記事で知りましたが、担当の関本助手はお父さんが岩手の騎手らしいですね。
えっ?そうなんですか?それは知らなかったです。ただ、名前が(敬太)同じで先生が調教内容を離している時に「ケイタが~」と言っていて、名前が同じだと知りました。
——それにしても、これはいつか聞いてみたかったのですが、以前の大怪我以降、手が離れた馬がG1を好走するケースが目立っていたのは気がかりでした。
今年もドゥーラやシャンパンカラー、ソールオリエンスなどには騎乗したことはありましたからね。ただ、その時、それぞれの理由があったりしますからね。もちろん自分で後の活躍が見抜けなかったケースもありますが。だからこそ、ここ最近は縁や義理は大事にしていければとは思っています。攻め馬でもできるアドバイスは送れるように考えていますね。
——まだ上半期は終わっていませんが、こうした大舞台での活躍があって何よりです。
去年は沢山勝たせていただいて、MVJも獲らせていただきましたし、その波で年明けもいい滑り出しでした。ただ、そこから勝ち星は少ないですが、どこかで一つは勝てているんですよね。最低限とは思っていませんが、未勝利に終わっていないことは良かったです。自分としても結果以上に馬との感覚は良くなっているので継続していきたいですね。
——正直、今週は勝てるかな?という週がここ最近も何度かありましたが、その中でも星を拾えていますね。
今年は毎週勝っていますよね。
——調べると、去年の7月末から続いていますね。最近も今週は危ないなというところから、何とか勝っていますよね。
そこで勝ってなかったか。でも、ユタカさん(武豊騎手)のようにもっと勝っている人はいますし、少しでも継続させていきたいです。
——それにしても今回はいい馬と出会えましたね。
今回はソングラインが自信を持たせてくれました。このめぐり逢いに感謝です。ただ、いつチャンスが巡ってくるかわかりませんし、チャンスがきた時にきちんと結果を出せるよう準備を怠らないようにしたいですね。それは「子供たち」にも伝えていきたいです。
——ご自身が総代表を務める剣道の川崎真道館の生徒たちに。
そうですね。今週の月曜も集まりには顔を出していましたけど、競馬に限らず、日頃の積み重ねが重要だとおもいます。
エプソムCはエアファンディタとのコンビ
——今週の騎乗馬では土曜から伺っていきたいですが、フォードテソーロやマオノアラシは騎乗経験がありますね。
フォードテソーロは惜しい内容が続いてあとワンパンチ。条件も合っているので、相手次第という段階でしょうか。マオノアラシは未勝利の内容からすれば1勝クラスもすぐに勝ちそうですが、甘くはなかったですね。雨馬場が決していいとは思えませんが、この条件になる分で期待したいです。
——ビップソリオは3着でした。
おそらく前回は上手くいった内容でした。これくらいは走れていいのですが、追ってからが物足りなさがあるので、そこが変わってくるといいですね。
——エディストーンやアサクサヴィーナスは追い切りに騎乗されたようですね。
エディストーンはダート替わりが良さそうですね。アサクサヴィーナスは本質的には1400mの方が良さそうですし、前走の競馬が今回に影響しないか、気がかりではあります。馬場も良馬場の方が合いそうですが、もともとは1600mでもいい走りをしていましたし、力でカバーしてほしいです。
——メイテソーロは青葉賞でも上位でしたが、再びダートに戻ります。
それでも上位からは離されていましたし、本質的にはダートの方がいいと思います。自己条件なら期待したいですね。
——エプソムカップ(G3)はエアファンディタに騎乗されます。
イメージだけになりますが、前走も強い内容でしたし、雨の中でも走れていましたからね。楽しみです。
勝てる手応えのあったレースは不運、G1以外は未勝利に
——先週のレースでは、モナルヒは2着でした。
相当テンションが高かったですね。よくあれで走れるのかというほどで珍しいです。ここ最近は直線でヤメてしまう競馬が多かったようで、返し馬でも気性が災いしているんだなと感じました。あえていじることなく臨んだのですが、それが良かったのかもしれませんね。気分良く走ってくれました。
——アルファマムは不利がありましたね。
いや~~~普通であれば勝っていたんじゃないかと思います。ただ、事故なので仕方ありません。ペースも流れていてハマったなと思ったほど。コーナーでモタれるようなクセもなかったですからね。最後も不利がありながら盛り返していましたし、マトモであればチャンスはあったと思います。
——新馬のアルーリングタイムはどうでしたか。
いい馬ですね。全体的に忙しさも感じたので、もう少し距離があっても良さそうです。血統的にも使って良くなりそうです。
——ルージュバックの仔のフレーヴァードはいかがでしたか。
道中でムキになっていましたね。最後は苦しくなって内に刺さっていました。現状はもう少し距離が短くて良さそうです。今は精神的に改善の余地がありそうです。
——メモリーグラスは惜しかったですね。
勝ったかと思いましたね。ただ、凄く乗り易さがありますし、チャンスは近いです。
——ショウナンマントルは勝ち馬があれでは……という結果でしたね。
こちらもいい馬でしたし、乗り易さGありました。ただ、緩さも感じたので使って良くなりそうです。
——今週はタップリと安田記念について語っていただきましたが、来年から交流重賞になる古巣・大井の東京ダービーではミックファイアが勝ちましたね。
強かったですね!なかなかあのレベルの馬は出てこないんじゃないかと思うほどです。御神本(訓史)も初勝利だったようで良かったと思います。ただ、的場(文男)さんに乗り鞍がなかったのは残念でしたね。
——G1がすべてではありませんが、ひとまず先週はおめでとうございました!まだまだダートで大きなレースもありますし、次週以降もよろしくお願いします。
よろしくお願いします!
※次回は6月16日(金)に更新予定です!
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。