'14~'16年とJRA最多勝利騎手&MVJに輝いた戸崎圭太騎手による、大井競馬在籍時代から続く
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12月23日時点1569勝
いざジャスティンミラノと7906頭の頂点・日本ダービーへ!
2024/5/24(金)
いよいよ発走が迫ってきた第91回日本ダービー。今年は無敗で皐月賞を制したジャスティンミラノと挑むことになった。ジョッキー自身は過去に2度、2着に惜敗している舞台でもあり、今年こそと機運は高まるところ。各メディアにも引っ張りだこでダービーについては幾度となく語ってきた戸崎騎手だが、競馬ラボとしても既に公開中のスペシャル対談に続き、レースを目前に控えた心境を改めて語っていただいた。
相性の悪い枠を乗り越えられるか?
——今週は枠順が確定した日本ダービー(G1)のジャスティンミラノから伺っていきたいと思います。Cコース替わりの週で内枠有利になりやすいレース。一般的には外枠とされる枠になりました。
枠はどこでもいいのかなと思っていたんです。特に気にならなかったですね。ダービーは基本、内有利になると言われるのはもちろん知ってはいましたし、細かい条件を思えばありましたけどね。
——ゆったりとした走りをするタイプ。それだけに内で窮屈な形よりは外で伸び伸び走れる、そう考えていいのでしょうか。
この枠なので、そんなことにはならないでしょうが、今までも馬群に入っていないだけでそこまで気にならないと思いますよ。内でも別に問題ないと思っていましたからね。
——皐月賞は発馬機の連結部分の隣でスムーズに流れに乗っていけました。一方、共同通信杯の時はスタートを出てからの行きっぷりがひと息でしたね。
生き物なのでああいうことがないとは言い切れないですが、問題ないと思いますけどね。当日の位置取りなりはその日の馬場傾向など踏まえ、友道先生とも作戦を立てていければと思います。
——そして、改めて伺いますが、前走は4角でモタつくところがありました。一度、減速しながら盛り返せたことは凄いと思いますが。
あの時はジャンタルマンタルにも離されて、アレっというところはありましたが、こちらも初のコーナー4つのコースが響いたと思いますからね。心配はしていないです。
——皐月賞は高速決着となりましたが、改めて東京コースになる点はどうでしょうか。今年は週末に好天が多く良好な馬場状態になりそうですね。
常々、東京の方が向くと思っていたので心配することはないのかと思っています。前走は色々と初物尽くしの条件が揃っていて、それらをクリアしなくてはいけない課題を感じていました。ペースもまるっきり違いましたからね。全てクリアしてくれましたからね。
——まだキャリアが浅いので、当然ながら伸びしろはあると思いますが、どうでしょうか。
やっぱり全体的に成長できる余地はあると思いますよ。それでも操縦性があって、フットワークのバネがあって、パワーもある。バランスの良さも感じます。
——共同通信杯の時のスタートや皐月賞の4角のように「アレっ」というところもありましたが、それよりも皐月賞の時に返し馬の雰囲気をみると、行きっぷりがかなり良くて心配な材料かなと思いました。
そこは気を付けたいですね。共同通信杯の時も同じようなところはありましたし。レースに行けば大丈夫なんですけれどね。
——今年は良馬場で行われるかと思います。現状の馬場などに対する適性はどうでしょうか。
まあ…問題ないと思っています。強いて言えば極端なペースとか特殊な展開にならなければいい、そんなところでしょうか。
——ご自身にとってダービーは2度の2着という結果です。
この前も話しましたが、2頭は距離の不安もありましたからね。特にダノンキングリーはもう少しできることがなかったか、と振り返ったレースでしたし。上手くいった中でも前が残るという結果でしたからね。
——現時点でレースまで残り3日ほどですね。
いい緊張感もありつつ、これだけ注目される馬に乗れることを噛みしめて過ごせました。基本的には今週もいつも通りというスケジュールでしたね。少しピリっとしてきた感覚はありますが、やっぱり「いつも通り」が重要なのかと思います。それは他の競技でも変わらないかと思います。
——それでも今年は当たり前ながら非常にメディア露出も多かったですし、数多く声を掛けられたのではないでしょうか。
そうですね。いい時間を過ごせましたし、いい経験になったと思います。あとは当日に自分のやれることをやるだけですが、日頃から応援していただいている方々のためにも結果を出して、より幸せを感じていただければと思います。
落鉄のアクシデントがあったステレンボッシュは2着
——今週のその他の騎乗馬ではアンリトゥンルールは初出走で7着でした。
攻め馬の動きはもう一つだったのですが、実戦にいったら良かったですね。一度使った上積みもあると思います。
——ゲンパチエトワールやナファロアは未勝利戦を制しての昇級です。
ゲンパチエトワールの前走は上手に走ってくれましたが、昇級して好走するには、もう少し成長がほしいですね。ナファロアはいい勝ち方をしていました。テンションが上がり過ぎないことは重要ですが、この距離を含め楽しみです。
バトルクライはもともと能力がありますからね。あとはこのブランクが課題ですかね。ネイビースターは色々と好走するには条件がつきまといますが、出し切れば好走できると思います。
——日曜のオーネットレオやアメリカンチケットはどうでしょうか。
オーネットレオは前走の条件はプラスでしたね。まだ若さはありますが、引き続き同じような条件で楽しみです。アメリカンチケットは気性的に1200mの方がいいのかもしれませんが、素質は感じていたのでここでも頑張ってほしいです。
——レッドミラージュは久々に騎乗されますね。
勝たせてもらった時はいい走りでした。どれだけ成長しているか楽しみですね。
——先週の競馬ではオークス(G1)のステレンボッシュは惜しい結果でしたね。
返し馬ではけっこう行きっぷりが良くて折り合いは重要だなと思いました。ただ、スタートも上手に出てくれてその後もリズム良く運べましたね。直線もしっかり伸びてくれましたが、外の馬にやられましたね。
——1コーナーの時点で落鉄していたようですね。
本当ですか?それは知らなかったです。確かにゲートを出てからゴチャついたのでそこかもしれないですね。
——戸崎さんの東京でのG1では過去にも惜敗していて、終わってみれば落鉄というケースがありましたね。今回、もう少しこうできた、していれば、というポイントはありましたか?
いや~あとは追い出しをもう少し工夫できていればよかったですね。でも、内外の馬場差で決定的に内目がダメだとは僕は思っていませんからね。そこは問題なかったと思っています。
——負けてはしまいましたが、2着ではありました。それにしても、テン乗りということもあり、先週は慎重な感触を受けました。
やっぱり実戦で乗ったことがなかったというのもありますからね。でも、思った通りに答えていますよ(笑)。
——ネッケツシャチョウは初騎乗でした。
いい馬でこのクラスでもやれると思います。今回はもう少し外の枠だったら持ち味がもっと活きる走りができたと思います。
——ティニアは久々の距離。1200mで乗られていただけに条件替わりを危惧されていましたが。
昇級でしたし、1400mでしたが、対応してくれましたね。懸念していた以上にこなしてくれました。
——ジャグアールは昇級初戦でした。道中は思っていた以上に前につけられていて驚きました。
こちらはいつもなら前半がリラックスして走れているのが、いつも以上に「いい走り」をしていた分、終いがもう一つでした。もしかすると距離は短くなっていくかもしれません。
——ヴァイザーブリックはどうだったですか。
前走もいい競馬でしたが、今回もヨレるところもあったものの、上手く競馬はしてくれましたよ。
——アコークローは初ブリンカーが逆効果だったのでしょうか。
人気もしていましたし、実績があるだけに期待していたのですが、全く進んでいかなかったですね……。
——ヒップホップソウルは6着でした。
口向きなどが難しいところがあるとは聞いていました。スタートは上手く出てリズム良く運べたのですが、追ってからの反応がもう一つ。走りのバランスも左右にぶれるようなところがありましたね。
——エリーズダイヤは勝ったかと思いましたが、僅差の2着でしたねえ。
もう少しでしたね。上げ下げで負けてしまいました。それでも今後も安定して走ってくれると思います。
——アトロルーベンスはどうでしたか。
硬さがあって行きっぷりももう一つでしたね……。
——アサクサヴィーナスはやはり今は1400mの方がいいのでしょうか……。
そうですね。前回より力みは解消されましたが、以前より気持ちが入り過ぎていますね。今なら距離を縮めた方がと思います。
苦杯を嘗めた過去も糧に頂点目指す
——それにしても、今週含めダービーの話題の中心という立場でしたね。こちらが確認する限りでも、たくさん取材を受けられていたと思います。その中でもトレセンでの会見で「このチャンスを逃したくない」という言葉が印象的でした。
確かに、あまり言ったことはないですね。
——普通はいくつか表現のパターンは人によってあるものでしょうから、それでも初めて聞いたような気がしましたね。先ほども伺ったように、いつも通りで臨むダービー。読者の方には伝わらないかもしれませんが、数年前とは話しぶりも変わりましたね。
どうですかね?まあ、そこは周りが判断してくれることですから。
——以前よりどっしりされたと言えばいいのか、違った感覚を受けます。やっぱり怪我による長期休養だったり、悔しい騎乗だったり、積み重ねてきたトレーニングだったりは糧になりましたか。
なったと思います。以前にも言ったように自分の伸びしろの限界なんかも感じるようになりましたけれど、その中でも自分なりにやってきたことは良い方向には向いていると思うので。
——戸崎さんにとってダービーとは、という質問は散々受けられていたようなので、改めて伺いません。ダービー当日の競馬場は関係者エリアの雰囲気も違うとは過去にも仰っていましたね。
やっぱりそういう違った雰囲気はありますよね。その中で今年は自分も期待の大きい馬の鞍上を託されているのでどんな精神状態で臨めるかは楽しみです。でも、自分も以前とは気の持ち方も変わりましたからね。
——ここ最近も馬の精神面やコミュニケーションを意識されていたり、足の感覚を意識したトレーニングなどに取り組まれているなど仰っていましたね。戸崎さんは平然とされていますが、こちらが緊張してきますので今回はこのあたりで、ということで締めたいと思います。
いつもそうですが、競馬は一人でできるわけではありませんし、自分自身ができる準備はきちんとやってあとは与えられたチャンスを活かせるように頑張るだけです。
——2010年に日本ダービーで初騎乗する際は驚いた記憶がありますが、こうして上位人気馬として挑む時が来ることも驚きですね。走るのはジャスティンミラノではありますが、戸崎さんの座右の銘である「自分に勝つ」となるのか、期待しています。
こういう馬に巡り会えたことにも感謝していますし、責任も感じています。ここまで来たので無事に馬も人もゲートインできることを自分自身、祈ります。
プロフィール
戸崎 圭太 - Keita Tosaki
1980年7月8日生まれ、栃木県出身。99年に大井競馬の香取和孝厩舎所属としてデビュー。初騎乗、初勝利を飾るなど若手時代から存在感を放っていたが、本格的に頭角を現したのは08年で306勝をマークし、初めて地方全国リーディング獲得した頃から。次第に中央競馬でのスポット参戦も増えていった。
11年には地方競馬在籍の身ながらも、安田記念を制して初のJRAG1勝ち。その名を全国に知らしめると、中央移籍の意向を表明し、JRA騎手試験を2度目の受験。自身3度目の挑戦で晴れて合格し、13年3月から中央入りを果たした。移籍2年目はジェンティルドンナで有馬記念を制す劇的な幕引きで初の中央リーディング(146勝)を獲得。16年も開催最終週までにもつれた争いを制し、3年連続のJRAリーディングに。史上初となる制裁点ゼロでのリーディングだった。19年にはJRA通算1000勝を達成、史上4人目のNARとのダブル1000勝となった。プライベートでは2022年より剣道道場・川崎真道館道場の総代表を務めている。